第19話 恋ばなと2年の君と9

「では、質問コーナーです」


「えー、ラインネーム、まことママさんからです」


「りっくんママさん、みっちゃんママさん、ゲストのお二人こんにちは」

 りっくんママさんと、みっちゃんママさんがが、スマホ片手に挨拶する。


 何故か、僕ら二人(僕と日向さん)も「こっこんにちは」と、挨拶する。


小さな声で日向さんが、

「ねぇ夜空君、私達何してるんだろ?」困った顔をして僕の方を見る。


「さぁ何してんだろぅ?」大丈夫、日向さん僕も困ってる。


「さっそくですが、ぴょんちゃんにぃにと彼女さん、付き合って、どの位何ですか?」


「流石、真面目な、まことママさん、直球な質問ですね」


「オーターニもびっくりですねオーターニ」

 誰だよ、オーターニ。


「だから、僕らは、付き合って無いんですって」


 何度目だろうか、この会話。このラジオ番組風寸劇に付き合わされて、僕も、流石に疲れてきた。


「やっぱり二人きりの秘密みたいです!!」


 みっちゃんママさん、お話聞いて。この言葉も数回目、頭を抱えた時だった。

「ねぇ、夜空君」


 僕の服の袖を引っ張る日向さん。


「どうかした?」


 袖を引っ張る日向さんが僕の耳元で言う。


「あの、私、多分これから、こちらに来る事ってあんまり無いと思うんですよね?」


「ん?それは多分」

 そりゃ、日向さんが行きたいって言わなければ、今回、起こりえなかった話だし。


「だから、どうせ話を聞いて頂けないなら、話を合わせちゃった方が楽じゃ無いですか?」


 どういう事?


「その……」


 少し良いよどむ日向さん。


「どうせ、バレないんですし、私達がお付き合いしているふりをするって言うのはどうでしょう?」


 はっ?んん?ちょっと待ってよ聖女様。


「ひっ日向さん、それは不味いって!!」


 慌てふためくとは、まさにこの事、アワアワしながら、両手をバタバタさせる。


「でも、このままだと、延々と同じ質問を繰り返されますよ?」

「それは、そうだろうけど…」


「ですよね?あっ!!」


「ゴメンなさい!!でも、夜空君がもうお付き合いしている方がいるなら、ご迷惑ですよね?」


「えっ?そんなの無い無い。全然無いから!!どっちかと言えば、日向さんに迷惑かけるんじゃないかって!!」


 上目遣いに言われた言葉に、全力で否定する。


まぁ実際、彼女いない歴=年齢なのだから。


「では、そう言う事で?」


 いたずらっぽく、日向さんは笑う、それは、いつもの聖女様とは違った風に見えて。

「ちょっ、日向さん!?」

「誰も傷つかない嘘なら、たまには良いのでは?」


 ズルいなー、これは冗談でも、好きになっちゃう奴だ。


「悪い聖女様だなぁ」


「私は、聖女なんかじゃありませーん」


 何か、嬉しそうに笑う日向さん。


 僕は、日向さんの事を何も知らない。


 当たり前だ、僕らはマトモに話したのは今日が初めて。


 聞いた位の事しか知らなかった。


 清廉潔白、誰にでも優しい聖女様。


 少し前の僕だったら、この提案に乗ることは無かっただろう。


 少し前の僕だったら。


 この数時間の間に、色々話して色々な日向さんを見て、一緒に笑って、驚いた顔を見た今の返事はこうだ。


「まぁそれも、楽しいかもね?」


「はいっ!!」素敵な笑顔。


 僕らは、この状況を少しだけ楽しむ事にした。


「ふふふっ、二人とも、やっぱり仲良しさんね?」

 みっちゃんママさんが、微笑ましさ半分、からかい半分の笑顔で話しかけてくる。


「アハハ、どうも」テレる僕達。


「ねぇ彼女さん?」


「えっ?はっはい?」急に話を振られて焦る日向さん。


「ぴょんちゃんにぃにに目を付けて正解よー」


「ちょっ、みっちゃんママさん!」急に何を言い出すのだろう、焦る僕。


「ママ友でも評判だったものー、優しいし真面目だし面倒見も良いし、お顔も可愛いし、娘が彼氏として連れて来るなら、ぴょんちゃんにぃにみたいな子が良いわよねー!って」


 りっくんママさんと「ねー!」とハモる。


「だから、みんな、ぴょんちゃんにぃにに彼女が出来たって言ったら興味津々で」


 らいんの画面を見れば、凄い勢いで画面が更新されていく。


 何これ、怖い。


「でも、あなた見たいな素敵な可愛らしい子で良かったわー!」


「変な子だったら、只じゃおかないってママもいたくらいだから。」


 笑顔がひきつる聖女様。


「ぴょんちゃんにぃに人気あるからなー」


 本当ですか?りっくんママさん、聞いた事無いんですが!?


「何となく解ります。夜空君とても素敵な人ですよね!」


 日向さん!?


「今日、来て良かったです」

「夜空君の良い所、素敵な所、皆さんに好かれている所、沢山知りました」

「何より、素敵なお知り合いが沢山出来た事がとても嬉しいです」

 両手を胸の前で組み、祈るようにささやく日向さんは、まさに聖女様で、見ている僕達が一瞬呆けてしまう位だった。


「もー、あなた達素敵ー!!」みっちゃんママさんが僕と日向さんを両手でぎゅーと抱き締める。


「ちょ、ちょっと、みっちゃんママさん!?」ヤバい、顔に巨大な物が!!後、アレブラのワイヤー?が顔に食い込んで微妙に痛い。


 日向さんと二人、あふあふしながら耐えていると、しばらくして満足したのか、みっちゃんママが解放してくれる。


「二人とも仲良くしてね!!困った事があったら私達が力になりますからね!」ママさん二人が親指を上げてサムズアップする。


 僕らは、苦笑いしながら、何となく「よろしくお願いします」と言っていた。


「にぃに、ひなねぇね!!公園着いちゃよー!!」


 元気なお子さま達が公園になだれ込んでいく。


「僕らも行こうか!!」


僕は、日向さんに右手を差し出す。


「はいっ!!」日向さんが、その手を掴む。


 自然に僕らは手をつないで公園へ走って行った。












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