いじめ事件
1話
gift本部。
「さあ、今日も新しい事件ですよ」
紫子さんがそう言うと、ホワイトボードを引いて、向井刑事と斎藤刑事がやって来た。
「自殺した生徒がいます」
相関図の被害者のところには「舞鶴 杏奈」と書かれていた。
しかし「馬淵高校2年生」「飛び降り自殺」「遺書あり」の他には何も書かれていない。
「遺書には、『この世界で生きていくのに疲れました。さようなら』としか書いてありません。しかし、私はいじめがあったと見ています。いじめの首謀者を探し出す必要があります」
「探し出した後、どうするんだ?」
「親御さんが起訴するなら、それに従います」
馬淵高校、学校裏サイト。
匿名の掲示板に書かれた誹謗中傷を憂は憎々しげに見つめ、次々と削除要請を出していく。
「匿名だからって好き勝手書きやがって」
最近の書き込みは自殺についてのことで持ち切りだった。
いっそ発信元を全て特定し、受験に響かせてやろうかとも思った。でも、俺が勝手に私刑を下したところで意味がない。
「紫子さん、サイトの情報は嘘か本当か分からない」
一応、今回の事件に関わっている書き込みは資料にまとめたが、真実とは言えない。
「でしたら、学校に潜入しましょう」
警察権力で潜入許可を取ったのだろう。
数日して、俺達の制服が届いた。
紫子さん、向井さん、俺は生徒として、ドクターは心の相談員として潜入することになった。
「紫子ちゃん、制服似合う~。可愛い~」
ドクターは紫子さんのことが大好きだ。百合的な意味で。
俺と向井さんも、まあ学生に見えなくはないという感じだ。
こんな時期に転校生とか、怪しいだろう。しかも3人も。
俺は遠巻きに見られていた。
学生時代から友達がいなかった。
弁当も一人で食べていた。
何故、大人になってまで、こんなことで悩まねばならないのだ。
俺は教室を移動した。
他のクラスに転校した向井さんと紫子さんを見つけたが、二人とも上手くやれているようだ。
俺は陰キャオーラでも出しているのか。
弁当を食べる場所を探し、屋上に続く階段のところまで来た。
屋上は飛び降りがあった後から封鎖されているのだが、そこの階段で座って、弁当を食べている女子がいた。
ギャルだ。
目が合ってしまった。
俺はそそくさと立ち去ろうとしたが、「おーい」とギャルに呼ばれた。
「転校生じゃん。一人?」
「え、あ、うん」
「一緒に食べない?」
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