fake ability

柊ラミト

第1話 殺し屋の青年

静寂がつつむ夜の屋敷に頬まで裂けた口、黒々とした眼の白い仮面の男と、中世ヨーロッパの貴族が着るような服の小太りな男がいた。

「うわぁぁぁぁぁ」

叫び声が屋敷の中をこだまする。

赤く染まったカーペット、壁にはこの屋敷の主の巨大な写真が返り血で染まっていた。

だが助けに来る人物は誰もいない。

・・・そう、全員死んでいるのだ。

「た、助けてくれ、何でもする、金か!?金ならいくらでもある、1億か!?10億までなら俺でも・・・ひっ!?」

男は足を撃ち抜かれ、這いつくばりながら血をまき散らしながら男は命乞いをする。

そんな男の頭に銃を突きつける。

男は命乞いを続ける。

「100億・・・いや1000億払う!だから命だけは!!」

男は立ち止まり、神に祈るかのように両手を握る。

俺はその額に少し驚き、銃を・・・

おろさなかった。

「お前はそうやって助けて、辞めてと泣きながら懇願した少女達を何回犯し、殺した?」

俺は上から目線で睨み、溢れる怒りを少し吐きながら話す。

男は涙を流しながら、答える。

「私だってやりたくてやったんじゃないんだ!!た、ただほかの上流階級の皆が・・・」

男の涙と汗がカーペットの血を滲ませる。

「もういい」

俺は銃のセーフティを外す。

かちっという音が聞こえて、俺は・・・

「死ね」

「いやだ!たすけ」

弾丸が発砲された音が聞こえた。

男の頭を銃弾が貫通し、血をまき散らしながら男は・・・

死んだ。

この男・・・米俵温度は一流会社の社長でありながら、裏では小学生から高校生までの少女に性的暴行を30件、それらをすべて金でもみ消した。

悲しきかな、遺言も金を払うそういって死んでいった。

そして気づいた。

いつものやつをいうのを忘れていたことを。

「GoToSleep」

そう言ってメモ帳を切り、その言葉を書いた。

その紙きれを死体の傍に置き、俺はその場を後にした。

でかい屋敷を一人足音を殺し歩く。

「またクリーニングに行かなきゃな」

当然、裏社会のクリーニング屋だ。

俺は返り血のついた服の上からパーカーを羽織り、ヘッドホンをつけて音楽を流す。

俺の”仕事”は終わった。

あとは裏警察が片付けやらなにやらを片付けてくれる。

時計を見ると時刻は21時を過ぎていた。

夕方の5時にここについて、ゆうに4時間もかかってしまった。

帰ったら晩御飯を作らなければならない。

俺は一人暮らしであり、いつも一人孤独に朝御飯と晩御飯を食べている。

もう慣れたものだ。

この”仕事”にも、な。

俺はクリーニング屋を目指した。


20分ほど歩いて、目的地に到着した。

ドアを開け、中に入る。

「ミイトおばさんこんばんわ」

といつも通りの挨拶をする。

「おうおう、来たかい殺ト」

この人はミイトおばさん。

女だが身長は172cm、年齢は49歳、体脂肪率10%、体重は。

「あんた、失礼なこと考えてないかい?」

えなにエスパーなの?

