第18話 ジャックとアベル
アベルに近づきながら、廃屋になった教会の祭壇へと進む。
「なんで俺を探している奴があらわれるんだよ。」
ジャックは、不満げに問い詰める。
「安心しな。あれは、警察の犬だよ。警察もさぁ、キナ臭いから例の話しに警戒してんのさ。」
祭壇から降り、アベルはジャックに近づいた。
「なぁ、ジャック、学校は楽しいかい。俺に感謝しろよ。あのままだったら生きてこの場にいなかったかもな。」
「感謝しているよ。」
ジャックは、渋々答える。
確かに、アベルには感謝していた。
あの時、警察に捕まっていたら、今の自分はなかった。
だからといって、アベルが真っ当な生活をさせてくれた訳ではない。
アベルから、お前は向いてないと言われ仲間から追い出される形で保護施設の者に捕まった。
彼がわざとそうしてくれたのかは不明だが、恩着せがましく言ってくるなら、そうなのだろうと思ったので、渋々認めてやった。
「あの子、可愛いな。お前と教会の屋根でイチャついてた子。」
「別にイチャついてない。」
「あの子、貴族の娘だろう?」
アベルのニヤケ顔がムカついて、ジャックはアベルの胸を小突いた。
「絶対、あの子に近づくな!」
「かわいいなぁ、惚れてんのか?身分違いの恋か…。先はねぇから、楽しんで捨てな。」
アベルは、楽しそうに笑って、ジャックの頭を撫でた。
「お前と話すと本当に腹立つ!」
ジャックは、アベルの手から逃れながら教会の出口に向かう。
「絶対に俺や学校の子や、リチャードさんに迷惑かけるなよ!それに警察のほうも大丈夫なんだろうな。俺を巻き添えにするなよ!」
「ひどいなぁ。人を疫病神みたいに。」
ジャックは、アベルの顔も見ずに手を挙げそのまま廃屋を出た。
学校から追い出されるのはごめんだ。
今は、少しだけ学校が好きになっていた。
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