第11話 恋ばなと2年の君と1
夜空君や、千早の声が段々遠くなっていきます。
瞼が重くて……眠い、ひたすら眠いです……。
私は、小さな頃から、薬に弱く誘眠効果のある薬を飲むとすぐに眠くなってしまいます。逆にカフェインが入ったコーヒーとかを飲めば、目が覚えて眠れなくなってしまって。
よく千早に子供見たいって笑われたりしました。
夜空君の教えてくれた薬、凄く良く効くなぁ。
有難いんですが、もう少し起きてたいな……。
こんな時は、夜空君と出会った時の事を思い出してしまいます。
夜空君も覚えてますか?
あれは、2年の文化祭実行委員を決める時の事でした。
2年の文化祭、初めて夜空君を意識した時の……。
眠いな……。
夜空君起こしてって言ったのに……。
夜空君、もっと話してたいよ……。
☆☆☆
「そういう訳で、女子の文化祭実行委員会は天野日向さんに、決まりました」
クラス委員で私の友人の遠藤千早が、私を呼びます。
あー、決まってしまいました。
出来ればやりたく無かったのですが。
ゆーなも心配そうな顔。
同じクラスで野球部の田中君に、強く推薦された事で、少し強引でしたが、文化祭の実行委員に決まってしまった様です。
決まったのなら、やるしかありませんね。
「あの、私にどこまで出来るか解りませんが、頑張りますのでよろしくお願いします」
「オーッ!!!」男子達の歓声が響きます。
私は、苦笑いしながら、小さくお辞儀をしました。
「やっぱり、可愛いー」「やっぱり聖女様ー」「天野日向さん、名前まで可愛いよね」「天野って名字もまた良い」「天野って名字になりたーい」「あれ、確か、他にも天野っていなかった?」「うぁ?知らね、そんな奴いたか?」「あの笑顔に癒されたーい」「オーこの火照った体をいやしっゲフッ」「言わせないよ!!」
皆さん、少し恥ずかしいです。
中学生になった頃から、私の外見が髪の毛の色がオレンジブラウンだったり、目の色が少し青みがかっていたりして、その辺は祖母のソフィアおばあちゃんの血もあるのかも知れませんが、少し目立っている見たいで。
千早は、モテモテだねとか、言ってからかって来るんですが、私男の子怖いし、何考えてるか解らないし。
それは、綺麗とか可愛いとか言われれば嬉しいですけど……。
「ねぇひな大丈夫?計算とか苦手でしょ?」
千早が、心配そうにこちらを見てきます。
「私も勿論手伝いたいとは、思ってるけど、部活もそろそろ秋大の頃だし、学級委員とか忙しくて厳しいの、ごめんね」
すまなそうに、千早は謝ってきます。
「いつもありがとう、千早」
「あなたが、何時も助けてくれたから、頑張ってこれた気がします」
私の大親友の遠藤千早、小学生からの付き合いでいつも私を助けてくれています。
千早はバレー部のレギュラーで、クラスの学級委員長とかもやってて凄く格好良いんです。いつも私の事を、考えてくれていて私が、失敗や間違いをした時は叱ってくれる最高のお友達だと思っています。
「だから、今回は、私が頑張ってみます」
千早は、嬉しい様な心配そうな複雑な顔をしています。
「ひなが、頑張り屋なのは、知ってるけどね」
「無理はしないで」
千早に心配かけない様に頑張らないと。
「では、男子の文化祭実行委員を決めたいと思います」
「ここだ」「俺は、ここに全てをかける。 」「この為に、俺は部活を辞めたんだ」「落ち着け、お前、色々人生棒にふってんぞ」「うへへ、聖女様と一緒、聖女様と一緒、聖女様と一緒」「ブラボーリーダーよりチャーリーワンへ、目標を確保後、時間になるまで拘束」「チャーリーワンよりブラボーリーダーへ、了解」「聖女様と一緒なっ、なんだ貴様ら、離せ、ウワー」
一人の男の子が、両脇を抱えられて連れて行かれてしまいました。
大丈夫でしょうか?
