07アルバート君観察日記その5「アルバートくんに飴をあげたら」
アルバート君は夜勤の時はいつも眠そうな顔をしている。
そもそも彼は夜勤の時は昼間ちゃんと寝ているのだろうか。
先日の夜勤のときなんかも勤務の終わりの方で、なんと立ったまま寝ていた。
その姿は超満員の京浜東北線の車内で時々見かける立ったまま寝ているサラリーマンとダブって見える。
「起きるんだ!アルバート君!!」
その時は自分に怒られシュンとなっていたが、慣れない夜勤で疲れが溜まっているのだろうか。
ある日の夜勤。
PC画面に向かうアルバートくんの目が半分閉じているのを確認したボクは、思わずカチッと来て高速ブレーンバスターでもかけてやろうかと思ったが、ふと手元にキャンディがあるのを思い出し
「アルバート君このキャンディあげるよ」
と言って、休憩中に自分がよく舐めるキャンディを一つアルバートくんにあげた。
その飴はどこのスーパーでも購入できるノンシュガーのエスプレッソキャンディで自分のお気に入りだ。
「アリガト、ゴザイマス」
というと小袋を破いて口の中に入れた。
直後、彼の目が輝き出す。
「この飴苦いけど美味しい!」
コーヒー好きのアルバート君、大興奮で隣りにいたおじさんを捕まえて、
「ワタシの国でこんな美味しいキャンディ売ってない。ワタシの国、甘いシュガーキャンディしかない」
「将来は国に戻ってこういうキャンディ作って売ってお金稼ぐ。
最後は、
「大統領になって私の国良くする。」
みたいな自分の夢を意気揚々と聞かせていたそうだ。
飴玉一つでどうしてここまで盛り上がれるのか不思議だったが、
隣のおじさんはアルバート君の話がしつこくてトイレになかなか行けずに困ってたそうだ。
僕は、自分があげたキャンディに変な興奮剤かなんか入っていないだろうなと心配になった。
あれからアルバートくんはボクの顔をみると、ちょくちょくあのキャンディをくれと言ってくる。
自分で飴を買わずに人の厚意にたかるところが何ともアルバート君らしいとことだが、
あっという間に自分の分のキャンディがなくなるので少し困っている。
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