仕方ない体重は諦めよう。

この店はかなり古く、錆びついていて、洗濯機の回る音が鳴り響いていた。

俺はこの店の雰囲気がかなり好きなのである。

「んで、今日は誰がターゲットだったんだい?」

「今日はあの米俵だったんですよー」

と軽く話す。

この業界ではこのくらい明るくないとやっていけないのだ。

「へぇ、あの米俵かい、あいつは少女を片っ端から食い荒らしているって噂があったんだろう?」

「その数なんと30人」

ミイトおばさんは目を大きく開け、「はぇー、そりゃたいそうなこった」。

と驚いていた。

30人なんて俺のいた中学一クラス分なのである。

「さっ、早く脱ぎな」

「はぁい」

俺は言われた通り仮面をとり、上の服とズボンを脱ぎ、シャツと短パンになる。

「んじゃ預かるよ」

といって奥のほうに歩いて行った。

俺はその間にスマホで音楽を流す。

いつもは大体30分くらいで終わる。

「あぁ、やっぱマイセカンドストーリーは最高だなぁ」

のんきに音楽を聴いていると。

あれ、なんでだろう。

急に眠気が。

ちょっとだけ、寝よう。

俺は青いベンチに横になり。

ものの数秒で俺は意識を失った。

「お前なんて産まなければよかった!早く出ていけ、このごく潰し!」

「君には素晴らしい才能がある、悪という名の正義の道に行く気はないかい?」

「や、辞めてくれ!俺はただ・・・」

俺が初めて人を殺したのは6歳の頃だった。

年上、16歳くらいの高校生がホームレスを殺そうとしているところを返り討ちにしたら、そのまま亡くなった。

10歳年上でも俺に勝つことはできなかった。

俺は常人より、遥かに強かった。

5歳の頃、俺は親から捨てられ、殺し屋グループfakeDEADに拾われた。

俺を捨てた親父はどうやら研究者らしい・・・なんの研究をしているか知らないし、興味もない。

会った記憶もないし、今更会う気もない。

だが母親は父からの愛が欲しかったらしく、会えないストレスを俺に向けていた。

八つ当たりを毎日喰らっていたのである。

だが今となっては当時の記憶がない。

本当の名前すら憶えていない。

そんな時に出会ったのが・・・

「おい、何寝てんだい殺ト」

と起こされる。

静かな店内にミイトおばさんの声が響く。

どうやら少し眠っていたようだ。

「もうクリーニング終わったよ」

俺30分も寝ていたのか。

確か過去の夢を見ていた気がするが、よく覚えていない。

「はい、これいつも通り買った時くらい綺麗にしといたからね」

差し出された服は本当に新品同様なくらい美しくなっていた。

さすが裏社会のクリーニング屋、腕は表のクリーニング屋の比にならない。

「さ、早く帰ってベッドで安眠しな」

俺は服を着なおして、その言葉を背にし、入口へと行く。

クリーニング代は高くつくが、俺の所属しているグループが肩代わりしてくれる。

グループというか、組織に近いかな?

俺はいつも通り感謝の言葉を述べる。

俺はクリーニング屋出て、家へと向かう。

ここから家までは徒歩7分とかなり近い。

ちなみに仕事場は大体車で送り届けてくれるが今回は27分、近くはないが、わざわざ車を出してもらうほどの距離でもない。

地球の環境的にも悪いしね。

そんなこんなで俺は家につき、家に入る。

「ただいま」

って、誰もいないんだけどね。

リビングへ行き、荷物を下ろし、キッチンへ向かう。

冷蔵庫を開けベーコンと卵を出し、ベーコンをフライパンに乗せる。

卵を割り、火を入れる。

焼いてる間にご飯をつぎフライパンのなかに入れる。

炒飯のようなものを作っている、まぁご飯に卵を入れて塩コショウを入れればほとんど炒飯だろう。

違ったときように今謝ります。

すみませんでした。

ま、まぁ、これはいったんおいておこう。

すぐにできて、なかなか美味い。

はい、もう出来上がった。

これまでにかかった時間訳10分。

出来上がった料理を机に並べ、テレビをつける。

「あ、このドラマ学校で流行ってるやつだ」

俺は大抵テレビを見ないので学校での流行りになかなかのれない。

「あぁ、明日も学校かぁ・・・仕事の次の日は休みにしてくれねぇかなぁ」

なんてことがあったら苦労はしない。

「いただきます」

手を合わせ、日本人特有の挨拶をする。

俺は炒飯をかけこみ、よく噛んで飲み込む。

そして水を飲み、一息つく。

俺はこの仕事柄ゆっくりできる時はたくさんあるが、殺してきた人間たちの死に際の顔が頭から離れない。

それをよく思い出しては胸が苦しくなる。

俺も人間なのだ、罪悪感があるのだ。

だが、俺がやらなければ、変えなければいけないんだ。

このーーー世界をーーー

俺は罪悪感を振り払うように炒飯をかけこむ。

自分で言うのもなんだがかなり味音痴だ。

だから自分の作る料理は結構うまく思えるのだ。

自信過剰かと思われるかもしれないが、誰かにふるまうわけでもないから構わない。

いろいろと考えていたら料理はなくなり、食事が終わっていた。

「ごちそうさまでした」

俺は皿を片付け、皿洗いをさっさと終わらせテーブルに戻りドラマの続きを見る。

「このドラマの千崎廉音って俳優可愛いな」

『私、あなたのことが・・・!』

『お、俺だって、おまえのことが・・・!』

悪く言えばベタな展開だがよく言えば王道な展開だ。

俺は好きだぞ、こういう展開。

と、告白した時ドラマが終わった。

番組表を見ると今日が最終回だった。

「どうせなら後日談も知りたいな」

テレビを消し、自室へ向かう。

課題を終わらせて寝よう。

~30分後~

「よし、課題終わり」

時刻は23時30分

俺は頭がどちらかというと良い方だ。

「うーん、と、よし寝るか」

俺は伸びをして、もう一度リビングへ向かう。

ケトルに水をいれ、マグカップにココアパウダーを入れ、お湯が沸くまで待つ。

『メッセージが届きました』

またか・・・

この時間にレインを送ってくる人物は一人しかいない。

送信者の名前は金城狩阿(かねしろかるあ)

