第27.5話 意外だった(※爺や視点)
――坊っちゃんたちとひと通り話を終えた
相変わらず悪趣味な車だ。
「……意外であったぞ」
正門前まで見送りに出たワシは、彼女に向けてそう言う。
「ん~? なにがや?」
「坊っちゃんの答えにお主が納得したことだ。昔のお主は、ああいう大言壮語を嫌っておっただろう」
「〝所詮この世は
「……今は違う、と?」
「企業の社長になって、一部上場まで果たして、最大手に会社を成長させて……。そこまで行くとな、稼ぐためには〝大志〟が必要になるものなんよ」
「フッ、昔のお主からは考えられない言葉だ」
「バカにしちゃアカンで? 大企業にとって社会奉仕は必要偽善や。投資と言ってもええな」
黒スーツの護衛が
そして護衛がドアを閉める前に、
「――意外っちゅうなら、アンタも意外やったよ」
「ワシが?」
「なんでウチに連絡してきたん? あの子預けるだけなら、もっと別の選択肢もあったやろ?」
「それは……お主が1番信用できたからだ」
「ふぅ~ん?」
「実力・地位共に申し分ないのはお主だけだった」
「へぇ~~~~?」
「……他意はない」
「ま、ええわ。ハジメくんの能力は
「
彼女の言葉を遮って、名前を呼ぶ。
かつて志を違え、顔を見るのも嫌だった――けれど数少ない生き残りである、同期の名前を。
もう、残っていない。
肩を並べた同期のほとんどがダンジョンで妖怪に食われたか、老いや病に勝てず逝ってしまった。
どれほど死生観が違ったとしても……今でも〝友〟と呼べるのは、もはや
そしてやはり、こやつも伝わっているのだろう。
坊っちゃんの能力がどれほど時代を――いや、世界を変えてしまうのか。
「あの子を、頼むぞ」
「…………任せえっての、アホ」
――
最後に見えたのは、そっぽを向いたまま答える彼女の後姿だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます