第13話 恋ばなと2年の君と3

「じゃあ、どうして今さら?」


 千早が、興味深そうに聞きます。


「言ったでしょ、急いでるって」


「母さんに妹の幼稚園の迎え頼まれてるんだ」


 なるほど、天野君は妹さんがいたのですね?成る程、それで腕時計を見て、しきりに時間を気にしていたのですね?


「その、天野君、妹さんって可愛いいですか?」

天野君は少し考えて、

「どうだろう?少し生意気だけどさ、やっぱり可愛いと思うよ」


「良いな。私一人っ子だったから、少しうらやましいな」


 確かにもう学校の時計は3時を回って、部活のある人達はそろそろ時間を気にしている様でしたし、天野君の妹さんを待さ、折角だから、もう少しお話したかったですけど。


「なによ、ちゃんと言えば良いじゃない」

 千早がムッとした顔をしていますが、あれはきっとバツが悪いんでしょうね。


「悪いね、本当に説明が下手で」天野君も苦笑いしています。


 本当に不器用な人なんだな、少し笑ってしまいました。


「いえ、千早も、ちゃんと聞かないといけないと思いますので」


「ひなー、どっちの味方?」

 千早が綺麗な顔を膨れっ面にしています。


「あら?私には敵なんていませんから」

 千早の膨れた頬を人差し指でつつくとブシュと空気が出て、千早が恨めしそうに私を見てきました。

「……むぅ、今回は私の負けだね」


「あの皆さん、もう一人の実行委員は天野夜空君で、よろしいでしょうか?」


「はーい!!!」クラスの意見は一致したみたいです。


「まぁ、良いんじゃない?」「まぁ、妥当ね」「妥当、だとぅ?イタッ!!」「お馬鹿」「えーっ、本当は俺が文化祭実行委員やりたかったのに(小声)」「小声で、言ってる時点で駄目よね」「カジノ良かったのに、お前らだってバニーガール見たかったろ!?」「あーあ、まだ言ってるよ」



「では、男子の文化祭実行委員 は天野君にお願いします」


 私が天野君にお辞儀をすると、天野君も恥ずかしそうにお辞儀を返してくれました。


「だー、やっぱり可愛いわ聖女様」「見た、今のお辞儀、ペコリって音したわよ!」「あれ、幻聴じゃなかったのか!?」「畜生、こっからだと聖女様が見えない!!」「天野どけー!!」「えっ?聖女様にどけと?」「いやいや男の方の天野で……あー面倒臭い!!」「もうあいつは天野夜空フルネームで」「そっちも面倒臭いわね」「ペコリって音、俺にも聞こえたぜ!!」「幻聴よ、耳鼻科に行きなさい」


「で、申し訳ないんだけど……」


 天野君が、腕時計で時間を確認して、すまなそうに頭を下げます。


「文化祭まで時間が無いのは解っているけど今日は、ゴメン」


「家の用事では仕方ないですよね」


「へっ、どうせアニメとか見たいだけじゃね?陰キャだし」「あれだ、ラノベとか言うやつじゃね?マンガみたいな小説?陰キャだし」「お前詳しいな?」「別に何とか転生とか、天使様とかみてないんだからね?」「で、本当は?」「○○大好きです(○○には好きなラノベの作品名を入れよう)」「正直だな」男子達が笑います。


「本人の事情も解らないのに、勝手に言うのはよくないと思います」


 私が少しムッとしてしまい考え込んでいると、天野君はニコリと微笑んで、


「アハハ、言われても仕方ないとおもってるよ。陰キャなのは、本当だし。ラノベだって大好きだしね、本当の事言われて怒ってても、しょうがないしね」


 天野君は、バツが悪そうに頭をかきます。


 でも、その時私は、凄く名案を思い付いたんです。


「あの?」


 天野君の耳元でささやきます。


「私、妹さんのお迎え私もついていって良いですか?」


「え?」


 天野君が呆気にとられた顔をしています。


「ええぇ?ちょっと待って、意味が解らないんだけど!?」


「えぇ、だから私も妹さんの……」


「いや、それは解ったけど、どうして天野さんが?」


「名案を思い付いたんです!!」


 私は、笑顔で胸を張って言います。


「おぉ、あれが聖女様のおっぱゲフッ!!ギャー目がー目がー」「言わせないよ!」「見させないよ!!」「ふふっバ○ス」

 男子達が何故か遠くでしゃべっていますが、良く聞こえません。バル○って、何でしょう?


「妹さんのお迎えに行くのは本当なんですよね?」


「まぁ、そうだけど」


「だから、私も着いていけば、天野君の無実を証明できますし、それに」


「帰るまでの途中で文化祭の相談も出来ます!!」


 私は、後で千早に聞いたのですが物凄く、どや顔と言うものをしていたらしいです。


「えぇー、ちょっと待ってよ天野さん!」


「諦めろー、ああいう顔をしてる時のひなは、絶対にとめられないよ」


 千早が天野君の肩を叩いて、苦笑いを浮かべます。何となく失礼です。


「悪いんだけど、ひなの事頼むね、それと……」


「ひなに何かあったら、解ってるね?」


 何か天野君の耳元で千早が言ったみたいですが、天野君の顔がひきつって行くのが解ります。


「本当に来るのかい?」天野君が、困った顔で私の顔を見つめて来ます。


「はい、ご迷惑じゃなければ」


「まぁ、普通に迷惑何だけどね……っと、ハイハイ解りましたよ」


 千早の方を見た天野君が、諦めた様に溜め息をつきます。


 千早、何もしてないですよね?


「まったく何で、こうなった?、まぁしょうがないか」


 頭を抱える天野君に、私は笑顔で手を差し伸べます。


 天野君は少し戸惑った後、おずおずと私の手を握り返しました。


「よろしく頼むよ」


「文化祭実行委員一緒に頑張りましょう」

 私は、今日一の笑顔で天野君に笑い掛けました。







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