第24話 クラスの人気者


「待ってたぜ、慈恩じおん!」


「おはようハジメくん! 妖怪退治カッコよかった!」


「完全にヒーローじゃん! なにあの龍、スゲーって!」


「ハジメくんって魔力保持者だったの!? 早く教えてよぉ~!」


 ――クラスメイトのほぼ全員が、俺を取り囲む。

 これまでほとんど接点のなかったクラスメイトが。


「ちょ、ちょっと皆!? いきなりどうしたの!?」


「皆ニュース見たに決まってんじゃん!」


「私、『いずハジ@チャンネル』登録したよ!」


「サインして! サーイーン!」


 ……なるほど、全員ニュースなりトレンドなりを確認済みってか。


 先週までぼっちだったのに、いきなりクラスの人気者とはな。

 ハハハ、まったく小学生ってのは流行りに敏感なんだから。


 しかしまあ、小学生に囲まれるのも複雑な気分だな……。

 俺の中身ってあくまでおっさんだからさ……。


「おーいお前ら、ヒーロー出迎えるのもほどほどにしとけよ。出席取るぞ~」


 その時、タイミングよく担任の先生がクラスにやって来る。

 ほっ……どうにかおしくらまんじゅうからは解放されそうだ。


 ――この後、俺は一日中クラスメイトたちからヒーロー扱いされた。

 休み時間になる度にダンジョンでの出来事を根掘り葉掘り聞かれ、サインをせがまれ、チャンネルに出演させてくれと頼まれた。


 ……あと、女子から「付き合って♡」と告られたのが数件。

 はい、小学4年生から告白されました。

 当然お断りさせて頂きましたが。

 まったくマセてるんだから……。


 職員室に呼び出されて色々と話をされたりもして――放課後になる頃には、すっかりクタクタになっていた。


「うぅ……今日は疲れた……」


 クラスメイトが皆帰った後の教室で、俺は帰宅の準備をする。

 ランドセルに教科書やノートを突っ込んでいると、



「ハ、ハジメくん……い、今更だけど、お、おはよう……」



 ――1人の女子が話しかけてくる。

 オドオドした感じの、背の低い女子が。


「! おはよう、マリアさん。そういえば今日は話せてなかったね」


「う、うん。ようやく話せた……えへへ」


 この子の名前は督姫とくひめマリア。

 同じ4年B組の女子生徒であり、以前からよく話しかけてくれていた子だ。


 彼女はアイルランド人と日本人とのハーフで、長い金髪と翠色の瞳を持つ。

 他者と目を合わせるのが苦手らしく、前髪を伸ばして目を半分隠しているのが特徴。


 だがその顔立ちは陶器人形のように整っており、隠しているのが勿体ないほど。

 事実、クラスには彼女の隠れファン男子がいたりする。


 身体はとても細く華奢。

 身長は130センチ前半と、俺より一回りほど低い。


 ハーフという生い立ちと地毛の色からどうしても視線を集めがちで、それが原因で友達を作るのが苦手なんだとか。


 それでも彼女は、俺にだけは積極的に話しかけに来てくれる。

 

 何故かと言うと――――彼女も、魔力保持者だから。


「でも、僕と話すために残ってくれてたの? 皆はもう帰ったのに……」


「こ、この時間まで残ってれば、話せるって視えてた・・・・から……。そ、それにマリアは、ハジメくんの将来のお嫁さん、だもん……」


 えへへ、と不器用に笑うマリア。

 

 ――うん、かわいい。

 とってもかわいいのだが……たまによくわからないことを言うんだよな、この子。


 視えてたとか知ってたとか、自分を将来のお嫁さんだとか……。


 それに俺は小学校の中でもずっと〝魔力の収縮〟を維持してるんだけど、マリアは初見で俺を魔力保持者だと見抜いてきた。


 どうしてわかったの?と聞いても「知ってたから」として答えてくれない。

 纏っている魔力といい雰囲気といい、かなりの不思議ちゃんである。


 にしても、将来のお嫁さんって言うのはやめてほしいなぁ……。

 俺の中身はおっさん。

 彼女は正真正銘の小4女子。

 ……犯罪臭がヤバすぎるんだよ。


「と、と、ところで、あの、あの……」


「? どうかした? ゆっくりでいいから言ってごらん?」


「えっと、あの……今日、ハジメくんのおうち……行っても、いい?」



==========



近況ノートで『督姫マリア(10歳)』のキャライラストを公開しております。

( ゚∀゚)o彡°ヨージョ!( ゚∀゚)o彡°ヨージョ!

https://kakuyomu.jp/users/mesopo_tamia/news/16817330654425480515

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