第二章 暗殺
二章 一話
「あーっひゃっひゃっひゃっひゃっ」
天正五年 十月
「来たか!信長ァ!待ちくたびれたぞぉ〜」
この男は
天守の最上階から迫り来る大軍を見下ろしている。
その姿は歳の割にはシワが少なく長くかきあげた髪には白髪と黒髪が入り乱れてる。
そして鋭い目には誰も想像できない野望を抱いているように見える。只者ではない。
俺はそんな久秀の野心に惹かれた。
久秀は顔の左に乾燥した地面のような傷を持っている。
それを舌で口の中からいじる癖があり声の抑揚が人とだいぶ違う。
だから言葉から感情を読み取るのが難しい。
この戦いは織田信長に反旗を翻した松永久秀を討伐する戦いだ。
過去久秀は一回、信長に背き許されている稀有な人物だ。
しかも今回も条件付きで許されようとしているが、久秀はそれを拒否。
最強軍団と絶望的な戦をしようとしている。
今は重臣を集め評定を行なっている。
織田軍をどうするかの
古民家ほどもある天守の一室には四本の柱と吹き抜けの屋根がある。
重臣の十二人は向かい合いながら黙っている。
俺は情けない大人たちを柱に寄りかかったまま軽蔑していた。
静かで気まずい雰囲気の中
「ふん♪フふーん♪ふッふーん♪」
これから戦だというのに久秀は鼻歌なんぞ唄ってる。
俺はこんな大軍と相対するのは初めてで身震いすらしているというのに。
唄いながら左手に持っている
するといきなり
「殿!真剣に考えてくだされ!」
皆がその大声の主に注目する。
このなんの面白みもない普通の顔のおっさんは
真面目で堅物で武士らしいと言えば聞こえがいいが実際のところただの老害だ。
久秀とは対極にいる気がする。
その久秀は静かに母親に叱られてる子供のように不貞腐れ岡の話を聞いてる。
「織田勢はざっと5万!我々の倍以上ですぞ!」
床に敷いてある地図をバン!と叩いて怒鳴り散らかす。
ったく、ジジイは気に入らないことがあるとすぐ大声を出しやがる。
やれやれ、うるせぇなと目を伏せ頭を掻く。
「先日、
岡がため息混じりにつぶやいた一言。
「…!細川…?」
細川…か。
ギシッ…床がきしむ不快な音に目線を上げると久秀が岡に近づいていた。
その足取りは目の前にお気に入りのおもちゃがある少年を思わせる。
だが顔は無邪気というよりも狂気を帯びているのが横顔からでもわかる。
「いっひっひ」
「あぁ、は…は」
久秀の笑い声でこの部屋には一気に「不気味」が
歩いていた久秀は岡と目線が合うようにしゃがみ、バッ!と首を掴む。
右手にはあの脇差がある。
「お前はァ…信長が怖いのかァ?」
先程の狂気笑いと打って変わって眉と顎を上げ全然つまらなそうな顔をしている。
脇差で岡の頬をペチペチと叩く。
今度は岡が静かになる。
つぎは首から両手で頬にふれ岡の頭に右手で触れる。
脇差で岡の
久秀は楽しそうにされるがままの岡をいたぶってた。
岡は鼻息が荒く、震えている。
今度は安心させるように手の甲頬を撫でる。
「なら…俺とどっちが怖い?」
岡の目の奥の何かを確かめるように呟く。
人形のように固まった岡の髪を右手ですいた。
視線を今度は顔に写しニッと口角を上げ立ち上がり場を離れる。
皆腰を抜かした人形を静かにみる。
岡は冷や汗をだくだくかいているだろう。
あの面白みもない顔が青く染まっている。
(やば、おもろ)
実際久秀は何も考えてないわけではなかった。的確に命令を淡々と下す。
「まず、
「ははっ!」
筒井との戦いのあと松永家に仕官した。
新参だが頭が切れるため久秀にこき使われている。
久秀の号令ののち、今日の評定は終わった。
いよいよ明日に開戦が迫ってる。
天守から出て行く時久秀に呼び止められた。
未だに城下を見下ろす久秀の側による。
久秀から言われたのはたった一言
「信長を殺せ」
————————————————————
【松永久秀】 大和国(奈良県)出身。
三好家を乗っ取る。将軍暗殺。東大寺焼き討ちをした戦国三大
信長と久秀の間に何かしら通じ合うものがあるのカモ…?///
【岡国高】
古くから松永家に仕えてる。他に言うことはない。電車で騒ぐ若者に注意タイプの老害。それも真面目だから…
【森好久】
元々は同じ大和の大名で松永のライバル筒井家にいた。なぜ松永へきたのか…?
【本願寺】
大坂を本拠地にしてる仏教勢力。信長アンチ
【毛利】 (
三本の矢で有名な
信長微アンチ。松永、本願寺とはビジネスパートナー(他には
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