1日目

ゆうき、皆に見える様に紙を広げる。



【お集まりの皆さんへ】

これからデスゲームを始めます。

と言っても、誰も死にませんのでご安心を。

その代わり、この部屋からは出られません。

ルールは簡単。

この部屋に隠されているミッションを見付けてクリアするだけ。

クリアした人は無事に解放デス。

最後の一人に残ってしまった方には……

賞金十万円を差し上げます。

尚、食事は部屋の内線から頼んでください。

それでは皆さん、グットラック!



ガチャっと鍵が閉まる音。

純也、確認しに行く。

しっかり鍵が掛かっている。内側の鍵はびくともしない。

健一郎、窓を確認する。数センチしか開かない。

ゆうき、稽古場に時計がない事に気付く。

皆でメモを囲う。


ゆうき

「悪ふざけかな?」

純也 

「……多分。」

久田 

「皆さん、予定は?」

健一郎

「俺、特に無いっす。」

佐倉 

「私は一度家に帰りたいなぁ。」

井ノ上

「……二日間くらいなら。」

純也 

「仕事だなぁ。」

遠藤 

「僕は大丈夫です。」

ゆうき

「私も大丈夫。」

健一郎

「賞金十万円かぁ。」


皆、暫くの沈黙。


佐倉

「取り敢えず、探してみます?」

ゆうき

「……そうだね。」


各々、ミッションを探し出す。

佐倉、備品の椅子が重なっているスペースの隙間から赤い箱を見付ける。


佐倉

「これじゃないですか!?」


皆で箱を開けてみる。

中身は、昔に流行ったカラオケマイクセットとカードリッジが数個。

純也、ゆうき、遠藤は辛うじて知っているが、その他のメンバーは全く知らない。


健一郎

「何っすか?これ。」

ゆうき

「あぁこれはね、カラオケ。」

健一郎

「へぇ。」

ゆうき

「テレビに受信機をセットして、このマイクにカードリッジを入れて歌うの。」


ゆうき、セッティングしながら説明する。

さりげなくテレビに時計が出ないか確認するが、やはり表示されない。


佐倉 

「初めて見ました!凄いですね。」

ゆうき

「凄いか?」


純也、カードリッジに各々の名前が書いてある事に気付く。

ゆうき、試しに自分のカードリッジを入れて起動してみる。


ゆうき

「えー。うろ覚えな曲ばっか。」


佐倉、箱の底に一枚の紙がある事に気付く。


佐倉

「ミッション。

初めて歌う曲で高得点を狙え!

皆さんには微妙に覚えている曲で高得点を出してもらいます。

……だそうです。」


久田 

「えー。やだな。」

健一郎

「俺も。」

井ノ上

「でも、出られんよ。」


沈黙。


純也 

「よし!じゃんけんで歌う順番決めよう!」

遠藤 

「そうですね。自信ないけど。」


皆、思い思いに歌う。

ずば抜けて上手いゆうき。

オーディエンス、高まる。

皆が歌い終わると画面に「データ集計中」の文字。

暫くしてファンファーレが鳴る。



ゆうきさん、おめでとうございます!

あなたが一等賞!

解放権を手に入れました。

無事に解放されるか、誰かを解放してあげるか選べます。

ただし、誰かを解放した場合、あなたは残らなければなりません……。

どちらにしますか?



『する?orさせる?』のボタンが表れる。


ゆうき、迷わず「させる」を押す。

皆、少し動揺。


『誰にする?or後で?』の表示。

「後で」のボタンを押す。



井ノ上

「良いんですか?」

ゆうき

「明日は暇だから、私。」

久田 

「でも、色々とやってるじゃないですか。」

ゆうき

「私の権利だもん。好きにさせてよ。」


健一郎、窓の外を見ている。

もうすっかり夕暮れ。

佐倉はもう探し始めている。

皆、その様子に気付き探し始める。

遠藤、長机の天板裏に貼り付けられた白い封筒を見付ける。


遠藤 

「ありましたぁ。」


開けると一枚の紙が入っている。



【ミッション】

初めての早口言葉!

