第3話

昨日エリュ陸曹から聞いた話を反芻するも理解するのが難しい。しかも国家機密を一隊員に話しても良いのかな?


まずは昨日のことを思い出してみよう


***


「私が来月よりその…捜査隊の隊員になると言うことは飛び級で卒業ということでしょうか?」


エリュ陸曹は答える


「そういうことになるな。まぁ入学試験主席、教育課程の成績は全て優、学年共通の試験では全て総合1位。1年余りで卒業してもおかしくは無いよ。」


「え?ルダってそんなすごいヤツだったのか?じゃあこいつとならベータ倒し放題やん」


ルイスもまた"ベータ"と言っている。


「エリュ陸曹、ベータとはなんでしょうか。」


「一言で言えば"地球外生命体"だ。」


するとエリーナ秘書官が端末を使い説明してくれた。


「ここ最近の不審死の事件数は前年比4.75倍。今までも比較しても類を見ない数字です。増加の要因は正しく"ベータ"です。」

「ベータは人間と同じまたはそれ以上の知能を持ち、人間に擬態することができる外来生物です。不審死の他に地殻変動、日照時間の減少や相次ぐ失踪者の増加もベータが原因です。」


そんな未知の生物がいるなんて知らなかった。でも、人間に擬態出来るならどうやって見つけられるんだろう。


「ルダはルイスとバディを組み、ベータを倒す先鋭の1人となってもらいたい。ルダとルイスの他に4人の隊員もいる。隊長は当面の間僕が代理を務める。よろしくな。」


「了解しました。」


***


そして、早速来月の初仕事の資料が手元にやってきた。


《市立小学校児童失踪事件》


そう書かれている資料のページをめくると、ここ1ヶ月でとある小学校の児童が5人も失踪している。いずれも失踪している児童に共通点は無く、ベータによるものだとされている。


失踪場所、時間、日時全て無作為であり学校側も対策の仕様が無いので現在は休校となっている。



《4月7日に実施予定の作戦について》


そこには4月7日に行われる始業式にて全生徒を体育館に集めて、ベータの出現を試みる作戦だ。現れなかったら同じような作戦を一定周期で開く、と記載されている。


私は1週間後に卒業式を行い、次の日から訓練漬けの毎日になるだろう。


未だにこの校舎を離れる実感が湧かない。私がベータと戦う隊員となる実感も湧かない。


この宙ぶらりんの心で隊員になって良いのだろうか。


***


卒業式は程なくして終わり荷物をまとめて隊員寮に移る。隊員寮は個室なので心なしか寂しい気もする。


アナウンス『隊員寮の片付けが住んだらフロントに集合してください。』


アナウンスの言葉尻も柔らかくなっている。これが隊員であることへの待遇なのか。少し嬉しい。


フロントに女子3名、男子3名が集まった。


「多分俺が最年長だな。防衛隊1班から来たニックだ。」

「同じく1班のジンだ。ニックとバディを組んでいる。よろしくな。」


ニックはガタイの良いかっちり目の男性。ジンは細身で耳が良いと噂で聞いたことがある。


「私は軍備管理課から来たマヤ。武器には詳しいからなんでも聞いて!」

「国際情報総括司令部のミモザ。私は兼任だからマヤとはバディだけどたまにアルファを休むことがあるわ。」


マヤは穏やかな可愛らしい女性。対してミモザはクールビューティーな強かな女性。兼任するだけあるね。


「俺達は今年卒業したルイスとルダです!先輩方よろしくです!!」


ミモザ「あなた達の噂で上層部は持ちきりだったのよ」


マヤ「かたや国際防衛隊隊長の息子と、飛び級して首席で卒業したスーパーガールだなんてね!私たちも負けてられない!」


ニック「おいおい!最初から甘やかすなよ〜」


ジン「分からないことがあったら、俺達先輩になんでも聞いてね!」


ルダ「え?ルイスって御曹司なの?」


ルイス「今そこ?俺は側室から産まれたデザイニングベビーだよ。ご子息は病気で戦えないから俺が入ったの。」


愉快な仲間と衝撃事実に頭が回らないよ…。私、やっていけるかな?


つづく

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