第22話 恋ばなと君の夢1

 大騒ぎだった修学旅行も終わり、受験生の僕らは、一気に勉強ムードに一直線に……なるはずだったのだけど。


「ひなー、夜空っち、イチャイチャしてないで帰るよー!」


「してないよ!!」

「してません!!」


 と、言いつつも多分、周りから見たらイチャイチャしてたんだろうなーと、思い当たる点がありすぎて。


「僕ら新人カップルは、絶賛ベタベタ真っ最中だったー(終わりー)」



「近藤さん!!勝手にナレーション入れるのやめて!!」


「夕凪!!もー、恥ずかしいからやめて下さい!!。」


 あの後の修学旅行は、一生の思い出に残りそうな程、楽しくも激しいものだった。


 ほぼ強引に日向さん達女子班に連れていかれ自由行動は日向さん達と一緒に行動する事になった。


 勿論、ホテルの部屋は以前と同じだったのだけど、 ほぼ就寝時間までは女子達と次の日の計画を立てたり、トランプ等で遊んだり、まぁ勿論皆から、からかわれたり。


 寝る時間に男子部屋に戻っても、遠藤さんの言葉が聞いたのか変に絡まれる事もなく、逆に親しげに女子部屋の話や恋の相談なんて事もあって、思い出に残る夜となった。


 恋の相談なんて、僕に言われても困るけど、相手の一生懸命さに、上手く行けば良いな、なんて思ったりして。


 二日目の自由行動では清水寺や二条城、銀閣寺等々の有名スポットを大忙しで回り、


 三日目の自由行動では、満を持して大阪の巨大遊園地で丸々1日遊んだ。


 楽しかったけど、どうして女の子達は、絶叫系の乗り物が大好きなのだろうか?

 もうフラフラのクタクタになるまで、つれ回された。


 手を繋いでいる所を写真で撮られたり、


 遊園地のアトラクションで、日向さんに抱きつかれた所を写真で撮られたり、


 二日目のホテルで、食事の時に日向さんにアーンをされている所を写真に撮られたり、


 帰りの新幹線で肩に寄りかかって二人で眠ってしまった所を写真に撮られたり……。


 あれ?まずい所を写真に写真撮られてばかり?うん、楽しかったのかな?


 うん、楽しかったよな?これで心労ばかりでとか言ったら男子達から怒られるやつだよな?


 そんなこんなで、楽しかった修学旅行も終わった。


 ☆☆☆


 そして、10月の半分が過ぎた頃だった。

 急に涼しくなり、秋らしくなって来た。

 学校の帰り道、僕と日向さん、千早さんに夕凪ゆうなさん、最近この四人で動く事が多い。


 女子率が高すぎて、何となくいたたまれなくなる時もあるけど、最近、慣れてきたせいか居心地は良い。


「ねぇねぇ、よっ君、結局進学する高校ってー、この近所の公立高校にしたの?」

 夕凪さんの

「うん、まぁね、私立はちょっと経済的にキツいし、あそこなら通うのも楽だしね」


「ひなも、あそこなら大丈夫だしね」


 千早さんが、ニヒヒと笑う。綺麗な人は、どんな笑い方をしても、下品にならないんだと最近思った。


「まぁね、それも……あるかな?」


 頬をポリポリ掻いて照れ笑い。


「おうおう、言ってくれますな!!」


 夕凪さんが、バーンと僕の背中を叩く。


「いてて、ちょっとは手加減してよ」


 背中を擦りながら苦笑いをしていると、僕の制服の左腕の袖口を日向さんが掴んでいた。


「ねぇ夜空君、私、夜空君の邪魔してないかな?夜空君なら、もっと良い高校に行けて、もし、私がその邪魔をしてるなら……」


 日向さんが、うつむきがちに言う。


「推薦はあったよ、それに、もっと評価の高い高校へ行けるかもね」


 僕は、言葉を選ばずにストレートに言った。

 同じ心配は何度もして欲しくないから、だから先に全部言っておく。

「じゃあさ……」


「行けてどうなるの?良い大学へ行ける?将来の就職に有利?」千早さんと夕凪さん、二人は傍観するらしく黙ったままだ。


 だから、ちょっと強めに言う。


「そこには、君はいないんだよ?そんなつまらない所、僕は行きたく無い」


「夜空君」


「実は僕はね、好きで勉強してた訳じゃ無いんだ」


 わざと明るめに微笑む。


「他の人達がスポーツや趣味を楽しむ様に、ただやる事が無くてマンガや音楽を聞く様に、僕には、他にやりたい事が無かったんだ」


「だから取り敢えず勉強をしてた。やり過ぎても怒られ無いしね」


「やる事が無かったから勉強って、ウケる」


 千早さんが笑う。


「本当、よっ君らしいわー」


 夕凪さんも笑う。


「だから、別に無理に勉強しなくても良いし、そのせいで日向さん達と会えなくなるなら、勉強なんてどうでも良いよ」


「だってさ、今が楽しいんだから。もっと、みんなと、一緒に勉強したり、遊んだり、 その、上手く言えないんだけど 」

僕は、日向さんに微笑んで、

「頑張るなら、皆で頑張りたいんだ」


僕の左腕をぎゅっとする日向さん、

「私、頑張ります。夜空君と一緒にいたいです」


「全く、そこまで言われたら、やるしか無いだろ?」千早さんがやれやれと肩をすくめ笑う。


「よっ君、勉強教えてくれるんだよね」じっと夕凪さんが僕のの目を見る。

 目を反らした。


「うっーよっ君ーー!!」目を潤ませる夕凪さんに、苦笑いしながら、

「冗談ですよ冗談、僕が言った事なんですから責任って、皆に教えます」


「えへへー、知ってたー!!」夕凪さんの笑顔に、つられて皆で笑った。


「私も頼むよ、なんせ今まで部活三昧だったんだからさ」


「はい、一緒に頑張りましょうね!!」


 頭をポンポンすると、千早さんも観念する。

「うぅ、先生頑張ります」誰が先生ですか。


「先生、数字が苦手です!!」大きく手を上げる元気な日向さん

「はい、知ってます」

「うぇ、夜空先生が、素っ気ないです」

 嘆く、日向さんに耳元で、囁く。

「そう言うのは、二人きりの時に」

「はい、夜空先生!!」


「うぅ、夜空っちが、段々たらしになっていく」


「よっ君、恐ろしい子!!」


 誰が、たらしだ、誰が!!


「全員、同じ高校へ行くんでしょ?」


「僕に、任せて欲しい」


「夜空っち…」「よっ君…」「旦那様…」ちょっと最後!!日向さん!!


「あー、ゴホン!!」改めて、


「みんな、頑張ろう!!」


「はーい!!!」


 秋の空に、三人の声が綺麗にハモった。





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