第28話 恋ばなと君の夢7

 私が夜空に恋してると気付いてから、私は色々な事に気付いてしまった。


 ひなが今まで以上に可愛くなっていた事。


 ひなが意外に嫉妬深かった事。


 私が、意外に寂しがりだった事。


 あぁ、可愛く生まれたかったなぁ。


 だから……。


「私なんかの何処が可愛いのよ!?」


 ゆーなに八つ当たりをした。


 そんな所があるなら教えて欲しかった。


「そーねー、すぐに意地を張る所とか、すぐに凹む所とかー」


 こいつ……イラッとした私が声をあげようとした時だった。


「密かに、メガネを好きな子と色違いのお揃にしちゃう所とかー?」


「なっ!?」


 何で、あの……バレ……あの。


「アレレー、おかしいぞー?何でちーちゃんはお顔が赤いんだろー?」


 夜空っちに好評だったメガネ少年探偵の物真似は、度々聞く事になるのだけど、妙に上手い分、ムカついた。


「うっ、うるさい」


 こいつ……。


 あぁ、もう頭が回らない。


「同じ店で買ったんだから、一緒になったっておかしく無いでしょ?」


「それに、好きな色がそれしか無かったんだから、しょうがないでしょ?」


 そう、これは不可抗力なんだ……そう思い込みたかった私の最後の悪あがき。


「ちーちゃんってさー、普段身につける物って寒色系だよねー」


 あぁ、そこ言うんだ。言っちゃうんだ。


「いつもは、白い色なんかー絶対着けないもんねー」


「ひなっちの色だから」


 じわりじわり詰め寄ってくる。どうにかしてよ、この名探偵。


「色位、良いじゃない別に、何着けようが」


「うん、私もそう思うよ」


 やっと引いてくれた?


「私ねー、今までに何度も同じ事言った事あるのー」


 だよねー、こいつはこういう奴だった。


「ちーちゃんに」


 知ってるよ、私も聞いた記憶がある。


 何て言えば、止めてくれる?


 どうすれば、止めてくれる?


 頭の中、いっぱいいっぱいだよ。


 実際、私は半泣きだった。


 だから、次のゆーなの言葉は意外だった。


「ごめんねー、意地悪したねー」


 そういって、ゆーなは、私を撫でてくれた。


 私は、ただ何も言い隠せないで、悔しくて、一言だけ「うっさい、下手くそ」って言ってやった。


 この時だけ、ゆーなはムスッとした顔をしていた。

「あれと比べないでくれる?」


「ばーか、お前なんか夜空の足にも及ばないのよ」少しだけ、やり返してやった。


「ニシシ、やっと調子戻った?」


「知らない、そんなの」


 今日は、ゆーなに負けてばかりだ。


「悔しいなぁ、もう」


「私は、嬉しいけどねー」


 むくれる私の前に、ゆーなは普段見せない様な優しい微笑みを見せる。そして、私にぎゅっとハグをした。


「なっ、」


 驚く私に彼女は、優しく言ってくれた。


「ちーちゃんの可愛い顔がこんなに見れた」


 本当に今日はゆーなに勝てない。


「辛いよねー、あんなに近くで、いちゃつかれるとー」


 思わず顔をゆーなから、顔を背ける。


 今、絶対に見られたくない顔をしてる。


「しょうがないでしょ?」


「うんー、しょうがないねー」


「恋は、早い者勝ちじゃないって言うけどー、絶対に嘘だよね」


「私達は、出遅れましたー、ひなっちが早かった」


「多分、それだけー」


「私……たち?」


 私の問い掛けに、ゆうながニヒヒーと笑った。


「そーう、私達」


「私も、よっ君の事好きだよー!!」



「あんたもって、私は……関係無いんだから」

 今さら、何を言ってるんだと思いつつも。


「ハイハイじゃあ、私が言うよー」


「私はよっ君を好きになってしまったのだー!!」


 大袈裟に、芝居がかって、普通以上に元気一杯にゆうなは言った。


「参るよねー、まったく」


 ニシシと笑いながら、目だけが泣いてるみたいに見えた。


「ゆうなは、いつから?」


 しょうがない腹をわって話そう。


「11月位かなー?」


「えっ?最近じゃん」


「うん、最近」


「だって、ちーちゃんが夜空の事好きだって思って、色々観察し始めた頃だったから」


「えっ?私の事も、ずっと見てたの!?」


 全然、気付かなかった。


「しょーがないでしょー」


「聖女様とその番犬をデレさせた男の子だよー!?何があったと思うよねー」


「ちょっと待て、今、番犬って言った?私の事、番犬って言った?」


「ピュ、ピーヒュルフ、ピュー、ピュルヒュールルー♪」


「ごまかしの口笛のクオリティ無駄に高いわね!!」うっま、曲名も解るわ。


「ニヒヒ、じゃあ聖女様とナイト様?」


「もう、何でも良いわよ」


 呆れて、肩をすくめる。


「うーい!!で観察したのよ、よっ君の事」


「で、どうだったのよ?噂のモテモテ君は?」


「んー結論から言えば、スペックが高い普通の子かな?」


「スペックが高いは、認めるんだ」


「まあねー、そこはそうとでも思わないとー、恋に落ちた理由考えるだけで中学卒業するよー?」両手の平を軽く上げてお手上げのポーズを取るゆーな。


「まぁ、可愛い顔してると思うけど」


 少し照れるゆーな、微笑む私。


「何て言うか、ズルいよねあの子」


「優しいし、真面目だし、誠実だし、何でも知ってるし、適度に間抜けで、適度に隙を見せる」


「んでもって、いざという時の頼もしさも半端無い!!」


 ゆーなの言葉を聞きながら、夢中になると、普段の間延びした口調が無くなるんだなと、ゆーなの新しい面を発見していた。


 この子も、結構本気で惚れてるな。









 







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