第20話 天魔創生


「出ておいで――【青龍せいりゅう毘沙門天びしゃもんてん】」


 想像イメージ出力アウトプット創生ジェネシス


 ――身体から不定形の魔力が漏れ出る。

 それはすぐに、〝龍〟として形となった。


 全身が鱗で覆われ、鎧を着込み、長い角と髭の生えた、巨大な青龍ブルードラゴン

 三本指の右手には三叉槍さんさそうが握られ、左手には丸珠を備えた宝塔を持つ。

 さらに長大な龍の身体は電撃を発し、蒼い閃光となって大気を震わせる。


 その荘厳な姿は――まさしく〝守護神〟。

 妖怪を超越する、神そのものだ。


「お願い、皆を助けて!」


『承知。――オン・ベイシラマンダヤ・ソワカ』


青龍せいりゅう毘沙門天びしゃもんてん】が唱える。

 それと同時に左手の宝塔を掲げると、塔頂の丸珠から光線が放たれた。


 光線は拡散するように射出され、〝兵隊土蜘蛛つちぐも〟の身体を穿通。

 さらに天井から人々を吊るす〝糸〟をも切断した。


 まったく同時に、あずさも捕らえられた人々も救い出したのだ。


『ピギィ……!?』


 突然の出来事に驚愕する〝女王土蜘蛛つちぐも〟。

 それも束の間、【青龍せいりゅう毘沙門天びしゃもんてん】は三叉槍さんさそうを構えて突きかかる。


 だが〝女王土蜘蛛つちぐも〟は素早く回避すると、多足を生かして【青龍せいりゅう毘沙門天びしゃもんてん】に掴み掛かった。


『ヌウウッ!』


『ピギイイイィィィッ!』


 巨体同士の取っ組み合いでダンジョンが大きく揺れ、衝撃で頭上からパラパラと砂礫が降り注ぐ。

 その様子は迫力満点で、まるで怪獣と怪獣の戦いを見ているかのよう。

 傍にいると踏み潰されてしまいそうだ。


 ダンジョンを破壊してしまいそうな格闘戦だったが、すぐに【青龍せいりゅう毘沙門天びしゃもんてん】が優勢に。

 彼は〝女王土蜘蛛つちぐも〟を壁に叩き付け――


『オオオオオッ!』


 三叉槍さんさそうを突き込み、串刺しにした。


 勝負あり――俺は一瞬そう思ったが、甘かった。


『ピギィ……!』


 〝女王土蜘蛛つちぐも〟は〝糸〟を噴射し、【青龍せいりゅう毘沙門天びしゃもんてん】を反対側の壁に押し付ける。

 さらに〝糸〟の粘着性により、彼は身動きが取れなくなってしまった。


『ヌウ……っ!』


「【青龍せいりゅう毘沙門天びしゃもんてん】! あの女王、なんてしぶとい奴なんだ……!」


 形勢逆転。

 〝女王土蜘蛛つちぐも〟は三叉槍さんさそうへも〝糸〟を巻き付け、身体から引き抜こうとする。

 流石は橙色の体色。

 凄まじい生命力と言う他ない。


「させるか!」


 俺はそんな奴に追撃を食らわそうと、拳に魔力を込める。

 しかし――その時、数枚の御神符が〝女王土蜘蛛つちぐも〟へと張り付く。


「――出雲流・火符魔法【火之迦具土ヒノカグツチ】」


 直後、御神符が発火。

 〝糸〟へも引火し、瞬く間に〝女王土蜘蛛つちぐも〟を火だるまへと変貌させた。


『ピギイイイイィィィッ!』


「えへへ……私を忘れてもらっちゃ困る、なんてね」


「あ、あずさお姉ちゃん!」


「今だよハジメくん! トドメを!」


 あずさはウィンクすると、俺に向かって叫ぶ。


 彼女の魔法によって〝女王土蜘蛛つちぐも〟は大ダメージを負い、明らかに動きが鈍っている。

 絶好のチャンスが巡って来たのだ。


「よしっ……!」


 言葉に背中を押され――俺は飛び込む。

 燃え盛る炎を恐れず、ただ拳に魔力を集中し――


「これで――終わりだあああああ!」


 殴打パンチを叩き込んだ。


