第14話 恋ばなと2年の君と4

 バスは高速道路へ入り、京都へ向かい始めた。


 バスガイドさんから、高速に入るので全員シートベルトをする様にアナウンスがあって、日向さんを起こさない様に、そっとシートベルトを閉めた。


 目的地までは、もうしばらくかかる様だ。


「しかし、日向さんと付き合う事になるなんて、本当に思わなかったな」


 僕は、隣で眠ってしまった日向さんに、もってきていたブランケットをかける。もしかしたら少し寒かったのだろうか?


 日向さんは、へにゃーとした幸せそうな笑顔でブランケットにしがみついて暖かそうな顔をしている。小さく「夜空君」と言ったのは聞かなかった事にしよう。


 ただ、身体中に多幸感が満ちている気がして……。


 彼女の幸せそうな寝顔を、じっと見つめてしまった。


「寝た?」


 遠藤さんが、覗きこんでくる。


 僕は、うなずくとぬくぬくと寝る日向さんの頭を撫で「後で起こすからゆっくり休んでね」と囁く。


「夜空っち、本当ナチュラルにひなの頭を撫でるんだな」


「あっ、いやその……ゴメン」


「あー、ゴメンゴメン、別に責めてる訳でもからかってる訳でも無いよ」


 遠藤さんが謝ってくる。


「その、ひなの幸せそうな顔見てると、そんなに気持ちが良いものなのかなって?」


 遠藤さんが少し恥ずかしそうに言う。


「どうなのかな?流石に意識した事は無いけど」意外にみんなに見られている事に少し照れを感じてしまう。


「とゆーわけで、どれ、少し頭を撫でて見なさい」


 頭を差し出さして来たのは、遠藤さんではなく近藤さんだった。


「なんで、あんたなの!!」

「しーっ、ひなっちが起きちゃうよー」


 唇の前に人差し指を立てて、しーっとやる近藤さん。

「アハハ、二人とも面白いなぁ」


 僕が笑うと二人は、恥ずかしがりながら、

「でもね?撫でて欲しいのは本当だよー」

「あーその、私もちょっと興味はあるわ」


 その時の僕は、顔がひきつっていたかも知れない。


「えっ?マジですか?」

「僕、なったばかりですが、一応日向さんの…」


「大丈夫、ああなったひなは、中々目を覚まさない」何が大丈夫なのだろうか?

「これは、検証で実験なんだよー、ひなっちの人体にどんな悪影響を及ぼすのかー、ねぇちーちゃん」ちーちゃんって遠藤さんの事か?

「うっ、うん、そう、その実験だね」


「いやいやいや、ちょっと勘弁して下さいよ」


 流石に焦る、何この状況?僕、この二人の頭を撫でなきゃなの!?


「ほら早くー、天野さん起きちゃうよー」


「………」


 ちょっと待って近藤さん、日向さん中々起きないんでしょ?


 それと、遠藤さん、無言で頭差し出すのやめて!!


 ……結局、二人の圧力に負けて。


「すっすみません、失礼します」


 全く、なんでこうなった。


☆☆☆


「ふぅ、…ねぇ、よっ君、今度から私の事名前で読んでね?お友達でしょ?」


「えっ、どうしたの近藤さん急に?」


「私は、近藤夕凪ゆうな、ゆーなだよー、解ったー?」


「いきなり過ぎませんか近藤さん!?」


「うん、過ぎないよー、近藤じゃなくてゆうなだよー」


「お友達なんだから」


 何か、ちょっと目が潤んでいるんですが、僕何かしちゃいました?


「ゆーなの言うとおりね」


 遠藤さんが、同じく目を潤ませながらって、僕本当に何をしたの?


「私も千早で良いわ」


「…おっ、お友達でしょ?」


 ぐはっ、そのハニカミは反則でしょ?遠藤さん。


「良い?千早よ、解った?」


「それと、あれは危険よ、無闇にやってはいけないわ」


 えっ?あれって頭撫でる事ですか?


「あの、本気で言ってます?」


「えぇ、あれは危険よ」


「私達以外に、無闇にやる事を禁じるわ」


「私達以外?」


「ノーコメント」


「えーっ?」


「ノーコメント」


 もう、本当によく分からない…。


 どこかでかすかに、ぽんぽんマスターって言っている声が聞こえたが、気のせいか?


 と、まあ色々有りすぎたけど、まだ修学旅行も始まったばかりだったしな。


 あっそうだー!!家の土産の土産買わなきゃー、後、妹のうさぎにも、お土産買わないとだった。


 現実逃避とも言う。


 うさぎ、良い子にしてるかな?行く前、「にぃにと一緒に行くー!!」って泣いて離れなかったからな。


 僕には、妹がいる。


 名前は天野うさぎ、年齢は五歳、こども園に元気に通っている。


 うちは、父さんが単身赴任で日本中をたらい回しにされている為、ほとんど家にはいない。


 ほとんど母さんと俺とうさぎの三人で生活している様なものだ。


 だから、父親の役割を僕の中に求めているのかも知れない。


 凄く懐いてくれていて、可愛い。


 以前、久しぶりに帰って来た父さんが、うさぎから、にぃに、あの人誰?と言われて激しく傷ついていた事があった。


 まぁ、そんな事もある。


 それは、ともかく、日向さんは、妹のうさぎと仲良しで時々一緒に遊んだりもしている。

 日向さんとうさぎが出合ったのは、文化祭実行委員を決めた帰りの事だった。


 ☆☆☆



 裏話


「ちょ、遠藤さんと近藤さん、何やってんの!!」「天野夜空の撫で撫でよ!!」「うちのクラスの二大巨頭が!!」「NTR?ねとり?いえ検証、実験らしいわ」「あの撫で撫でに耐えれる者がいるのかしら?」「あの獣達が!!ビーストマスター発見!!」「いえ違うわ」「ぽんぽんマスターだねー!」「私のセリフー!!」


 余りにも、馬鹿過ぎたので欄外へwww

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