第15話 裏戦記① 参考資料の話
※「裏戦記」は、『絶世解歌論戦記』(以下『歌戦記』)の裏話回です。後書きに書いてない参考資料を明示したり、メタい話とかしたりしなかったりするかもしれないので苦手な方は読み飛ばして下さって結構です。
皆様こんにちは。本文作者の稲見と申します。まずは進展がバリ遅え『歌戦記』をここまで読んで下さった皆様に、心からの感謝と労いをお伝えいたします。いつも本当にありがとうございます本当お疲れ様です反省はしていません。
さて、本日は普段私が乱用している参考資料の話をしていこうと思います。完全に自己満足というかまあ『歌戦記』自体自己満作品なんですけど、読んでやってもいいよ〜って方は少々、自作品語りに付き合ってやって頂ければ幸いでございます。
この稲見、『歌戦記』において、いいかと思ってやたら難しそーな言葉をジャンジャン使いまくっているのですが、あれですね。読みづれーーーーって思ってる方、そこそこいらっしゃいますよね。はいすいません。私もです。ぶっちゃけ、マッッッッジで書きづれーです。
脳死で思ってること書き殴るスタイルの日記と違って――あ、不快に思われた方がいらっしゃったらすみません、私がそういうスタイルってだけです――『歌戦記』を書くにあたっては、「何かいい表現ないかなー」って思っちゃうんです。そんな時、執筆中はほぼずっと開いてると申し上げても過言ではない今回の商品がこちら、堀越英美『エモい古語辞典』(朝日出版社、2022年7月7日)です。
ロングヘアの黒髪の表現や、ヒロイン和梅の美しさ等を表現するにあたって、どうしてもただの「黒髪」とか「美少女」とかでは表現しきれない部分があるんです。件の黒髪少女にしても、どんな髪質なのかとか、どんな黒なのかとか、一口には言えないことが沢山あったんです。黒って200色あんねん。
多分、黒髪ロングといえば、コシのあるサラサラストレートヘアが、光を受けて濡れたようにツヤツヤと輝く様子を想像する方も多いでしょうが、私が求めていたのはちょっと違うんです。毛の一本一本が細くて、触ったときにふわふわと柔らかい感じ。あんまりツヤ感はないけれど、これはこれでいいなーみたいな、そんな美しさを目指してました。
かといって、物書きビギナーの私が、伝えたいことを自分の言葉で伝えきれるわけがない。そこで、古語です。和歌異能ファンタジーとかいうよう分からん世界観を崩さず、伝えたいことをなるべくそのまま伝えるのに、古語は必須だったんです。はいそこ、ただカッコつけたいだけだろとか言わない。
まあでも、少なくとも『歌戦記』においてはこのスタイルは変えるつもりはないですね。いずれ創作環境が整ってきて、もうちょっとニュアンス変えたいなーって稲見が思ったら、書き終えた1章も魔改造するかもしれません。そん時はすいません。
参考資料を語る上でもう1つ、私が出しておきたいのは倉嶋厚監修・宇田川眞人編著『花のことば辞典 四季を愉しむ』(株式会社講談社・2019年3月11日。以下『花のことば辞典』と略記)です。参考にした回数としてはそう多くないものの、花言葉と登場人物の感情、イメージをリンクさせたい時に重宝します。
例えば、2話「魔魅は往にし回雪の袖」において、以下のような一文が登場します。
[二十歳の盛りを待ちきれず咲き零れた蕾のような美しさを湛えた少女の、その勝気な性格がよく表れている少し吊った目には、花屋のクレマチスも洋菓子屋のケーキも映らない。]
これは、美しい花や美味しそうなケーキなど、下校中の女子高生が興味を示すかなーって作者的に思ってるものに対し、和梅が一切見向きもしないということを表現した一文ですが、花の名をわざわざ「クレマチス」としたのには理由があります。
『花のことば辞典』によると、クレマチスの花言葉は「「精神の美しさ」「高潔」」。丁度、同じ2話の「実際のところ、和梅がやたら目立つのは、彼女の閉鎖性を象徴するかの如く固く閉ざされた唇すらも魅力だと周囲に思わせてしまう、その圧倒的な美しさにあるのだが、当の本人にそれを言う勇気のある者はこの学校には一人としていなかった。」という部分と重なります。というか、重ねようとしたんじゃないでしょうか(他人事)。
まあこの部分はどちらかといえば、容姿の美しさについて語った部分ですけど、第4話「悪鬼羅刹の蔓延る街で」において、和梅の文異能者らしからぬ人となりを語ってみたり、和梅の性根の素直さを表現しようとしてみたりと、和梅が「やな奴」って読者に思われないよう努力してきたつもりです。
つまり、和梅がクレマチスに目を向けないというのは、「彼女の高潔な美しさに見惚れる人々の視線も届かない」和梅の現状を暗喩したものだったんです。そしてそんな現状を作り上げているのは、和梅が異能者であるからというだけの理由ではなく、和梅自身にも問題があるのではないかと作者としては考えているのですが…。白花に心を開いた和梅が、今後どのように変わっていくのか。私自身も模索しながら皆様に伝えていけたらと思います。
……とまあ、長々と書き連ねてきましたが、これにて「裏戦記」その1はこれにて終わりです。本当はもっと色々書きたいところですが、それはまた別の機会に。
今後も展開がグダグダ引き伸ばされると思いますが、惰性でお付き合い頂ければ幸いです。
【追記】
黒は300色だそうです。失礼いたしました。
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