第15話 不審な男

 教会の中では、神父が祈りを捧げにきた人に声をかけていく。

 いつもの日課だ。

 困っていることがあれば、手を差しのべる。今は、困っている人ばかりだが、教会で出来ることはしてあげたかった。


 男が入って来た。

 神に頭を下げることもなく、辺りを見回すと中庭に進もうとしていた。


 神父はなんとなく声をかけた。

「どうされましたか?誰かをお探しかな?」


「いえ、知り合いの子が今日来ていると聞いたので。ちょっと寄ってみただけです。お構い無く。」


 神父は、少し不審に思い、先生を呼ぶことにした。

「魔法学校の生徒なら、先生に声をかけてみましょう。」


「いえ、本当にお構い無く。邪魔したら悪いので。」

 男は、急いで教会を後にした。


 神父は、ソウザ先生を探しに中庭に向かった。




 屋根の修復は、順調に進んでいる。

 外壁の修復も、みんなで助け合いながら進んでいた。


 メグは、教会の正面に一番近い外壁を担当していた。


「これずっと続けるの大変。」

 メグがぼやくと斜め上から声がかかる。


「また、失敗したか?手伝ってやろうか?メグ!」

 ロドニーが、下を覗きこんで笑ってる。


「失敗なんかしてないわ!慎重に!丁寧に!修復しているから、ちょっと疲れただけよ!あんたこそ自分のところに集中しなさいよ!」

 メグは、唇を尖らせて言い返す。

 ロドニーは、手を振って自分の修復場所に戻っていった。


「すみません。お嬢さん。」

 急に背後から男に声をかけられて、メグはびっくりして振り向いた。


「驚かせてすみません。今日、ジャックという子は来ているかな?」

 男は笑みを浮かべて、メグに問いかけた。


「ジャックは、屋根よ!ほらあそこにいる!」

 メグは、ジャックを指差した。


「そう、ありがとう。」

 男はジャックを見るとそのまま立ち去った。


「メグ!手伝って!」

 少し離れた場所の修復をしていた、アニーが大きな声で呼んでいる。


 メグは、立ち去った男をしばらく見ていた。


「メグ!」

 泣きの入った声に、メグは我に帰ってアニーの元に走って行った。


 ソウザは、下で手を振る神父を見つけ、屋根から降りた。


「神父様、どうしました?」


「いや、考え過ぎかもしれんが子供の事なんで伝えておこうと思いまして。」

 神父は、先ほどの不審な男の話を伝えた。

 ソウザも、神父の疑念に賛同して、子供たちに注意するよう伝えると約束した。


 ソウザは、生徒たちに休息するよう伝えて、生徒を集めた。

 休息に入って、生徒たちは皆疲れた顔で、配られたカップケーキを食べながら、紅茶を飲んでいた。

 それぞれが、反省したり、自慢したり修復作業の話しをしていたが、皆、満ち足りた顔をしていた。


 ソウザは、休息が終わるところで、先ほどの不審な男の話しを始めた。


「誰のことを探していたかは分からないが、みんな1人で行動しないように注意してくれ。念のためだから。」

 生徒たちを怖がらせないように、あくまでも、念のためを強調した。


 メグは、さっき知らない男に、ジャックのことを教えてしまったことに、愕然としていた。

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