THE 飲み会

 東京・神田神保町・gift本部。

「大きな事件を解決したという訳で」

「「「カンパーイ」」」

 giftの面々が思い思いの飲み物を入れたグラスを持って乾杯をする。

 京都の奏帆もリモートで飲み会に参加している。

「百人一首殺人事件なんて、ドラマにでもなりそうなタイトルだよね」

「小説で見たことありますよ。確か山村美紗先生だったかと」

「さすが文学少年、連太郎」

「ドラマでもあるみたい。原作とは少し変わっているけど」

「へえ」

「それにしても、その犯人の教授も厄介な奴だよな」

「ええ、殺害動機は札の意味を知らない人に対して一方的に恨みを抱いたからですからね」

「そんなんで人殺すってんなら、俺の講義で寝てる奴、全員殺さにゃならんくなるわ」

「本当、殺人って非効率的だよ。見立て殺人のために、わざわざ磔を作るなんてさ。その情熱を別のことに向ければいいのに」

「学者なんて研究室にこもっていても仕方ない。人々に伝える努力をしなければ」

「そうですね。川端さんは雑誌に連載もされてますし、発掘調査にも積極的に出ていますね」

「研究室にこもってる俺への当てつけかあ、川端」

「ああ、ああ、小鳥遊君、カシオレ一杯で酔っちゃって」

「酔っ払い、怖い」

「怖がることはないわ、奏帆ちゃん。こいつは、ここで寝かせておくから。真葛、介抱よろしく」

「僕がやるんですかい。全く介抱する側になるなんて……」

「真葛さんは普段は他の誰かと飲むんですか? 会社の飲み会とか」

「会社の飲み会には、僕は参加しないよ。部下は好きにやってくれて構わないようにしてるけど。最近は友人、あの冬月雪兎と飲みますね。あとは烏丸さんとも」

「弁護士さんと社長さんで何話すんだ?」

「仕事の話とか他愛もないことですよ」

「実は烏丸さんってアニメとか見るらしくて、見るアニメが被っててテンション上がりました」

「アニメ好きなのですか、烏丸さん。憂さん、出番ですよ」

「あ、あ、えと、今期、何見てますか?」

 烏丸は男性アイドルのアニメを答えた。

「有明君は、どういうの見るの?」

 憂は、小さな声で女子高生の日常ものアニメを答えた。

「そういうのは、見たことないな。僕のアニメの趣味は元カノからの受け売りだし」

「へえ、元カノさんから」

 真葛は「その元カノさんとは、どれくらいの仲なんですか」と聞きたいのを、ぐっと我慢した。そこまでプライベートなことを聞くべきではないと思ったからだ。

 

 こうして他愛もない話をしながら、夜は更けていった。

 






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