2話
紫子の車に乗って、連太郎と憂は大型ホームセンターに来ていた。
「見て下さい、憂さん! 可愛いですぅ」
色とりどりの猫グッズに目を輝かせる連太郎。
「猫だけでこんなに売り場があるのか」
売り場の広さに驚く憂。
「さて、まずはどれから買いましょうか」
紫子が大きなカートを引きながら二人を誘導する。
「絶対に必要なご飯から」
「そうですね、ご飯は総合栄養食のもの、原材料は成分表の先頭に肉か魚が書いてあるものが理想とされてますね」
「原材料チキン、これでいいんじゃないか。値段も手頃だし」
「それと、CMでやってるちゅーるも気になります」
「おやつとして買っておきましょうか」
その他、必要なものを買っていたら、いつの間にか時間が経っていた。
「はあ、何かどっと疲れた」
「まだ疲れるのは早いですよ、憂さん。帰ってゲージの組み立てです」
「ああ、それがあった」
「僕も手伝いますよ、憂さん」
「連太郎君、ありがとう」
憂は家に帰ると、猫と暮らすための環境づくりを始めた。
まずはゲージを連太郎と共に組み立て、その中に猫を入れてやる。
「ずっと入れっぱなしもつまらないですから、部屋の中を散歩させても困らないように片付けましょうか」
憂の部屋は所謂、オタク部屋である。
フィギュア類はショーケースに入っているので問題はなかった。
パソコンのケーブルを齧られないように、カバーを付けた。
紫子や連太郎が、たまに部屋に入っていることもあり、部屋は片付けていたのが幸いした。
「そろそろ夕ご飯をあげないと」
憂は買ってきたキャットフードを開け、水と共に食器の上に出してやった。
すると、猫はクンクンと匂いを嗅いでペロと一口。
「あっ、食べてくれましたよ!」
「良かったあ」
「これも和泉さんのメモのお陰ですね」
「でも何であんなに詳しいんだろう?」
「和泉さんのご実家は動物病院ですよ」
「そうだったんですね」
「大切なことをまだ決めてませんよね」
「大切なこと?」
「この子の名前です」
「憂さん、どうですか?」
憂は猫を見詰めながら「う~ん」と唸った。
「ブチ」
「そのまんまですね」
猫の模様そのままの捻りのない名前に紫子は嘆息する。
「あと、やることはと言えば……」
「病院ですね。予防接種にマイクロチップ、健康診断」
紫子が和泉のメモを見ながら答えた。
「今日は遅いですし、病院はまた明日にしましょう。また車で迎えに来ますね」
次の日。
紫子が連れて行ったのは、車で10分程の所にある動物病院だった。
健康診断は異常なし、推定年齢2歳のオスだということが分かった。
「これからよろしくな、ブチ」
憂は、ごろんと寝転ぶブチに優しく声をかけた。
gift 夢水 四季 @shiki-yumemizu
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