第18話 恋ばなと2年の君と8

「にぃに、ひなねぇね、ぴょんちゃん帰りにどっか寄りちゃい!!」


 幼女が爆弾を投下した。


「買い食いは駄目だぞー」


 一応、いざと言う時の為に、母さんから、いくらか渡されてはいるのだけど、やっぱり夕食の事も考えないとね。


 他にも、急な園から集金やうさぎが友達の家に遊びに行く時のおやつ代や園児の誕生日のプレゼントとかを皆でシェアしてお祝いするんで集金とか、たまに必要になる時があるんだ。


 殆どは、他の子供のお母さん達から聞いたり見たりして覚えた事だけど。


「ぴょんちゃん買い食いなんちぇしない。デブになる」


「かっ買い食いはデブ?……普段千早や夕凪としてる私達は買い食いでデブ……」


 わあっ、違う所でダメージを受けている人がいる!!


「なっ何言ってるんだ、お子さまがデブになるなんて言うな、ちっこいくせに!!」


 妹の髪をぐしゃぐしゃとする。


 そして妹は脛を蹴る。


「そっそうですよ!!ぴょんちゃん姫様!!ほらっ、こんなに軽い軽ーい!!」


 いつの間にか復活した天野さんが、背後から妹の両脇を抱えて高い高いをする。


「キャハハハ、もっと、もっと!!」


 妹、聖女様の高い高いに歓喜する。子供特有の高い声が耳にいたいなぁ。

「ぴょんちゃん姫様は、もっと沢山食べないと駄目ですよ!」


 天野さんは、妹をおろした後ぎゅっと抱き締めて頬擦りしていた。その姿は、まるで壊れ物でも触るかの様に優しく繊細に、何となく聖女様って感じよりも女神様って感じで、まぁどう違うのかなんて解らなかったけど。


「可愛いなぁ、うさぎちゃん」


 いえいえ貴方の方こそという言葉を僕は飲み込んだ。聖女様と幼女様、眼福過ぎるだろ。写真取ったら犯罪かな?


「ねぇ、ひなねぇね、聞きちゃいの」


 急に、モジモジし始めた妹に「なぁに?」優しく天野さんが聞き返した。


「どおしちゃら、ねぇねみたいに、おっぱい大きくなれまちゅか?」


 天野さんの目が大きく見開かれ、もう一度ぎゅっーーと、妹を抱き締める。


 ヤバい天野さんに、胸の話は、アマリヨロシクナイ。


 冷や汗を流しながら、そっと


「お姫様、ありがとうございます」


 あれ?何故か、涙目。


「今、私は自分自身を誇らしく思います!!」


「ねぇね、フカフカよ」


「千早やゆうなが平均より大きいだけで…私だって私だって…」

 日向さんが、ガッツポーズをしている。


 もう何を、聞かされているのか、僕はもう空気になりたい。


 聖女と妹とおっぱいの話。


 新作ラノベかよ?


 いや、妹が羨ましいとかって、そんな事はまぁうん、無いよ……無いからね!!


「夜空君!!」

「はい!!何でしょう天野さん!?」

 えっ、心の声漏れてた?

 少し慌てふためく。

 でも、名前呼びは確定なのね?

「日向です!!Repeat after me!!」

 何このヒヤリングテスト?うっ、僕も言わなきゃ駄目か…。

「日向さん。」

「Once again please!!」

「はいはい日向さん!!これで良い?」後、なんで、英語?(一応解ると思いますが、日向は英語で私の後に続けてと、もう一度お願いしますと言いました。)

