第11話 2つしかないものを分け合えるくらい仲良くなれ

現場に到着すると既にXエクスは破壊行為を行っていて、何人もの人が倒れていた。


「良いか? 絶対に周りに被害を出すんじゃ無いぞ?」


 Xエクスが出現した現場へ向かうまでも俺は不破に何度も念を押された。


 しかしビルを飛び越え最短距離でここまで来たのに既に被害が出ているのは俺がどうとかの問題では無いのではないか?


 いや、今はそんな事どうでもいいな。


 周囲の安全の確保と、速やかな討伐が最優先事項だ


「おい! そこまでにして······そろそろ俺達と遊ばねぇか?」


 暗緑色と黒紫の混ざったような色の体······恐らくフェーズ2だろう。


 多分人語は理解出来てるはずだから、これで注意を引ければ良いが......


「誰ダ? キサマらは······?」


「どーも。親の愛に泣く男 バイトヒーローです」


「――――そして硬木署対X特務課、不破イズルだ」


 俺たちの名前を耳にした途端、Xはその身を震わせ始めた。


「そうカ······お前達ガ主の仰ってイた! 我々ノ計画ヲ邪魔すル奴ラなのカ! 主ヨ感謝しマす! コのワタクシにかような砂利二粒ヲ始末スる機会を与えテいたダきぃぃぃ!!!!」


 骸骨の様な顎をカタカタと鳴らしながらXは喜びに打ち震えている。


 ちょくちょくX達の口から出てくる『主』と言う存在の事も気になるのでいつもならもう少し話を聴いてやるのだが······悪いな。


「――――今回は周囲への被害を少なくって言われてるんだ」


「速イ!?」


『じいちゃん流・燈凛轟燃とうりんごうもく


 俺は一刀でXを斬り裂いた。


 どうやら店長から貰ったこのサングラス、コアの位置を見分ける機能が付いているらしく、表示通りの位置を斬ったら本当に核を両断出来た。


 すげーな店長の科学力!


「九重、コッチは怪我人、市民の避難共に終わった。そっちは?······終わったみたいだな」


 どうやら不破は俺がXの長い話を聞いている間に一般人の皆さんを安全な場所まで誘導していたらしい。


 案外こういう所抜かりないので、“この部分だけ”尊敬していたりもする。


「不破さんの出る幕無かったですね! それに今回は街も壊してません! パパっと事後処理してティータイムにでも――――」


 俺は咄嗟に振り向く。するとXの両断された上下半身が転がっていた。


 おかしい、俺が焼き殺した変態Xはともかくそれ以外のXはフェーズ1、フェーズ2を問わず核を破壊されたら爆発して消滅した。


 でも眼前には爆発していない体......つまり――――!


「九重! 避けろっっ!!!!」


 俺が結論に達した時、既にXの胴体は風によって繋がり、再生し、不破の声で防御姿勢を取る前にXの拳は俺の鳩尾みぞおちを穿った。


「ガッ···!!ハァ···ハァ···ッッ!」


「九重ッ! 大丈夫か!?」


 地に背中を付け吐血する俺に不破が駆け寄る。


「大丈夫です······店長のスーツのお陰で···致命傷にはなってません···」


 とは言えかなりしんどい·····視界はぼやけるし膝を突かなければ立つことすらままならない。


 なんだあの打撃......一撃なのにまるで2回喰らった様な衝撃は!?


「少し休んでろ! ここは俺が引き受ける!!」


「いイのか? キサマ···じゆゥはワタクシにハ傷ひとツ付けるコとはナいゾ?」


「ほざいてろ怪物。一発で終わらせてやるからちょっと黙ってろ『貫通+速射』!!」


加速スパイラル螺旋弾アクセラレーション


 銃口からほぼ同時に放たれた二発の弾丸は音よりも疾くXの核を貫いた。


 不破 イズルの神性機械マギア『銃』


 彼の持つ神性機械マギアは空牙のそれと同じく所有者の意思によってその形状を変化させる。


 ただ一つ異なる点を挙げるとしたら、『所有者の設定した特殊弾を撃つことができる』という点だ。


 特殊弾はそれぞれ突出したメリットとデメリットを持つ。


 しかし不破 イズルは得意の早撃ちの技術でデメリットを打ち消し合わせより強力な『速射合成弾』を生み出す事に成功したのだった。


······今の解説、誰だ? 空牙の頭ン中から聞こえた気がしたけど···気のせいだろ!