「では、文化祭実行委員やりたい人ー」
「はーい!!!」
クラスの半数以上の男子が手を上げてくれました。
「皆、やる気凄いですね!」
私が嬉しそうに言うと、隣で千早が苦い顔をして言ったんです。
「皆、やる気あるみたいだけど、本当に、ちゃんと出来るんだろうねー」
あっ、手を挙げている人が5人減りました。
「部活が忙しくて出来ないなんて、もっての他だよー」
また5人減りました。
「ひなさー、計算苦手だから、数学とか苦手だと、困るなー!!」ついには……田中君以外上げている人がいなくなりました。
田中君……私、あの人は苦手です。
「田中さぁ、野球部良いの?」千早が厳しい目で田中君を見ています。
「部活なんざ、どうでも良いんだよ」
いえ、流石にそういう訳には……
「新人戦あるんだろ?」
「そんなもの俺なら両立だって出来るんだよ!!」
「俺に任せておけば、完璧だぜ!!」
自信満々な田中君に、一抹の不安を覚え、千早が少し嫌そうな顔をして田中君に聞きます。
「田中、何かアイデアでも、あるの?」
「聞きたいか?そりゃあるさ、良く聞けよ」
「俺達でカジノやるんだよ、ポーカーとかルーレットとかさ、絶対面白いぜー!!」
回りから、オーという声が少し聞こえます。
「そんでもって女子にはバニーガールの衣装!!一位間違い無し!!ガハハハッ」
クラスがシーンとする。
「何だよ、シーンとしやがって」
その時、一人の男の子が手を上げてくれました。
「あの田中君、流石に文化祭で賭け事は常識的に無理だと思うよ」
背の高いメガネの男の子、確か名前はえーと、そう天野君、天野夜空君!!私と同じ名字で、夜空って名前も特徴的だから、何となく覚えていました。
「はぁ?何だてめぇ、別に俺はパチンコをやろうとしてる訳じゃ無いんだぜ」
「未成年が賭け事なんて、出来ないですよ、それにバニーガールとか、あんまり派手な格好は怒られますよ?」
断言する天野君に田中君がたじろいだ気がします。
「そっ、そんなもの、やってみないと解らないじゃないか!!」
そんな天野君の言葉を田中君は、まるで聞いてくれません。
しばらく言い合いをしていると、先生が出て来て、
「田中、カジノなんてやれる訳が無いだろ?少しは考えろ?他にやりたい人はいないか?」
やれやれと他の立候補者を募ってくれました。
天野君もホッとしているようです。
「先生!!どこが悪いんですか?」
田中君は、尚も食い下がりましたが、
「常識で考えろ?それに運動部は両立は無理だろ?お前、一応レギュラー何だからな、顧問の先生言ってたぞ」
田中君はしばらく騒いでいましたが、何とか諦めてくれたみたいです。
「ねぇ、千早?どうして皆手を下ろしたんでしょう。」その言葉に千早が意地悪く笑った様な気がしました。
「そんなもの、決まってるでしょ?」
「こいつら、真面目にやるつもりも無く、ただ、ひなと一緒にいられるからって手を上げただけだからさ」
「頭に来るけど、あの田中の方がまだ真面目に考えているんだよな」少し悔しそうに千早が言います。
「あのでも、どうしたら?千早?」
さっきから、千早の顔が凄く怖い顔になっているんです。
「ねぇ!!誰かいない?」千早の声に教室はシーンとしてしまいました。
「あのー、ちょっと良い?」一人の男子が手を上げてくれました。
「天野夜空君、やってくれるんですか!?」
先程助けてくれた事、名前を覚えていた事が重なり、テンションが上がってしまい喜んでしまいました。
「ひな、そいつ知ってんの?」
「えっ?千早、クラスメートですよ?」
「いや、そういう意味じゃ…」
千早が困惑しています。
私何か間違えたのでしょうか?
思えば、この時が天野夜空君を意識した初めての時だった気がします。
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