第3話 二人と少年

「俺を引き取って下さい! 」

アランとヒューバートは、突然の申し出に面食らった。


 孤児院に着くなり、顔なじみの腕白達と一緒に駆けてきた少年だ。

「俺を養子にして下さい」

想定していたよりも、かなり大きな少年だ。

「お願いします」

頭を下げた少年の周囲を腕白達が取り囲み、アランとレオンを見上げている。


「何事だ」

アランの問いかけに、腕白達が口を開いた。

「この子ね、東からきたんだ」

東という言葉に、アランは暫く前の事件を思い出した。世間では、聖女ローズが奴隷商人達を改心させた事件として伝えられているが、実態は違う。あれは、王太子妃グレースの拉致未遂であり、国の中枢にいたローズの身柄が他国の手に渡りかねなかった事件だ。アレキサンダー王太子を含めた王太子宮の主要な面々は、今も南で事後の処理にあたっている。近々王都に帰れるだろうが、数名南に残す予定だと連絡があった。


 父は王族の身辺警護を強化した。この先、王都の警備計画を見直さなければならないが、貴族の意見が纏まらず、見直しが進んでいない。

「俺は、ローズ様の家来になりたいから、王太子様の家来になりたいです」

少年の目は、迷いなくアランとレオンを見ていた。


「この子はジャックといいます。ロバート様からお手紙を頂きました。奴隷市場でローズ様に助けられた子の一人だそうです」

ようやく追いついてきたシスターの言葉に、少年ジャックの事情を察した。


「はい。俺の名前はジャックです。俺は助けてくれたローズ様の家来になりたいけど、ローズ様には家来はいないって言われました。でも、王太子様の家来になったら、一緒だって教えてもらいました。強くなって沢山勉強したら王太子様の家来になれるって言われました。アランさんとヒューバートさんの子供にしてください。二人とも王太子様の家来だから、俺に王太子様の家来になる方法を教えてください」

言葉は拙いが、ジャックの言わんとするところは理解出来た。


「なぁ、アランの兄ちゃん。俺達からもお願いしていい」

「だって、ずっと遠くからここに来たんだよ。友達も誰もいないのにさ」

「この孤児院に来てから、勉強も稽古もずっと頑張ってるんだよ」

腕白達も一生懸命だ。


「突然ですから。少し御一緒にお話をされてはいかがでしょう」

シスターの提案で、一室に案内された。


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