 ――俺の魔力が、拳を通じて流れ込む。

 〝女王土蜘蛛つちぐも〟の巨体は風船をように膨張し――――爆散したのだった。


 それと同時にダンジョンを覆っていた〝糸〟が消滅し、捕らえられた人々も自由になる。


 ダンジョン攻略終了――。

 きっとそういう意味なのだろう。


「な……なんとか、勝った……」


 俺は一気に緊張感が切れ、腰が抜けてその場に座り込む。


「や、やった! やったよハジメくん! 私たち、あんなに強い妖怪を倒しちゃったぁ!」


 あずさは俺へと抱き着き、頭に頬擦り。

 彼女の柔らかな2つのお山が、顔にむにゅんと押し付けられる。

 こ、これが現役女子高生の乙π……!?


「お、お姉ちゃん、やめてってば!」


「恥ずかしがることないでしょ~、うりうり~」


 グリグリと執拗に乙πを押し付けてくるあずさ

 

 やめて……俺の中身はおっさんだから……。

 普通に邪な気持ちになっちゃうから……。


 俺たちがそんなやり取りをしていると、拘束を解かれた【青龍せいりゅう毘沙門天びしゃもんてん】が俺の傍へとやって来る。


「……【青龍せいりゅう毘沙門天びしゃもんてん】。今日は本当に助かったよ」


『礼に及ばず。我は主の一部なのだから』


「ありがとう。またいつか、キミを呼ぶと思う。それまで僕の中で眠ることになるけど……許しておくれ」


『必要とあらば、いつでも呼ぶといい。――我が創造主よ』


 彼はそう言い残すと、再び不定形の魔力となって俺の中へ戻っていった。

 1度イメージして視認もできたことだし、これから彼を呼ぶ出すのに苦労はしないことだろう。


「ふぅ……それじゃ、捕まった人たちを連れて帰ろうか。なんだか疲れちゃった」


「そうね。視聴者の皆も、助けてくれてありが――――ん?」


 彼女は落としたスマホを拾い上げ、画面を確認する。

 するとその直後、ガチッと表情が凍り付いた。


「? どうしたの、あずさお姉ちゃん?」


「ハ……ハ……ハジメくん……これ……っ!」


 声を震わせ、彼女は俺にスマホの画面を見せてくる。

 すると、そこに映っていたのは――


「な、な、生配信の同時接続者数が……100万人を超えてるの……ッ!」


「へ?」


 俺が見た光景は、とても目で追えない速度で流れていくコメント欄。

 そして〝100万人が視聴中〟という、信じられない字面だった。


 どうやら――俺たちを助ける目的で、『いずハジ@チャンネル』の登録者たちが各SNSに情報提供を呼び掛けまくったらしい。

 結果、情報が拡散。

 世界中の人々が観に来る事態に。


 さらにスマホの落ちた角度がよかったため、配信が途切れることなく戦いの全てを生中継。


 これが凄まじい速度で大バズりし、一目リアルタイムで視聴しようと約100万人がチャンネルに詰めかけたようだ。


 ……そんなことって、ある?




 ――この出来事の後、俺とあずさの『いずハジ@チャンネル』は一気に知名度を上げ、その活躍がニュースにも取り上げられることに。

 

 さらに俺は〝史上最年少で2級ダンジョンを攻略〟という称号を背負うこととなる。


 そして勿論――DTuber活動が、爺やにバレてしまうのだった。




==========


第1章はここまでとなります!


次回から『第2章 本格活動、開始!』がスタート!

ダンジョン探索が本格化していきます!

(あとヒロインが増えます)


何卒、ブックマークと☆☆☆評価を……!

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