02アルバート君観察日記その1

ウチの職場には外国人従業員がたくさんいるが、

その中で特段ユニークなやつがいる。


彼の名を仮にアルバート君にしておこう。


彼は南の国で生まれ育って、少し前に日本にやってきた。

そしてこの度、自分の直属の部下になったのである。


彼は日本語に関しては、いつも自信に満ち溢れている。

「ワタシ、ニホンゴ、ダイジョウブ、デス」

というのだが、そのわりには彼が使う日本語は基本カタコトである。


トイレに行くときは、

「ベンジョ」


ランチに行くときは、

「メシ」


休憩に行くときはなぜか、

「ハラ、イタイ」

と言う。


誰に日本語を教わったのだろうか。


「アルバート君。休憩に行くときは『キュウケイ』って言うんだよ」

と言ったら、


「キュウケイ!ワカッテル!」

となぜか不機嫌になった。自分の間違いに関しては他人に突っ込まれたくないらしい。


 夕方になってアルバート君が、

「キュウケイ!」

と言うので、ついに「休憩」という言葉を覚えたかと感心しながら、

「おう。行ってらっしゃい」

と言うと、彼はニコニコしながら部屋を出て休憩室の方に行った。


それっきり彼は部屋に戻ってこなかった。


同僚達が「あいつどこ行ったんだ?」と言い始めて、職場内を探し始めた。

見つからないので、彼の携帯に電話を入れたら、

アルバート君はすでに自宅に戻り、

夕飯を食べて奥様といちゃいちゃしていた(と、英語で釈明していた)

こうしてアルバート君の勤務初日は、なかなかの波乱で終わりをむかえたのである。

「休憩」という言葉を知らない事をダシにしてさっさと定時に退社したという訳だ。


 アルバートという漢。なかなかの策士である。

 

 そんなアルバート君は『スーパーマリオ』と『喪黒福造』を足して2で割ったような風貌である。要はとっても濃いキャラということだ。


そんなアルバート君は今後も策士ぶりを遺憾なく発揮し、いろいろなことをしでかすのだが、それは今後順次報告することにしたい。

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