第2章 本格活動、開始!

第21話 ねえ、今朝のニュース見た?


「ねえ、今朝のニュース見た?」


「見た見た! 小学生が超スピードでダンジョン攻略しちゃったヤツでしょ! もうSNSのトレンド1位になってるよ!」


「あの映像マジやばかったよね。しかも小学生の子が超かわいくて、しんどかった~」


「あの子のチャンネル、もう登録者数が50万人超えたってさ。ウチもさっき登録したったわ♪」


「アタシもアタシも! DTuber史上最速で100万人突破するんじゃないかって言われてるし、その瞬間見たくね?」


「めっちゃ見た~い!」




   ▼




「……さて、本日ご両親にお越し頂いたのは他でもありません。坊っちゃんのことについてです」


「「……」」


 お寺の本堂で、ワシは坊っちゃんのご両親と対面する。

 どうしても直接会って話さねばと思い、ここまでご足労頂いたのだ。


「ニュースはご覧になられたでしょう。今や坊っちゃんは、魔力保持者の中でもとりわけ有名人となってしまった」


「……はい。初めて見た時は本当に驚きました」


「正直未だに信じられません。あの子があんなに強い妖怪を倒してしまうなんて……。だってハジメはまだ10歳ですよ……!?」


 父君も母君も、複雑な心境なご様子。


 無理もない。

 本来であれば独り立ちなど遥か先の幼子が、橙色の土蜘蛛つちぐもなどという上位個体を仕留めてしまったのだ。

 それも戦いの一部始終がカメラに収められ、彼が死線を潜る光景を目の当たりにしてしまった。


 初めてご子息の死闘を見たご両親の心情は、如何ほどだったことか。

 お2人が魔力のない一般人であることも加味すれば……察するに余りある。


「まさに運命の悪戯と言う他ありますまい。ですがあの子が土蜘蛛つちぐもを倒したこと自体、ワシは驚いておらなんだ」


「「……」」


「お2人もよくおわかりでしょう、あの子は特別です。正真正銘、神に愛されし〝神童〟だ。彼が強力な妖怪を倒すのは、所詮時間の問題でした」


 ワシは茶碗を持ち上げ、お茶を一口飲む。

 うむ、落ち着く風味だ。


慈恩じおんハジメが妖怪と戦うことに、ワシは一切の不安を感じておりません。今日ご両親をお呼びしたのも論点はそこにあらず。話し合いたいのは――」


「……あの子がDTuberをやっていることについて、ですか?」


 父君が切り出す。

 やはりわかっている・・・・・・ご様子だ。


「そうです。……ワシは危惧しておりました。彼がこうして目立ち過ぎてしまうことを」


 ……正直に言うと、これは完全にワシの落ち度だ。

 ハッキリと言葉にしておくべきだったのだ、「配信者DTuberをやってはならぬ」と。


 おそらく映像を見て気付いた者は少なくないだろう。


 ――これは世界を変えてしまう力だ、と。

 ――彼は〝神〟そのものになれる器だ、と。


 坊っちゃんの固有能力アビリティ・ギフテッドはあまりにも特殊。

 加えて、あの異形の青龍――。

 能力が完全に覚醒したのは、疑いの余地もない。


 ……これから先、あの子の力を利用しようとする輩が大勢現れるだろう。

 ワシ個人の力で守り切るのは、もはや不可能だ。

 

 だからみだりに人前で使ってはならぬと……いや、映像を見る限り不可抗力だったのであろうが。

 それに捕らえられた人々を救うために使ったとあれば、頭ごなしに責めるのも道理に反する。

 坊っちゃんは〝本当に守りたいモノ〟のために能力を使ったのだから。


 やれやれ……結局こうなるのが天の御意思だったとでも言うのか。


 まあ、起こってしまったものは仕方ない。

 不本意ではあるが、一応出来る限りのは打った。


 後は、ご両親と坊っちゃん次第――。


「あの子の魔力は強すぎる。その力を見世物にし続ける限り、どんな危険や苦難に遭遇するか予想もできません」


「「……」」


「率直にお聞き致します。ご両親は、あの子が配信者をやることをどうお考えか? ワシのことは気にせず、思っていることを遠慮なく言って頂きたい」


「そこまで仰られるなら……」


 父君が口を開く。

 そして、


「私たちも2人で話し合ったんです。そして、出した結論は――」


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