この紙に書かれている早口言葉を言ってください。

『炙りカルビの名産地はグラナダなのだぞ。』

皆さんで一番を決めてください。



ゆうき

「取り敢えず、じゃんけんする?」

久田 

「そうですね。」


じゃんけんで決められた順番に早口言葉を言う。

久田、純也の二人は「炙りカルビ」で引っ掛かる。

井ノ上、健一郎の二人は「グラナダ」。

遠藤、ゆうきは甘噛みながらも最後まで行く。

佐倉のみ、綺麗に言える。

しかし、遠藤、ゆうき、佐倉の三名がドローとなる。

佐倉が二周目を始めようとすると内線電話が鳴る。

ゆうき、出る。

音声を変えた人物の声がする。


謎の声

「今のは明らかに佐倉さんが一番です。」

ゆうき

「私達もイケましたけど?」

謎の声

「忖度は無用。今回は佐倉さんの勝利です。」

ゆうき

「皆で決めろって言ったのは、そっちでしょう?」

謎の声

「自分でも分かってますよね?見苦しいですよ。」


何だか揉めているのを察し、井ノ上がゆうきに声を掛ける。


ゆうき

「皆のジャッジが不当だって。」


沈黙。

佐倉、居た堪れなくなる。


遠藤 

「確かに、さっきは佐倉さんしか言えてなかったと思います。」

健一郎

「俺が言うのも難ですが、そう思います。」

ゆうき

「……。」


純也、ゆうきから受話器を取る。


純也 

「分かりました。今回は佐倉さんの勝ちとします。」

謎の声

「貴方も含めて、一番年下の後輩に負けた事を恥と思ってくださいね。」


純也、一瞬だけ渋い顔をする。

ゆうきは不機嫌な雰囲気。

佐倉、縮こまる。

純也、謎の声が皆に聞こえる様にカラオケマイクを受話器に近付ける。


謎の声

「皆さん、忖度はダメです。そして、基礎練に励んでください。」


沈黙。


謎の声

「佐倉さん、おめでとうございます。

一番後輩の貴女が一等賞です!

解放権を獲得しました。

無事に解放されるか、誰かを解放してあげるか選べます。」


佐倉 

「一つ質問なのですが、お家との連絡をどうすれば良いのでしょうか?」

謎の声

「親御さんには、今日から二日間の合宿とお伝えしています。」

佐倉

「日程を超えた場合です。」

謎の声

「その場合は、佐倉さんのスマホをお返しするので交渉してください。

成立しなかった場合は解放とします。」

ゆうき

「ちょっと待って。私達、合宿なんて聞いてないですよ。」

謎の声

「一週間のキープを頂いている筈ですが?」

ゆうき

「……何か、正体分かった気がする。」


頭を抱えるゆうき。

各々、感じる所がある模様。

重々しい空気が流れる。


謎の声

「佐倉さん、どうしますか?」

佐倉 

「……今決めないとダメですか?」

謎の声

「そうですね。」

佐倉

「じゃあ……。」


佐倉、皆を見渡す。

皆、諦めて覚悟を決めた模様。

佐倉、暫く考える。

緊張感が流れる。


佐倉 

「遠藤さんで。」

遠藤 

「えっ!?僕?」

佐倉 

「はい。」


扉の音がする。

仮面をつけた二人組が登場。

遠藤を促す。

遠藤、渋々退場。

仮面の二人組、大きな段ボール箱を置いていく。

鍵が掛かる音。


段ボールの中には、布団一式とバスタオルセット、歯ブラシと石鹸。

ゆうき、大きな溜め息を吐く。

佐倉は何だか嬉しそう。


久田 

「遠藤さん嫌いだったの?」

佐倉 

「いいえ。怒らなそうだったので……。」

久田 

「なるほど。」


健一郎、窓の外を見ている。


健一郎

「もうすっかり夜ですよ。」

純也 

「本当だ。」

井ノ上

「お腹、空きません?」


久田、内線の受話器を取る。

各々の注文を伝える。

暫くするとチャイムが鳴る。

井ノ上、対応しに玄関前まで行く。

既に料理が置かれている。

ドアが開くか確かめる井ノ上。

やはり開かない。

仕方なく皆の所に料理を持って行く。


各々、様々な形でボーッとする面々。

長机には各々の夕食の食べガラ。

男性陣、レディーファーストでシャワーを促す。

女性陣、お言葉に甘える。


健一郎、備え付けの掃除機で床掃除を始める。

久田、純也、佐倉が手分けして後片付けをし、布団を敷く。

井ノ上、ゴミを纏めて玄関に置き、中扉を閉める。

ゆうき、シャワーから出る。


ゆうき「流石。ありがとう。」


各々の準備が整い、就寝。










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