学会殺人事件

1話

私立楓川大学は、春先に殺人事件が起こった大学として一躍、有名になった。

 何か自粛した方がいいのではという意見もあったが、学長は「決まっている行事は中止しない」という方針を打ち出した。


「僕も参加します。スカウトしたい人物もいるので」

紫子は連太郎、宮沢、烏丸、真葛と共に学会が行われる講堂に向かった。

 

 紫子はスカウトしたい人物の元に真っすぐ向かった。

「地道に発掘作業、論文発表をする学者の鑑、イケメン考古学者としてテレビ出演を果たした、№8、川端 陸矢さんです!」

 川端は「どうも」というように軽く会釈をした。

「飛び級でアメリカの大学で博士号を取得した天才。ニュートンにも論文掲載多数! 物理学担当、№9、小鳥遊 潤さんです!」

「勝手に№なんだのって……」

「すみません。僕は夏目紫子、哲学者です」

 紫子は二人に名刺を渡す。

 川端は普通に名刺交換に応じるが、潤は無視する。

「フラれちゃいましたかね」

「潤はツンデレだから」

「いつデレてくれますかね」

「さあ」

 紫子は、そのまま川端の隣に腰かける。宮沢達も、その隣の席に座る。


「登呂教授は遺伝子工学の権威です」

「へええ」

文系の連太郎、烏丸、真葛は登呂教授のスライドショーを見ても、よく分からなかった。


 二時間後。

「ちょっとトイレに」

 真葛が立ち上がる。

「行っておいでよ」

「はい」


「ふう……」

 トイレから出て来た真葛は階下にふと視線を落とした。

「あ、あれ……?」

 頭から血を流して倒れている人物がいた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る