「はい、良く出来ました。それと、ぴょんちゃん下さい」


「えっ?だめです」


「即答ですね」


「兄ですから」


「では、一年間貸して下さい」


「だめです」


「即答ですね」


「兄ですから。それと、具体的過ぎて怖いです」


「にぃに、ひなねぇね、ケンカメェよ!!」

 チビッ子幼女がバーンと入ってくる。バーンと。

「ぴょんちゃんのびぼうを、うりゃりゃむのは、わかりゅけど、ケンカはメェよ!!」


 天野さんいや、日向さんと顔を見合せて一緒に笑った。


「大丈夫、ケンカなんかしてないよ」

「はい、私と夜空君は仲良しです!!」

「なりゃ、いいのよ」

 その数十倍の笑顔で、笑う。


 うちの妹は、反則だと思った。


「今日は、ぴょんちゃんはおっきな虫こーえんに行きちゃいの」

 おっきな?しばらく考える。

「あぁーっ、てんとう虫の公園な。」


「しょしょ、てんちょう虫よ」


 何か中途半端に偉そうな虫だな。


「てんちょうむし……もう可愛い……全部可愛い」


 もう日向さんは、妹の言う事なら、何でも可愛いらしい。


「喜べちびっこ、いてっ」


 妹が脛を蹴る。


「……、お姫様、丁度てんとう虫公園行こうと思ってたんだ」


 ちびっこ言うと脛を蹴る、幼女キック恐るべし。


「はい、さっきバスの中で帰りに寄りたいって、話してたんですよ」


「やちゃ!!にぃに、ひなねぇねゴーだ!!」


 やれやれと、僕らが、てんとう虫公園に行こうとした時だった。


「ぴょんちゃん、こーえんくのー?」

「ママー、僕も行くー!!」


 妹と同じ位の女の子と男の子が、近づいて来る。後ろから、この子達の両親らしい母親が追いかけてきた。

「ごめんなさいね、うさぎちゃんにぃに、うちの子が、美月みづきちゃん、ちゃんとご挨拶は?」「ごめんねー、ぴょんちゃんにぃに、りく挨拶!!」


「みづきです、みっちゃんです!」サイドを三つ編みにした女の子が、ペコリとお辞儀する。

「おれ、りく!!それより公園行くの?」わんぱくそうな男の子が、食いつくように話しかけてくる。


「あぁ、りくくんとみっちゃん、いつもうさぎと仲良くしてくれてありがとうね。」


「こんにちは、夜空君……ぴょんちゃんにぃにのお友達の日向です。日向ぼっこの日向だよ、よろしくお願いします」僕らが挨拶すると、お子さま二人とも、何故か顔を赤くして、それぞれの母親の後ろへ逃げ込んだ。


「ごめんなさいね、ぴょんちゃんにぃに、これから公園行くの?」みっちゃんママさんが、ごめんなさいねと言いながらもここぞとと言わんばかりに、話しかけてくる。


 おっとりとした美人さんで、こども園の事とか、何も知らなかった僕に色々教えてくれている。

 まぁ、外見上であえて言うなら、まぁあえて言うなら、その胸部の部分がふくよかで大きくって言うか巨乳凄く巨乳。


 隣のりっくんママさんは、ボーイッシュなショートカットのママさんで、今は妊娠4ヶ月位らしい、つわりもおさまったと喜んで話していた事があった。


 二人ともとても優しく、何時もお世話になってばかりだ。


「はい彼女が、昔あの公園に、来たことあるらしいんで、帰りに、ちょっと寄りたいねって。」


「やっぱり彼女だー!!!」ママさん、二人がハモる。


「いや、違います!!友達です、友達!!別に彼女とか、そんなのじゃ無いですから!!って言うかやっぱりって何ですか!?」慌てふためく僕、真っ赤になる日向さん。


「やっぱりね、ほら、そうじゃない」「ぴょんちゃんにぃに、可愛いお顔してるもんね!」「彼女位いるわよねー!」「やっぱり、彼女さんも可愛いー!!」「お姫様みたいってか、○となりの天使様みたい!!」「美男美女!!」「美男美女!!」「美男美女!!」「美男美女!!」「今、ちょっと危険なワードが入ってた気がするわー?」「大丈夫、可愛いは正義よ!!」


 うわぁー、話を聞いてくれない。


「ごめん日向さん、何時もは良い人達なんだけど、時々話を聞いてくれなくて」


「アハハ、大丈夫、大丈夫ですから」


 この後、結局、他のママさん達と公園に一緒に行く事になるのだけど、二人のママさんの質問責めに僕らは真っ赤になって、しどろもどろになるしかなかった。
















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