第30話 アクティブな陽キャの変態


「なにアレ! ああいうのホント許せないんだけど!」


 頬を膨らませ、不機嫌さを隠そうともしないあずさ

 まあ気持ちはよくわかるが。


虎嬢こじょうさんはそんな人じゃないし! そりゃまだ会ったばっかりで、よくは知らないけどさ!」


「お、お姉ちゃん落ち着いて……」


「ハジメくんはああいう大人になっちゃダメだからね? 勧誘のために他人を悪く言うような人は信用しちゃダメだからね?」


 そりゃわかってるよ。

 なんなら俺、キミより大人だし。


 いるんだよねぇ、他者の評価を下げれば自分の評価が上がると思ってる人って。

 言っちゃいけないことってあるよな、やっぱり。

 くわばらくわばら……。


 ――にしてもあの松永って人、営業の割りに随分あっさりと引き下がったな。

 もっと食いつかれるかと思ったのに。

 なんか微妙に気になるような……。


 俺はそんなことを思いつつ、Dゲートの入り口へと到着。

 すると、


「お! おーい2人共ー! こっちこっち!」


 俺たちに向かって手を振る若い男性の姿。


 年齢はおそらくあずさより少し上。

 高校3年生くらいかな?


 くせっ毛の金色ショートヘア。

 顔立ちは端正で、かなり細い糸目。

 特徴的な丸型ラウンドサングラスを鼻に乗せており、ちょっとお洒落。

 今時のチャラい男の子って感じ。


 丈の短いスカジャンとゆったりとしたサルエルパンツというラフな服装なのだが、その左腰には鞘に納められた刀を携えている。


 彼も魔力保持者のようだし、コラボ相手の先輩・・っていうのはきっと彼だろう。


「待ってたよ! 初めまして、俺は柳生やぎゅうつるぎ! よろしくね!」


「! つ、つるぎさん……!? チャンネル登録者数70万人の、女子学生人気No.1のイケメンDTuber……! ほ、本物……!?」


 驚いた様子を見せるあずさ

 どうやら、彼はDTuber界隈では有名人らしい。


「はっ、初めまして! 私出雲いずもあずさって言います! あ、あなたのチャンネル登録してて、いつも見てます!」


「あれ、そうなの? 嬉しいなぁ!」


 緊張した面持ちで頭を下げるあずさ

 どうやら彼女は以前から知っている人物のようだ。


 まあ日本最大手事務所のDTuberともなれば、知名度があって当然か。

 思ったより感じのよさそうな好青年だし、あずさがファンになってもおかしくないな。


「キミがハジメくんだね? 社長から色々話は聞いてるよ!」


「じ、慈恩じおんハジメです! よろしくお願いします、先輩!」


「それにしても……うーん、やっぱり動画で見るよりずっとイイね!」


「? はい?」


「ねえハジメくん、キミ兄弟いる? 彼氏――じゃなくて彼女は? あずさちゃんと付き合ってたりするの?」


「つ、付き合っ……!?」


「そ、そそそんなワケないじゃないですか! ハジメくんはまだ小学生ですよ!?」


「あれ、そうなんだ? てっきりあずさちゃんも俺と同じタイプの人間かと思ってたのに」


 つるぎ先輩はそう言うと、屈託のない笑顔を俺に向ける。


「実はさ~、幼い子が大好きなんだよね俺! 特に美少年ショタが!」


「え……?」


「だから今日は凄く楽しみにしてたんだ! ハジメくん、俺の弟になってよ!」


「ム、ムリです……」


「そっか~。それじゃ収録終わったら一緒にご飯行こう! 遅くなったらウチに泊めてあげるから! ね!」


「……嫌です。近寄らないでください」


 ――変態だ。

 それもアクティブな陽キャの変態だ。

 DTuberじゃなかったら犯罪者になってるタイプの人だ。


 ヤバい、どうしよう。

 身の危険を感じる。

 誰か助けて。

 

「アハハ、残念! まあいいや! それじゃダンジョンの中に入ろう!」


 まるで何事もなかったかのようにDゲートを潜っていくつるぎ先輩。


 恐ろしく早い切り替え。

 この人、頭の中どうなってんだマジで……。

 あずさなんて「つるぎさんってこんな人だったの……?」って放心してるのに。


 仕方なく俺たちもDゲートを潜り、ダンジョンへと入っていく。


 直後――頭上から降り注ぐ、膨大な量の水。

 大地の亀裂によってできた巨大なくぼ地に、途方もないスケールの滝水が流れ込んでいる。


 ――〝落滝谷ダンジョン〟。


 以前の〝地下坑道ダンジョン〟など比較にもならない広さの、1級ダンジョンだ。


「それじゃドローンを起動するね! 撮影はコイツがやってくれるから、スマホは構えなくて大丈夫!」


 つるぎ先輩はバッグから小型飛行ドローンを取り出し、起動。

 俺たちの頭上に浮かんで、3人の姿をカメラで捉え始める。


「時間になったら配信始めるよ! ――ところで、2人共なにかあった?」


「え?」


「元気ないように見えたからさ! 俺でよければ相談乗るよ! アハハ!」


 相変わらずの陽キャムーブ。

 うぅ……変態のくせに眩しい……。


 しかし意外と他人を見てるんだな、この人。

 相談かぁ……勧誘のこと話すべきかな?

 

 一瞬互いの顔を見合った俺とあずさは、さっき起こったことを彼に話すことにした。



==========



https://kakuyomu.jp/works/16817330654519613967

息抜きで1話あたり1~2分で読める話を書いてみました。

皆こういう文体の方が読みやすいのかな……?|ω`)

スマホでの読みやすさを意識してみたんですが……。


反応がよければ『転生の神童』の文体も調整しようかなと思ってます~!

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