サポ限に書いていたこと14 ラノベは衰退産業⁉・1

■出版業界の売り上げ


 一九九六年の二兆六千百六十四億円をピークに下降の一途をたどり、二〇二二年は一兆六千三百五億円と減少傾向にある。

 紙出版が前年比の6.5パーセント減となった一方、電子出版は7.5パーセント増にとどまり、紙の減少分をカバーできなかった。

 ちなみに、全体における電子出版の比率は初めて三割を超えた。

 電子出版の成長にもかかわらず、紙市場は全体の七割。

 二〇二二年の推定販売額は次のとおり。

 書籍が4.5パーセント減の六千四百九十七億円。

 雑誌が9.1パーセント減の四千七百九十五億円。

 雑誌では月刊誌が9.7パーセント減の四千十七億円。

 週刊誌は5.7パーセント減の七百七十八億円だった。

 前年まで好調だったコミックスが大きく下がった。『鬼滅の刃』『呪術廻戦』『東京卍リベンジャーズ』に匹敵する大ヒット作がなかったためであり、書籍でも文芸書、児童書、学習参考書、資格試験などの売上が鈍化した。


■ラノベの売り上げ


 ラノベは、二〇一一年の約二百四十億円をピークに減少し、二〇一九年は百四十億強と、半減。

 単行本ラノベも入れて三百億円弱をなんとか維持している。

 対して、新刊の発行数は二〇一〇年の年間千五百作品から、十年間で二倍の年間三千近くまで増えている。

「出版業界の新興市場」「若者が殺到するキャラクター創出市場」だったラノベは、二〇一〇年代に流れが変わっている。

 雑誌や書籍と同じく、ラノベも凋落の一途を辿っている。

 変わったのは、文庫本や単行本といった書籍流通形式であって、「お話としてのラノベ」の需要は形を変えて盛り上がっている。

 


■三百億円のラノベ市場の内訳


 KADOKAWAが五割。

 アルファポリスが一割。

 ソフトバンククリエイティブ・集英社が七パーセントずつ。

 講談社・小学館・マイクロマガジン・オーバーラップが五パーセントずつ。

 他はホビージャパン・主婦の友社などのラノベ出版社。

 新刊三千点、年間三千万冊、一冊あたり一万冊(≒六百万円小売売上)。

 この半分以上がKADOKAWA一社で保たれている。

「電撃文庫」「富士見ファンタジア」「MF文庫j」「角川スニーカー文庫」など主要なレーベルを独占している所以である。

 二〇〇〇年代、衰退する出版業界の中でラノベだけが売り上げを伸ばしていた。創芸社、宝島社、竹書房から、毎日新聞出版社やPHP研究所などの出版社はラノベに目をつけ、レーベルを打ち立てていったのが二〇一〇年代前半。

 現存する約三十あるラノベレーベルに対して、毎年一万点以上の応募があり、そこから新規で百人ほどの新人作家がデビュー、新作が世に生み出され続けている。



■ラノベの歴史

 

 一九九〇年代、「徳間書店がジブリでマスアニメを取り、角川がメディアミックスでオタクを拾った」と言われるように、角川がラノベでマンガやアニメ、ゲームの中間地点としてのラノベジャンルを開拓していった。

 九〇年代に創設され現存するラノベレーベルは、女性向けのコバルト文庫、X文庫ティーンズなどを除外すると、KADOKAWAだけ。

(コバルト文庫は一九七六年発刊。二〇一九年から電子書籍のみに移行。X文庫ティーンズハートは一九八七年発刊 。二〇〇六年終刊。X文庫ホワイトハートは一九九一年発刊して現存。ウィングス文庫は一九九八年発刊して現存)

 ラノベ新人賞は九〇年代半ばから徐々に応募者を増やし、アニメ化が盛んになる二〇〇〇年代後半になって市場が拡大。

 他社もどんどんラノベレーベルを出し、ラノベの黄金期は二〇〇五~二〇一五年の十年間。

 九〇年代半ばは、ファンタジー。

 二〇〇〇年前後は、現代が舞台の作品。

 二〇〇五年前後は、学園異能もの。

 二〇一〇年になると学園ラブコメ。

 二〇一五年前後から続いているのが「異世界転生」。



■なろう全盛期は二〇〇〇年代


 ネット普及によって、素人が投稿した作品に読者がついて作家デビューしてアニメ化する流れが、ガラケーで女子高生が執筆する「ガラケー小説」流行と重なり、ラノベ業界を牽引していく。

 後に続く人たちが、次々に新作を大量に生み出していくも、一〇代は読まなくなっていく現状がある。

 そんなことはない、異世界転生もののアニメ化が増えているではないかという指摘はあるだろう。

 実際に、異世界アニメは年々数を増やして放送され、これまで培われてきた日本のRPGファンタジーに現代的な感覚を取り入れた時代設定と、次元を超えたコラボが人気を博している。

 ただし、テンプレを多様しすぎたあまり爆発的なヒットに至らず、これまでのマンガやゲームなどのヒット率と変わらなくなっており、アニメ化する作品も絞られるようになってきた。

 つまり、頭打ちになってきた感じがある。

 なので、ラノベの読者推移をみてみることにした。 


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