第4話 兄弟とクソオヤジと迷子の仔犬
俺が絶対に勝てないと思ったフェーズ2を店長が無傷で消滅させた後、帰り道で店長は自分の
店長の能力名は『反転』と言い、あらゆる事象の反転後を念じるとその通りになるらしい。
めっちゃチートやん! って思ったがどうやらそう簡単なものではないらしく制限がかなりきついらしい。
先ず一つ目に「反転前にその状態に無い物を反転させる事が出来ない」――――例えば、死という概念の存在しない事象に「反転後は死だ!」と能力を発動しても不発に終わる……そうだ。
【オリジン】に逃走を許したのはXにとって生の反対が死ではなかったからなのだそう。
そして二つ目に、同一の物に対しては一度しか能力を使えない。という事。
戦闘において一度しか能力を使えない代わりにほぼ即死、店長は自分の事を「一撃で終わらせることが出来なければただの一般人」と評していた。自分の弱点を知っているからこそきっと最強なのだろう。
それに比べて俺は……もっと強くならなければ……
「メイちゃんたっだいま~!! いやぁもう疲れちゃったよホントに!」
「ただいま戻りました!」
「マスター。空牙様。おかえりなさいませ。マスター、マスターが出かけている間にアルバイトの希望者が来られましたよ」
「えっっ! 本当に!? それで、どこですか?今お手洗いですか?」
「いえ……それが……」
「メイさん、何かあったんですか?」
「お二人が帰ってこられる直前に『オヤジと同じ匂いがする!』と突然叫んで飛び出して行かれました」
また凄い人がバイト志望に来たもんだ。てか、メイさん男の声真似うまいな……なるほど新入り(仮)はなかなかのクレイジーマンらしい。
「店長どうするんですか? 俺探しに行きましょうか?」
「ああ空牙君、お願いしてもいいかな! 見つけたら戻ってくるようにお願いしてきて欲しい」
「了解しました!」
今日は戦闘で良いとこ無しだったからな……これくらいは完璧にこなさないと!
しかし新入りはどんな奴なんだ······メイさんにちゃんと聞いておくんだったな······
◇◇◇◇
空牙と店長がXと戦闘を繰り広げた繁華街……そこに一つの影が現れた。
「うウ……兄サマ……どウシてワタシをおいて行ってシマったノです!!!!!! ニンゲンを蹂躙する時モ主ノ糧とナル時モ一緒にと誓っタではないですカ! どうシて……どうシて……」
泣いている……亡骸こそないが自分が兄と慕った者か消えた場所は分かるのだろうか。
そこに空から一人の男が現れる。
「アハハハハァ! 遂に見つけたぞ! オヤジの匂いとそっくりな化け物ォ!! 殺す!」
「モシやお前が兄サマを……必ズ! 必ズお前ヲ殺シてやるゾおおおおお!!!!」
とりあえず轟音のした方に向かってきたけど……ここさっき俺と店長がX倒したところじゃん!
「アハハハハァ! どうした化け物ォ!! まだ俺に傷一つ付けられていないぞ雑魚がァ!!!!」
「あまリワタシを舐めるナよニンゲン!」
……恐らくあいつが面接に来た男だろう、メイさんの声真似とそっくりだ。
てか人語を話すX……フェーズ2とほぼ互角に殴り合っている!?
新人はどうやらとんでもない実力の持ち主のようだ。
「どうしたどうしたァ!! この程度か!? ああ?!」
俺には互角に思えていた殴り合いも段々とXの方に傾いてきた。新入りの身体に傷が増えてきている。
そして勝負はあまりにも呆気なく決まった。人間型Xの拳が新入りの腹を貫いたのだ。
「これは傍観決め込んでる場合じゃねえ! 店長聞こえてますか!? 新入りがXとの戦闘で死にかけてるので連れて帰ります!」
『一体どういう状況なんだい!? まあ分かったよ! 危険なようなら応援が行くけど』
「大丈夫です! 逃げられない様なら新入りを安全な所に避難させてから戦闘に入ります!」
『そうか……空牙君、死なないでくださいね』
「了解!!」
俺が店長と通信していた数十秒、新入りは腹を貫かれたまま放置されていた訳だが、俺の危惧していたようにはなっていなかった。
まだ新入りは意識があるのだ。
「あまり俺を……舐めるなああああ! ふん!」
それどころか、Xの腕ごと引きちぎって距離を取り、腹から腕を引っこ抜いた……しかも孔が塞がってる!?
「新入りどうなってるんだ!? それがお前の
「む! 誰だお前は! まあ今はそんなくだらないことどうでもいい……あの化け物厄介だぞ……心臓が二つある! それを同時に潰さなければあいつは死なん!――そこでお前に提案がある! 俺が片方を潰すので、お前がもう片方を潰せ! 特別に頭か胸、好きな方を選ばせてやるぞ」
やばいぞ……
脳筋な上に人の話を聞いていない、店長とは違うダメな方の馬鹿だ……俺こんな奴と一緒に働くなんて嫌だぞ!?
――――しかしそういう文句はXを片付けてからにしよう。実際、新入りがいなければ俺は核が二つあるという事に気付かずに負けていただろう。
「よし! やるぞ新人君! 俺は胸を破壊するから頭やっちゃってぇ!」
「俺のじいちゃんは言ってた……味方ごと斬りそうな時は突いてみろって! “見様見真似じいちゃん流”……!」
「お前のような雑魚には過ぎた技だろうが……喰らって逝けぇ! “最強剛撃”……!!」
『
『
新入り渾身のストレートと俺の八本に分かれ光を纏った突きが頭と胸を貫く。
「兄サマ……助ケ……」
そう言い残しXは爆散していった。
よし! さっきは手も足も出なかった人型のXに勝てた! これからは基本2対1で仕事できるだろうし、これはイける! イけるぞぉ!
「中々今の一撃は良かったぞ見知らぬ人よ!……ところでお前は誰なのだ?」
「これで新作ゲームも夢じゃ······あぁ……まだ名乗ってなかったね。俺は――すまん電話だ」
こんな最高のタイミングでかけてくるのは一人しかいない。
『もしもし店長? たった今討伐完了しました……はい、一緒ですよ?……え……はい…分かりました……』
「おい! お前どうしたのだ! 面白い顔色に変わりおって!」
「自己紹介は後だ……今から俺たち二人……最寄りの警察署に出頭しろって店長が……」
「…………はぁ?」
一難去ってまた一難。今日もまた眠れそうにない……
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