第29話 スカウトマン
――収録当日。
週末の日曜日。
俺と
「い、いよいよだね、ハジメくん……」
「そうだね、
今日の
彼女が現役の巫女なのはわかっているけど、見慣れていないのでかなり新鮮だ。
そういえば巫女姿を見せてくれたのはこれが初かな?
「い、いやさ、
「うん、映えると思う。凄く似合ってるし、綺麗だよ!」
「ふぇ!? そ、そうかなぁ……?」
照れて顔を赤くする
実際似合ってる。
それに普段にも増して魔力が澄んでいる感じがするし。
あと強そうに見えるよね、やっぱり。
いいな~、こういう勝負服みたいなの。
凄くキャラ立って見えるし。
俺もなにか爺やに頼んで拵えてもらおうかな?
そんなことを思いつつ、警察の人たちに魔力保持者証明書を提示してバリケードを越えようとする。
すると、
「――失礼、
そんな声が俺たちを呼び止めた。
振り向くと、そこには黒スーツを着た笑顔の男が。
「? そうですけど……」
「どうも初めまして。私DTuber事務所
パキッと七三に分けた黒髪と爽やかな顔つき。
名乗らなくてもわかるほど絵に描いたような営業マンである。
松永と名乗った彼は「こちら名刺です」と名刺も渡してくる。
嫌にバカ丁寧な社交辞令も実に営業らしい。
「えっと……僕たちになんのご用でしょう?」
「はい、本日はお2人を弊社の専属DTuberとしてお誘いすべく、契約の打診のためにお伺いさせて頂きました」
ああ……なんとなく予想はしてたけど、やっぱり。
あれだけ配信がバズったんだから、そりゃお声がけは来るよな。
嬉しいしありがたいんだけど……。
「すみません、私たちもう別の事務所と契約しちゃってまして……。どうかお引き取りを――」
「別の、というと――
――あれ?
なんで知って――
「ああ、やっぱり。お噂は聞いておりました。単刀直入に言わせて頂きますと、即刻に契約解除をお勧め致します」
「え……?」
「
「!? そんな……嘘だ!」
「業界内での彼女の評判は最悪。このままだとあなた方も奴隷のように使われ、いずれは――」
「……ハジメくん、行こう」
彼女の声色には明らかな苛立ちが感じられた。
「お言葉ですけど、勧誘のために他人の陰口を言うような人は信用できません。もう関わらないでください」
「……それは残念。ですが、弊社はいつでもご連絡をお待ちしておりますよ」
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