蟲の王
鋼の顎をもつ重い両生類
垂れ流した糞に似た黒い蟲
藻にからまりながら踊るのは
ひどく滑稽な求愛の行動
水を飲まぬこと三十日に至り
喰わぬことは百十日
空想の飽食のなかでは
いつもきまって蜥蜴を食す
雌と雌の間に衾し
胃の腑を焼く飢餓に耐えることにも飽きて
奇態な欲求に身をゆだねることを決意した
犠牲となったのは小型の哺乳類
犬猫の類
野兎の肛門を犯し
ブルドックのペニスを食んだ
未消化の毛皮を排泄するのに要すること三日
モラルを欠いたアナキズムを採択し
自らの欲望にひたすらな忠誠を誓う
陰惨な流血の夜ごと
無限に肥大する夢を見て
雌の背中に射精する
異形の生き物に宿る奇形の欲望は
やがて必然のごとく同胞に向かった
咀嚼に継ぐ咀嚼
嚥下に継ぐ嚥下
暗黒の快楽に歯止めなく
蟲は限りない蟲への堕落を開始する
叫びと嘆き
哀願と絶望
恐怖と歓びはやむことを知らず
流れるにまかせた涎は血を含んで
遠くをゆく広大な大河に合流した
尊大な王による殺戮の歴史
独立した顎による虐殺の神話
やがて出来事はメルヒェンとなって
寄る辺ない幼子のまくらもとで語り継がれる
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