第23話 恋ばなと君の夢2

 受験勉強モードになると、月日が流れるのが早い。暑い寒いの比率が段々と変わっていき、やがて季節が変わって行く。


 期末テストも終わる頃、町はクリスマスソングに溢れ、綺麗なイルミネーションが町を彩る。


「寒いね……」


 吐く息が白い。白い息が淡く空に霧散していく。


「本当ですね」


 日向さんが僕の隣に近づいて、そっと真似て息を吐く。


 二人の息が重なって……それに気付いてお互いに赤面する。


「二人の息が重なってって……いやん、エッチー!!」


 後ろから聞こえた夕凪さんの声に、慌てて離れる。


「もう夕凪!!」


 顔を赤くして怒る日向さん。


 照れ笑いする僕の周りを日向さんと夕凪さんがグルグル回る。


「馬鹿やってないの、ゆーな、転ぶよ。」呆れた顔をする千早さん。


 最近、ようやく見慣れた千早さんのメガネスタイル。

 そして、片手には単語帳。


 千早さんが、意外に真面目なのに、最近気付いた。


「日向さんも、落ち着いて」


 はしゃぐ二人に声をかけると、日向さんが立ち止まる。


「……」じっと、僕の方を見る日向さん。



「……」じっと、僕の方を見る日向さん。



「……」じっと……。


「ごめん、ごめん!!」無言の圧力に負けて、謝る僕。


「ああもう、悪かったよ


 ちょっと前から、日向さんを呼び捨てにして欲しいと言われていた。


 名前呼びすら、恥ずかしかったのに、呼び捨て……。


 まだ、馴れないなぁ。


 理由は、遠藤さんや近藤さんは名前呼びに変わったのに、自分だけ、何も変わらないのが、嫌だったらしい。


 僕の可愛い彼女いや恋人の頼みなのだ、それ位、聞いてやらないと。


 ちなみに、もちろん彼女呼びは駄目で恋人と呼んでと言われたりもしている。


 この辺は、英語が得意な日向らしいこだわり。

 girlfriend彼女lover恋人では、意味が違うって事らしい。


 解るけど、周りの目が痛いんだよね。


 最近は、減ったとはいえ、周りの男子達のギスギスした目がね。


 日向が呼び捨てにして欲しいと言って来たのは、ちょうど僕が、千早さんのお勧めの美容室へ髪を切りに行って、メガネも新しい物に変えた後、位からだ。


 元々、日向や千早さん達に勧められてたとはいえ、少し恥ずかしかったけど、勇気を出して、姿だけでも変わろうと思ったんだ。


 髪に段差をつけ、全体を短めにするショートレイヤーに前髪はナチュラルにセンターで纏めた。何となく髪型を知っている人にみえるでしょ?


 でも、実際は女の子達三人がヘアカタログを見てワイワイきゃいきゃい言いながら決めてくれた。


 少し短い髪型に恐怖心があったけど、出来上がった後に鏡を見てポーズを取っている無自覚の自分に恥ずかしくなってしまった。


 ちなみに、千早さんのメガネもその時買った物だ。


 白いフレームが可愛い。


 日向が私もメガネ買うと言って、珍しく駄々をこねた。


 目も悪く無いのにね。


 ちょっと嫉妬気味の日向も可愛いと思ったのは内緒だったりする。


「?」ふと、千早さんからの視線を感じてそちらを見る。


 首をかしげる僕に千早さんは、慌てたように、

「何でも無い何でも無い、仲が良いなぁって思っただけ」笑って、僕の肩を叩く。


 日向と一緒にうつ向いて照れ笑いをしてしまう。


「そう言えば、今日はうち寄って行くの?」


「えっ、そりゃそうだろ?テストの答え合わせしたいし」


「私も、ぴょんのすけに会いたーい!!」

 千早さんと夕凪さんが口々に言う。


「ぴょんちゃん、もう帰って来てるんですか?」


 日向の嬉しそうな顔。


「妹なら、もう帰って来てると思うけど、まぁ、僕もテスト答え合わせしたいと思ってたし良いか!!」


「今日はテストも終わったばかりだから良いけど明日から、また受験勉強だからね」


 僕らは、秋位から、暇を見つけては、僕の家で、勉強会を始めていた。


 日向は、ともかく千早さんや夕凪さんも、凄く真面目で、凄くびっくりした。


 最初は、何処が解らないのかも解らないと言って頭を抱えていた彼女達だったけど、少しずつ少しずつ解るようになってきて、今、勉強するのが楽しくなって来たと喜んでいた。


 妹とも、仲良くしてくれるし、僕としては本当に助かっている。


「おかーりー!!」


 家のドアを開けた途端に小さな爆弾が降ってくる。


 妹がバーン言わんばかりに、僕の胸に飛び込んで来た!!


「おぉー!!ひなねぇね、ちあねぇね、下僕1ぎょう来ちゃか!!」


「おいこら、ぴょんのすけー!!誰が下僕1号よー!!」夕凪さんが、妹のほっぺたを両手でつまんで、グニグニやり始める。


「いひゃい、いひゃい!!」妹は、きゃははと笑いながら大ハシャギ。


「こんにちわ、お姫様」千早が妹の額をコツンとする。


「会いたかったですよー!!うさぎちゃん!!」

 日向が、手馴れた感じで僕から妹を預かり、ぎゅーとする。

「ぴょんちゃんも、ぴょんちゃんも!!」

 妹は、日向の胸でスリスリする。


「本当に姉妹みたいだね。」千早が微笑ましそうに笑う。


「よーし、カモーン!!こっちのおっぱいはおーきーよー!」夕凪さんがいらん事をまた言う。


 ほら、日向が膨れた。


 妹、見比べる、妹、日向の胸にスリスリする。

「日向ねぇね位が良い。下僕1号は胸がデブい。」


 シーンと静まり返る、


「キャーもう、うさぎちゃん、うさぎちゃん、うさぎちゃん!!」


「まっ負けた私の自慢のおっぱいがー。デブいって、何?大きければ良いんじゃないの……?」


 確かに、下僕…いや夕凪さんのバストは三人の中で一番大きい。確か谷本情報では、Eらしい。ちなみに千早さんはC。


 僕は、谷本に聞いた訳じゃ無いんだ。ただ聞こえてしまっただけなんだけどって、どっかで聞いた台詞だな!!


「夜空っち、先に部屋行ってて良い?」


 馬鹿騒ぎに飽きたのか、千早さんが、我が家の様に、さっさと上がって行ってしまう。


「夕凪、私達は、勉強で来てるんだよ!!時間が勿体無い!!」

 千早さんの声に、驚く夕凪さん。


「うっうん、千早ゴメンねぇー、よっ君お邪魔しまーす。」


 夕凪さんは困惑気味に、慌てて後に付いていく。


「大丈夫かな?千早」


 親友の、ちょっとした異変に戸惑いを隠せない日向さんと僕だった。













  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る