第29話 恋ばなと君の夢8

「知ってるー?よっ君って、まだ自分の事、陰キャとか言ってるんだってー!?」


「そうそう、時々言ってるよね、馬鹿じゃないって思って聞いてるけど」


 ゆーなとの話は、段々愚痴とディスりが入り交じり白熱していく。


 自分にも、こんなに女の子っぽい所あったんだって、変に自覚させられてしまった。


「アハハ、裏じゃハーレム夜空とかーヤリ○ン夜空とか言われてるのにねー」


「やだっ、じゃあ私達ハーレムの一員じゃない」


「ひなっちが正妻で、ちーちゃんが2号、私なんかー3号扱いですよー」


「まぁ、私達さ、他の子達とも、つるまなくなったもんね」


 最近、見てないな、クラスのらいん。


「ちーちゃんは、2号だから、良いですよー、私は3号なんですよー!!」


 まだ、言ってる。


「ひなっちから、よっ君奪って寝盗るんですってー、この巨乳でたぶらかすんですってー!!」


 こらこら、乳を振り回すな。


「出来るもんか、あの聖女様から……」最後の一言は、吐き捨てる様で、私の胸にまで突き刺さった。


「あーあ、非処女キャラになんてするんじゃなかったなー」クラスでは、ゆーなは、皆とは、少し先に進んだ性に対して奔放なキャラと言う事になっている。


 まぁ、実際は少し違うけど、1年の頃初めて付き合った先輩に無理矢理襲われそうになった所を必死に逃げ出して、それ以来、しばらく男性恐怖症になってしまったのだ。


 調度、先輩の卒業と重なって、何となく有耶無耶になってしまったのだが、その先輩がその後、散々ヤッて捨ててやったと嘘をついたせいで周りから、そういうレッテルを張られてしまった。


 ゆーなが、言い返さなかったせいもあり、今の外面が出来てしまったのだ。


 そう言う噂があると余程の馬鹿じゃない限り、あまり変に誘われたりしなくなったから、気が楽だよー!!と嘘ぶいているのを私は知っている。逆に変にからかわれたり、誘いを受けたり大変だったのも知っている。


「よしよし、ゆーなが可愛い乙女だって事は、私が良く知っているから」


 ゆーなの頭を撫でてやる。


 頭を撫でられながら、ゆーなは、

「下手くそ」と言った。


 その後、小さな声が聞こえる。


「嘘、よっ君の次位に上手い」


 可愛い奴だ。


「今度、ひなに聞いて見ようかな?」


「えー、私と夜空君とどっちがナデナデ上手いのーって?」


 二人で爆笑する。


「エロいわね、それ?」


「私は、貴方の事なら体の隅々迄知っているのよ?とか?」ハハハッお腹痛い。


 やばいなー私達、恋ばなしてるわー!!



 馬鹿みたいに一頻り笑った後、


「ちーちゃんは、どうするの?」


「何が?」何の話だろう?


「これから」


「これから?」


「うん、これから」やっぱり、その話かぁー。


「私は変わらないってか、変えられないわよ」

 ゆーなが面白そうに、

「へー?どうして?」

 こいつ、会話を楽してるな、私は、ふーんとか、それでだけで会話する奴が嫌いだ、自分も良く使うから、表立って言えないけど。


「私だって馬鹿じゃないよ」


「今、動いたって、関係が悪くなるだけでしょ?」


「おーっ」ゆうなが驚いた風にパチパチと手を叩く。


「まぁ、そうだよねー、私もそう」


「それにね、私は二人とも好きなのよ」


「私もそう」


「……夜空っちの事、まぁ好きだけどさ」


「私もそう」


「あんたねー!!」


「アハハ、冗談冗談」


「やっぱり、あんたは何時もそう!!」


「そうそう」キサマ!!


 キャー!ワーー!!ギャーーー!!!ハァハァ……。


「ハッハァ……でハッ何で……あんたは、そんなに、タフなのよ!!」


「ヘヘーッ、部活やめてタラタラ勉強してるちーちゃんには、負けないよー!!」


「はぁ、もう、やってらんないわよ」


「フフン、毎回ぴょんちゃん先生の相手してる私をなめないで欲しいなー」


「園児レベルめ!!」


 やっと、追い付いた。


「ハァハァ、だから私は」


「良いよー言わなくて」


「なっ……何よ!!ここまで、煽っておいて!!」


 ここまで、言ったなら最後まで言わせてよ……もう。


「解ってるよー、よっ君気になるけど、ひなっちとの中壊したくないから、このままが良いんでしょ?。」


「……だって、そうするしか無いじゃん」


 恋愛とかも大事でも…。


「ひなっちとの仲の方が、もっと大事だよねー」


「良いよ、だってその方が楽しい、その方が楽、その方が悲しまずにすむ」


「本当に、ハーレムだったら良かったのにねー」


 ずっと思ってた言葉。それなら誰も傷つかない、それなら皆で仲良く出来る、それなら……。


「ずっと天野夜空の側に入れるのにね」

 耳元で囁かれた、ゆーなの声が私の中の決壊を壊した。


「わた……私……やっぱり……ひなより先に、夜空にあ、い、グズッだがっだ……」


 私って、こんなに女々しかった?


 私って、こんなに女々しかった?


 私って、こんなに女々しかった?


 それから、30分程泣いた。


 その間、ゆーなは、黙ってずっとそばにいてくれた。


「ちーちゃん、私は泣かないよ」


「私の恋ばながどうなって行くかは、まだ全然解らないけど、泣かずに、皆と笑ってる」


「だから、泣くのに飽きたら、一緒に笑おう!!笑って騒いで、楽しもう!!」


 格好良いなゆーな。


 きっと、ゆーなが男の子なら惚れてかもね。


 夜空の次にだけど。


 もう、外は真っ暗、星が瞬いている。


 冬の夜空は綺麗だと思った。


「……あれ?そこにいるのは千早さんと夕凪さん?」


「うぇ?あれ?よっ君?」


「夜空っち、どうして?」


 星、瞬く夜空の下に夜空がいた。














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