この男は俺の数少ない友人である、そして・・・

まぁ、今はこの話はしないでおこう。

内容は。

『宿題みせてー(>人<)』

これが課題がある日、毎回来るのだ。

この男・・・狩阿はかなり頭が悪い。

『おーい、寝てるのかー』

スマホをつけっぱなしにしてるから機械音声はならないが、通知音はなる。

俺はめんどくさそうにレインの返信を打つ。

『もう寝るから明日な』

『りょーかーい』

ケトルのスイッチが切れる音が聞こえ、俺は手に取りマグカップにお湯を入れる。

さぁてと、ココアを飲んで寝ますかね。

リビングの電気を消し、ココアを持って部屋に行きココアを飲み干し、ベッドに入る。

「おやすみ、今日の自分、明日が来ますように」

俺は何も考えずベッドに意識を奪われていき、眠りに落ちた。

・・・

なんだ?この感じ?

「助けて」

ん?何だ?

俺は確か・・・眠って・・・

てことはここは夢の中・・・か?

そこにはなにもなかった。

真っ白な空間でただ一人・・・

いや、違う・・・もう一人・・・いる・・・?

「お願い」

な、なに?

「私を」

私を?

そこで気づいたのだが、声が出ないということに。

そして目の前にいるのは俺よりかなり背の小さな少女。

だが何故少女とわかるのかがわからない。

顔もわからない上に座りこんで腰を曲げてこっちを向いているのでさらに全身モザイクなので本当に少女ということ以外なにもわからない。

少女はわずかに見える口を動かし言葉を発する。

「探して、見つけて、■■君」

「・・・!」

「ま、待って!」

べッドから飛び起き、あたりを見回す。

そこは見慣れた自分の部屋だった。

布団を触ると夏でもないのに大量の汗をかいている。

ベッドから降りて、歯磨きをしに行く。

その道中でさっきの夢を思い出す。

あの少女は誰だったのか?なぜ俺に助けを求めた?

でもなぜか懐かしくて、それでいて寂しくて・・・

カーテンを開け、朝日が部屋を照らす。

いつも通りケトルに水を入れ、お湯をわかし、ココアパウダーを入れって昨日と一緒だからはぶこう。

フライパンを用意し火をつけ、卵と鶏むね肉を入れて料理を始める。

その間パンをトースターに入れる。

俺は鶏肉が大好きだからほぼ毎日食べている。

その上にタンパク質も豊富なのでダイエットにも効果的なのである。

少し微笑みながら鶏肉を裏返す。

油が跳ねる音が心地よく俺の心が躍る。

鼻歌を歌いながら焼きあがった卵をパンの上に乗せる。

次に鶏肉を卵の上に乗せ、その上にパンを乗せて俺の大好物が完成した。

その名もチキンエッグサンド。

うーん、なんと高貴な響きだろう。

時計を見ると6時50分と表記していた。

早く起きすぎたな。

いつもは大体7時半くらいに起きるようにしている。

料理を皿に乗せテーブルに持っていき、椅子に座る。

「いただきます」

口いっぱいに頬張りながら、さっきの夢を思い出す。

確か・・・

「助けて、お願い私を探して助けて■■君・・・」

名前の部分は聞こえなかった。

だが、呼ばれた名は俺の名前、世影殺トではなかった、と思う。

もしかして、前世の記憶ってやつか?

ああクソ、一人じゃ考えが纏まらない。

仕方ない、こういう話題に詳しいやつに頼ろう。

狩阿である。

あいつは勉強こそできないが、こういうスピリチュアル的なことにはかなり詳しい。

パンを丁寧に食べ数分で食べ終わり、レインを打つ。

『宿題見せる代わりに頼みがある』

物の数秒で返事が返ってきた。

『もちろんいい』

たて続けに返事が返ってくる。

『7時半に学校で落ち合おう』

食器を片付け、朝の占いを見る。

「今日の良い運勢の人は山羊座のあなた!運命を変える出会いがあることでしょう!」

時計は7時を指している。

今から行けばちょうどよい時間になる。

昨日の仕事前に用意しておいた学校の荷物を持ち。

さてとじゃあ行きますかね。

俺は玄関を開け、外に出るのだった。

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fake ability 柊ラミト @Hiragimakoto2004

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