第16話 メグの恐怖の日々

 メグは、教室でジャックを見つめながら、次の授業の支度をしていた。


 次の授業は、教会の修復作業について反省や今後の課題など話し合うことになっている。


 しかし、メグにとって毎日が心配の日々だった。


 教会の修復作業が終わって、3日が過ぎている。

 誰かに伝えるには、今更な感じになっていて、でも、ジャックが来ない日は、何も起きてないように神様に祈ってみたり。

 ジャックが学校に来ると、ほっとした。


 せめてジャックに伝えようと思っても、今まで話したこともないので、話しかけるタイミングが難しかった。


 メグは、ジャックを見つめるばかりになっていた。



「おい、メグ。」

 ロドニーが、小声でメグに話しかけてくる。

「なぁ、ジャックはやめとけ。貴族は貴族としか結婚出来ないんだぞ。」


「何言ってるの!そんなの知ってるわよ!」

 メグは、ロドニーが訳わからないことを言い始めたと呆れた顔をした。


「じゃあ、なんだよ。最近ジャックをずっと見てるじゃん。」

 ロドニーは、膨れっ面して続ける。

「ジャックなんて、勉強はちょっと出来るかもしれないけど、たいして面も良くないし、マリーをたぶらかして、ケイトと二股かけているひでぇ奴なんだぞ!」


「おい、聞こえてるぞ!」

 ジャックは、呆れ顔で振り向いてロドニーを見た。

「ちょっと私はたぶらかされてないし。ジャックのほうが、カッコいいわよ!」

 マリーは、最後は小声になりながら、自分が言ったことに赤くなっていた。


「どうせ、お前がメグにちょっかい出したんだろう!」

 ロドニーが席を立つ。


 ジャックも席を立ち、ロドニーの胸を付く。

「俺は何もしてない。なっ、メグ、してないよな?」


 突然、メグが泣き始めた。

 最初は、しくしくと、その後は本泣きで、ロドニーとジャックはたじろいだ。


「やっぱり、お前が何かしたんだ!」

 ロドニーが、ジャックの胸ぐらを掴んだ。


「してないって!」

 


「お前たち、何しているんだ?」

 ソウザ先生と歴史の教師シャーウッド先生、数学の女教師ピピン先生が、教室に入って来た。


「ジャックは、何もしてない。私が悪いの…」

 メグは、泣きながら話し始めた。



「良く話してくれたわ。ジャックは今、無事でこれから気をつけるれば大丈夫よ。」

 ピピン先生が、優しくメグの肩に手を置く。


「ほら、やっぱりジャックじゃん。」

 ロドニーは、ばつが悪そうに口を尖らせる。


「俺、何もしてないじゃん。」

 ジャックは、とりあえずメグのことをピピン先生に任せられてほっとした。


 ジャックは、放課後職員室に来るようソウザ先生に言われ、とりあえずは、みんなソウザ先生の授業に入った。



 ジャックは、なぜ、自分を探す男が来たのか考えていた。

 確かにリチャードさんのために、酒場にいた奴の探りを知人に頼んだ。

 でも、なぜ自分なのだろ?

「アベルの奴、勝手に動いたな。」

 ジャックは、小さく呟いた。

 アベルは、ジャックが孤児院に入る前に一緒に居た、孤児たちだけのスリの集団の頭だ。

 ジャックは頭を抱えた。

 もう、足は洗った。

「やっぱり、止めとけば良かった。」

 ジャックは、小さく呟いて、手を膝の上にのせると、キレイな手がジャックの手を握る。

 びっくりして、横を見るとマリーは、何でもないように前を向いてソウザ先生の話しを聞いている。



 ジャックは、なんだかほっとして、マリーのキレイな手を握り返した。



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