猫、ひろいました。

1話

 神田神保町の雑居ビルの中の2階にgift事務所はある。

 連太郎はバイト終わりに、よく寄っている。

 連太郎のバイト先は雑居ビル向かいの古書店だ。

 いつも通り、gift事務所に向かう道すがら……。


「にゃあん」


「で、猫拾ってきちゃった訳かあ!」

 真葛が驚き呆れたように叫ぶ。

 gift内に持ち込まれた段ボールの中には黒と白のブチ猫が入っている。

 段ボールには子どもの字で「ひろってください」と書かれていた。

「すみません。可愛そうだったので」

「紫子さん、どうする?」

「どうするも何も、ここは家主の憂さんが決めるところですよ。確か、ここはペット可の物件のはずです」

「へえ、ここが憂君の家だったとは」

 新入りの宮沢が初めて知ったというように言った。

「ここの3階に住んでます」

「パソコンが4台もあって、すごいですよ!」

「連太郎は入ったことあるんだな」

「はい」

「で、どうします、憂さん? 猫飼いますか?」

「急展開過ぎて……。まだ心の準備が……」

「そうですか」

「も、もし、僕達が、この子を飼わないとなったら、この子はどうなりますか?」

「保健所に連れていくしかないでしょう。最悪……」

 紫子は、その先は言わなかったが、最悪の事態は連太郎にも容易に想像できた。

「これも何かの縁です! 憂さん、この子飼いましょう!」

「え、あ、うん」

 憂は半ば押し切られたように、飼うことに同意してしまう。

「大丈夫かい、有明君。生き物を飼う覚悟はできてる?」

「覚悟……」

「まあ、そんな難しく考えずとも良いじゃありませんか。覚悟なんて後から付いてきます」

「そう、かな……」

「とりあえず何が必要なんでしょう……?」

「キャットフードとか」

「これらを大きなホームセンターに行って、買って来なさい」

 和泉がメモ用紙を連太郎に渡した。

 絶対に必要なものは、キャットフード、爪とぎ、食器、給水器、キャリー、トイレ、猫砂、ゲージ。あると便利なものはキャットタワー、ベッド、爪切り、首輪、おもちゃ、ブラシなど。

 メモの裏には、どういう餌を選べばいいのかや、今後するべきことが書いてあった。

「分かりました! 買って来ます!」

「けっこう大きな物もありますね。私が車を出しましょう」


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