炎上

火炎放射器で焼かれるのは若い女

片方の膝から下を失い

子供を育てる

盲目的な従属の果て

スカンクの放屁に驚き

男の冗談に笑い転げる

衷心から出た忠告にも

熟慮のすえの意見にも耳を貸さず

ひたすら破滅への道を突き進むばかり

関心の中心はいつも臭い男

風呂に入らぬ骨格の大きな男

垢まみれの毛布に同衾し

誰からも理解されぬ奇形の愛をはぐくむ

虚しく過ぎ去った一日の終わり

跛行を曳く城塞のなかで

女はひとり孤独な追憶に耽り

きな臭い深夜の空気に身をさらした

夜中にピアノを弾くことは怖いことだ

ひとりで鏡を覗きこむことは恐ろしいことだ

誰も居ない座敷の鏡台に向かって

女は独学で死に化粧を施し

燃え盛る炎のなかで日舞を舞った

女は絶えて男の愛を見ない

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