5話
結果として、渡辺教授の車から美山の髪の毛が発見された。
また、ビルからも渡辺教授の靴跡、所謂ゲソコンが見つかった。
この二つが決め手となり、渡辺教授は逮捕された。
「殺人動機が分からなかったのですが、教えてくれますか?」
紫子は取調室で渡辺教授に聞く。
「百人一首の札を取るばかりで意味を知らない人に失望したんですよ。百人一首は藤原定家が編んだ素晴らしいセレクションです。競技かるたのためだけにあるんじゃない。絢爛たる暗号なのです。それなのに現代は競技かるたの話題ばかり。それに嫌気が差したんです」
「それで、殺した、と」
「はい。百人一首の歌を、ただの取り札としか見ない人間には生きる価値はない」
「今回の事件は、そんなことで人を殺すな。この一言に尽きます」
「そ、そんなことだとっ⁉ 私にとっては重大なことなんだよ‼」
「学者の世界の常識が世間一般でも通じると思わないことです」
渡辺は色々と喚いていたが、紫子は全て突っぱねた。
「えっと、渡辺教授は?」
取調室から出て来た紫子に奏帆が駆け寄ってきた。
「罪を認めましたよ。殺害動機は僕には理解できませんでしたが」
「そう……」
奏帆は酷くしょんぼりした顔を見せた。
「冷泉奏帆さん、giftに入りませんか?」
「へ?」
突然のスカウトに奏帆は戸惑う。
「高校生かるたクイーン、個性があっていいじゃないですか」
「えっと?」
「とりあえず入っちゃいましょうよ。gift関西支部です」
「また無理やり勧誘か」
潤が呆れて言う。
「可愛い女の子が増えるのは大歓迎よ! ぜひ入ってちょうだい!」
女性二人に迫られ奏帆は「はい」と言わざるを得なくなった。
「はい。№10 冷泉奏帆さん入りました~」
ホストが、ボトルが入った時のコールのように喜ぶ紫子と和泉。
潤は呆れているが、憂と川端は微笑ましそうに見ている。
「それでは、早速、奏帆さんと共に京都観光に行きましょう!」
「待ってました!」
京都の紅葉の名所を奏帆の案内で回った紫子達は翌日、新幹線に乗って東京へ帰って行った。
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