 しかし不破さんは凄いな......速すぎてよく見えなかったけど、多分前のめっちゃ回転する弾丸を後ろの凄い速い弾丸でブーストさせて貫通力を上げたんだろう······


「不破さんありがとうございます······今の凄いですね。どうやったんですか?」


「あぁ、『貫通弾』は速さが出ないからな、直ぐ『加速弾』を撃って速度をプラスした。お前が素直に褒めるなんて意外だな」


「あァ···まサか弾丸ごトきに核をひトつ潰さレるとハ······ダがワタクシが主よリ賜っタ『ダブル』の前では一撃なド無力にひトシい!!」


「あいつマジか······不破さん、あのX、核が二個あります···前と同じなら同時に破壊しなきゃ倒せません!」


「よク気づィたな小さい方ヨ······ダがソレはキサマラには不可能だロう? 更にワタクシは腕モ! 脚モ! 攻撃モ! 二ツに増やせル!!」


 Xの両肩から腕が、腰から脚がもう一対づつ生えてきた。


 4本になった足で地面を蹴り、俺達に殴りかかって来る。


 初撃は防いだものの、コンマ数秒遅れてやってくる同じ威力の衝撃に耐えきれず、俺と不破は吹き飛ばされてしまった。


 先程二撃喰らった様に感じたのはあいつの能力だったのだ。


「Xの核···再生してから一度に二回攻撃しないと破壊できなくなってる······どうする九重?」


 不破の俺に対する問いかけに答えたのは俺ではなくXだ。


「ソの通リ! ワタクシの核ハ一つにつキ二撃! つマり合計四撃入れナけれバワタクシは還ル事はなイ! だがキサマラはどゥ足掻いテも二撃が精一杯! だカら話シた! シカシ多言はワタクシの罪······反省はキサマラの血デ核に刻厶としヨう······」


 どうするどうするどうする!? 何かいい方法は······


 その瞬間、空牙は思い出す。俺のマギアである刀は元は『剣』のマギアであり、匣であった事を。


 そうだ形状変化! あれで刀を2本に増やせれば!


 でもそんな事出来るのか?


 右手に握られた震え始めた······多分出来るって事だよな!


「不破さん! きっといけます! 俺も増やします! 武器を!」


「! そんな事が出来るのか!?」


「やってみます!『形状変化・二刀流』!!」


 マギアは光を放ち、二本に分かれる。成功だ!


「本当にこんな事が······!」


「バカな!!!! あリえなイ!!!!」


 不破もXも驚きの表情を隠せない。


 ふっふっふそうだろうそうでしょう! 当たり前である。


 何故なら俺が一番ビックリしているのだから! ほんとに出来ちゃったよ······


「ワタクシは······こンなの···こンなの認めナいっっっ!!!!」


「余裕こいて自分テメーの弱点晒すからだよバーカ! 俺達の血じゃなくて自分の血で心に刻んで死ね!」


「九重、俺は右の核貰うぞ···『貫通+速射』!」


『じいちゃん流···』


加速スパイラル螺旋弾アクセラレーション


「『魔妖・炎尾まよう・えんび』もういっちょ!『魔妖・繋波まよう・つなみ』」


 音より疾い弾丸と、燃え盛る炎と猛り流れる激流がXの核を同時に破壊した。


「主よォォォォォ! ワタクシは······還元されテも貴方様の······役ニ――――」


 そう言いかけたところで、Xは爆発し消滅した。


 俺達は勝ったのだ。


◇◇◇◇


「不破さん! 今回街破壊されて無いですよね!?」


「ああ······ナイスヒーローだった。今回分は満額で支給しよう」


 いよっしゃぁぁぁ! これでようやく······新作ゲームが買える!!


 いや、その前に!


「不破さん、お腹も空きましたし、ちょっとお菓子でも買って食べませんか?」


「ん! そういうのは晩飯が食えなくなるぞ! そんなのはヒーローじゃないっ!」


 お母さんか! やっぱり面倒臭い奴だなコイツ······


 でも今回は不破がいなかったら負けてたし、あんまり悪く言うのは止めておこう。


「大丈夫ですよぉ! 駄菓子みたいなの軽くつまむだけなんで! 不破さんも一緒に行きましょ!」


「······雪見る大福を半分くれるならついて行ってやる···」


「案外子供なんですね」


「うるさい! 行くぞ!」


 この後、不破・空牙はそこそこのお菓子豪遊を敢行し、結局晩メシは食べれなかったぞ! そんな気がするのだ!


 またこの声だ······俺の頭の中で響く······まあいいか! 今はお菓子お菓子!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る