第31話 恋ばなと夢の国1

 最近、良く眠れない。


 受験勉強は、順調なのに。


 最近は、覚えるより、人に教える事で、内容を復習している位だ。


 大切な人が出来た。


 友人も出来た。


 そして、 その友人に好きだと言われた。

 その友人は……一番大切な人の親友だった。


 しかも、二人から。


 眠れない原因、何てこれしかない。


 頭がごちゃごちゃだ。なんで僕なんかが……。


 でも、答えなんて決まってる。


 日向優先、友達とは、現状維持。


 日向は、絶対に泣かせない。泣かせたくない。


 夕凪さんの夢では無いが、この四人で同じ希望高校へ受かり、楽しい学校生活を送る事が出来たら、どんなに楽しいだろう。


 確かに、僕の事を好きとは言ってくれた物の、千早さんや夕凪さんのベストは、僕と日向が別れてこの四人が解散するより、僕らカップルと一緒に、これまで以上に楽しんで行く事らしいのだ。


 だから、頑張った!!

 今まで以上に。


 日向や千早さんや夕凪さん、誰一人悲しまない様に。


 日向に、隠し事をする事になるのは、凄く嫌だし、心苦しい。


 でも、流石に言えないよ、こんな事……。


 あの後、二人と話したんだ。


 二人がどうしたいのか?何を望んでいるのか?


 千早さんは、まず謝っていた。


 この告白は衝動だった事、少し後悔をしている事、僕と日向との仲を裂くつもりは無かった事、ただ、心の中に残っていたモヤモヤが凄く苦しかった事、今は、みんなで過ごして居るのが凄く楽しいって事。


 夕凪さんは、もっとシンプルだった。

 千早さんが、言うつもりだったから、先に言った。

 内緒にしておこうって話していたらしい。

 正直、自分の中の思いを打ち明けるには、早すぎたけど、後悔はしていないらしい。

 ただ、隙を見せたら知らないよと言われて戦々恐々としている。

 何なら、日向に言って貰っても良いとすら言われた。

 ただ、二人とも大好きだから、選べないよと言われた時のちょっと寂しそうな顔は、忘れられそうにない。


 受験勉強はもちろん、日向とは、恋人として、千早さんや夕凪さんとは友達として、自分なりに考えた付き合い方で。


 そして、期末試験も終わり結果が帰って来て、みんなの試験結果が良好だった事を確認した次の日だった。


 僕は、寝込んだ。


 39度超えの熱を出して。


 馬鹿か?そのせいで日向のみならず、千早さんや夕凪さんにも心配された。


 僕の熱が下がった頃、日向達三人が仲良くお見舞いに来てくれた。


 甲斐甲斐しく僕の世話を焼こうとしている日向。


 授業のノートを取ってくれたり、プリントを持ってきてくれたのは千早さん。


 僕の部屋の家捜しを始めて、妹と大騒ぎしていた夕凪さんは……騒ぎ過ぎて、千早さんに怒られて正座させられている。その膝の上に座る妹。時々跳び跳ねる(鬼)


 千早さんって、先生とか似合いそうだよね。



 夕凪さんが、いかがわしい本とか言ってたけど、そんな物は無い。全然無くて、逆にひかれる位だ。


 全く騒がしい……見られて困る物何て特に無いし……。


「おー、いかがわしい本は無かったけど、アルバム発見!!」


 無い……し?


「勝手に漁るなー!!」余計、悪いわ!!


 起き上がろうとする!!…けど、病み上がりのせいか、ふらついてしまう。


「ひなっ!!」


「はいっ!!」


 千早さんの声に鋭く反応する日向。えっ?日向?


「病人は、寝てましょう!!」


 起き上がろうとする僕のパジャマの首元と腕を決める。


「熱のある人は、安静にしてないとね。」


 千早さんが強制的に僕を寝させて、


「ちょっと日向、どこで柔道の寝技を!?」


 そして、千早さんが布団を被せた。


「って、言うか千早さん、まってまだ日向が!!」


「あっ添い寝だ」


 夕凪さんがニヨニヨ笑っている。


「添い寝だじゃない!!」


「むふーっ」


「いーなー!」


「むふーっじゃない!!日向、何だそのどや顔は!!風邪が移るだろう!?」


 後、誰だ『いーなー!』って言った人。

 パシャ!!

「ん?何?今の音」


「物質はとった。下手に動くとクラスのらいんにこれを流す」


「千早さん、何て事を!!」


 畜生、動けない!!


 下手に動くと可愛い彼女……じゃない恋人の胸が感触が!!って言うか二人キリなら~!?いやいや、そういう訳じゃ。


「じゃじゃーん!!」


 夕凪さんがバーンとアルバムを開く。


「……ねぇ、半分位までほとんどぴょんすけ

 の写真なんだけど…」


 キャー!!そうなのだ。僕は特にカメラをもっている訳でもない、こども園で、妹の行事の時に 撮って貰った物ばかりだ。

 特に自分が写ってるのなんてほとんど無くて。

 みっちゃんママさんや、りっくんママ達や他の父兄さん達が取ってくれた写真ばかり、

 妹が自分の写った写真を指差して「これも、ぴょんちゃん!!これも、ぴょんちゃ!!これも、ぴょんちゃん!!」凄く楽しそう。


 途中で「シスコン……?」夕凪さん?今言ったのは夕凪さん?


 そして、3分の2も過ぎた位で、

「にぃにとひなねぇね!!」「ひなねぇね!!」「ひなねぇね!!」「ちあねぇねとひなねぇね!!」「ちあねぇねと下僕!! 」


「ちょっとー下僕は止めなさいよ!!」


 怒る夕凪さんに僕は、ペコペコ頭を下げる。


 どうやら、修学旅行の写真になったらしい。


「下僕!!」「下僕!!」「ひなねぇね!!」「にぃにとちあねぇね!!」「ちあねぇね!!」「ひなねぇね!!」「ひなねぇね!!」「にぃにと下僕!!」「ひなねぇね!!」「ちあねぇね!!」「下僕!!」

「ひなねぇねとちあねぇねと下僕!!」


「誰か止めてクレー!!」


「あんた、私達の事好き過ぎるだろ!?」

「てゆーよりー、よっ君の写真無さすぎー。」

「あっ、この写真私持ってます!!」


 寝込んでるのに追い討ちを掛ける様に、この仕打ち!!


 だって、しょうがない、僕の写真なんてほとんど無いんだから。


 結論、

「私達、誰のアルバム見させられているの?」と言う千早さんの一言に軽く凹むのだった。



「しょうがないな、ひな夜空っち並んで」

 千早さんがスマホを取り出し、色々な並びや構図で画像をとり始める。


 その中に、僕と千早さんとのカップリング

 や僕と夕凪のカップリングなんてのも、紛れて写していたのを、僕は苦笑いしながら、気にしない事にした。


 撮影会の後、僕と日向がスマホを持っていない話になり、クリスマスプレゼントは、スマホを買って貰える様に交渉する話となった。


 僕らは親の許可が無ければ、まだ買うことは出来ないので絶対は無いだろうけど。以前からその話は親としていたので、きっと大丈夫だろう。


「買ったら、画像送るから、またアドレスとか教えてね」


 千早さんが、嬉しそうに言った。


「あのさ、みんなに相談があるんだけど?」


 まだ少し体調が悪いせいか少しフワフワしているけど、まぁしょうがない。


 昨日の夜届いた四枚のチケットを机の引き出しから取り出した。





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