第14話 その神童、生命を創造する(※爺や視点)
……魔力の実体化?
〝具現化系〟の
おかしい、そんなはずはない。
――
持って生まれた魔力が大きければ大きいほど、
無論例外はあり得るし、魔力量が少ない者が特別な
だがそれにしても――
「爺や? どうかしたの?」
「! あ、ああいや、少し呆けてしまいました。それで坊っちゃんは、どんなモノを実体化できるのですかな?」
「それじゃあ実際にやって見せるね」
坊っちゃんは箸を置き、目を瞑って集中する。
すると身体からズズッと魔力が漏れ出て、彼の手の平へと落ちた。
『チュン』
「うん、今回もしっかりスズメの形してる」
『チュンチュン!』
「あ、おいこら! アハハ、くすぐったいってば!」
スズメは坊っちゃんの回りをパタパタと飛び回って、とても懐いた様子で肩に乗る。
それを見た瞬間――ワシの右手から箸が落ちた。
カランカラン、という軽い音を奏でて。
「……? 爺や?」
「ぼ、ぼ、坊っちゃん……それは……?」
「可愛いでしょ? この子、しっかり
「――――坊っちゃん」
声を低くして言葉を遮る。
坊っちゃんはビクッと怯え、
「な、なに……? 急に怖い顔しないでよ……」
「坊っちゃん……金輪際、みだりにその技を使ってはなりませぬ。特に人前では。いいですな?」
「え? ど、どうして?」
「い い で す な ? 爺やとの約束です」
念を押して言うと、坊っちゃんは渋々小さく頷いた。
………なんと、なんということだ。
彼は――坊っちゃんは、
召喚でも幻像でもない。
単なる魔力の物質化に留まらぬ、生命の生出。
正真正銘の天地創造。
通常、〝具現化系〟の
例えば剣だったり、鎧だったり、盾だったり――。
人によっては、堅固な城壁を作り出すこともできるかもしれない。
だが、これらには共通する事柄がある。
あくまで〝物〟であって、〝命〟と〝魂〟が宿っていないことだ。
言うなれば、〝具現化系〟は道具を生み出す
それ以上でもなければそれ以下でもない。
結局はそれが人の限界であると。
ワシでなくとも、魔力保持者ならそういう認識を持っているはず。
だが――坊っちゃんは、そんな常識を目の前で壊してしまった。
あのスズメと坊っちゃんが、魔力で繋がっている形跡はない。
スズメの行動を坊っちゃんが操作していない証拠だ。
その時点で、完全に独立した意思を持つ生命体であることは、疑いようもない。
しかも――本当に僅かではあるが、スズメにも魔力が宿っている。
それも、坊っちゃんとは異なる魔力が。
スズメ自身の魔力が。
あのスズメは一片の疑いもなく、
坊っちゃんの手で生み出された、
完全なる自我を持つ、魂の宿った生命。
自らの魔力によって、個という生命を創造する――。
これが〝神〟の所業でなくて、一体なんだと言うのか?
――恐ろしい。
恐ろしい恐ろしい。
けれど、歓喜で血液が沸騰する。
坊っちゃんはワシの期待を裏切らなかった。
それどころか、予想を遥かに超えてさえくれた。
あぁ……あなたは、どこまで……。
「……坊っちゃん、そのスズメを消すことはできますか?」
「それは、勿論できるけど……」
そう言うと、スズメは再び不定形の魔力となって坊っちゃんの身体に還っていく。
やはり生むも消すも自由自在のようだ。
「坊っちゃん、坊っちゃんは意図せずやったのでしょうが――今、命が1つ消え申した」
「え?」
「坊っちゃんが生み出したスズメには、明確に魂が宿っていました。それを消して取り込むことは、殺すこととなんの違いがありましょう?」
「で、でもスズメは僕の魔力で作ったモノで――!」
「今のスズメは坊っちゃんが生み出した、坊っちゃんとは無関係の命だったのです。……それを勝手に取り込むのは、生みの親として当然の権利であると?」
「そ……それは……」
「日がな妖怪を狩っておいて、こんなことを説くのもおかしいかもしれませぬが……爺やは坊っちゃんに、命の重さを測り違えてほしくないのです」
「……」
俯き、黙りこくってしまう坊っちゃん。
どの口が――とは思うが、これだけは言っておかねばなるまい。
それに、最近は
もし坊っちゃんの能力が世間に晒されたりすれば、どんな悪者の目に付くことか……。
万が一でも、間違いは起こらぬようにさせねば。
「……わ、わかったよ爺や。もうむやみにあの子たちを作ったりしない」
「聞き入れて頂き、爺やは心から嬉しゅうございます。――ですが、いずれその
落とした箸を拾い上げ、足膳の上に置く。
そして再び坊っちゃんの目を見て、
「使うタイミングを定めましょう。ずばり、〝坊っちゃんが本当に守りたいモノがある時〟――。この時だけ、爺やは
「え……で、でもそんなタイミングであの子を出しても……」
「いやいや、先程スズメを生み出せとは申しておらなんだ。坊っちゃんは――もっと凄いモノを創造できるはずです故」
「もっと――凄いモノ――?」
「はい、それは坊っちゃんの強力な
お椀を手に取り、味噌汁を一口すする。
やや冷めてしまってはいるが、それでも美味い。
「確か、今50体目の妖怪を倒し終えたところでしたな? では残りは
「な、名前?」
「
「そんなの、突然言われてもなぁ……」
「ふむ、では爺やが案を出してもよろしいか?」
「! 爺やが名付けてくれるの!? なんて名前!?」
「ええ――――【
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