第9話 魔法省
リチャードは、教会で神父に、急ぎの用があると詫びを述べ慈善活動を早々に切り上げ、マリーを頼んだ。
「マリー、すまないな。馬車はいつものところで待っているので、1人で戻ってくれるかい?」
「ええ。大丈夫よ。叔父様も気をつけてね。」
マリーは、心配そうに答えると、リチャードは、教会の扉に向かい、何事か呟くと教会の扉を開けることなく、扉に吸い込まれるように消えた。
叔父は、たいして魔法を使えないと言っていたが、マリーが見ても上級魔法を使っているのが分かった。
リチャードは、教会の扉から直接魔法省の入館口に着いた。
魔法省から、仕事を請け負っているのでリチャードは、魔法省への入館を特別に許されている。
壁にはめ込まれた水晶に手を当てる。
エレベーターが開き乗り込み、扉が閉まるとまたすぐに扉が開く。
このエレベーター事態がセキュリティチェックになっていた。
エレベーターを出ると、広いフロアに直接入れる。
白を基調にしたフロアは、明るくて清潔感があり、使用している人の人柄が窺えた。
「リチャード。ちょうど良かったわ。今呼ぼうと思っていたところよ。」
淡い黄色のパンツスーツ姿の女性がソファーに足を組んで座っている。
魔法省の幹部で、ニューフロンティア政策を任されているジェシカだ。
その他に、ニューフロンティア政策に関わっている一部の者達が6名集まっていた。
「リチャードも慌てて来たなら、話しは同じことのようね。誰か分からないけど、ニューフロンティア政策を悪用しようとしている者がいる。でしょう?」
「ええ。土地の割り振りなどを説明して、誘導しているようです。」
リチャードが報告する。
「俺が良く行く酒場にも現れたらしい。」
ケネスは、貴族階級ではないので、街の酒場にも出入りしていた。
「だけど、俺が魔法学校に通ってたの知っているからか詳しい話しをしたがらねぇ。」
ケネスは、残念そうに舌打ちした。
ケネスを除く者は、皆、貴族階級の者達なので入れば目立つ労働階級の街には確認に行けなかった。
「貴族階級の者達の中には、何人か怪しい者達がいるが、尻尾を捕まえるのは、難しいかもしれないぞ。」
ブライアンが報告すると、ベスが続ける。
「思ったより多くの貴族が動いているかもしれないから、不用意に話さないほうが得策だと思うわ。」
「困ったわね。このままでは勝手に移動されて、いざ街に着いたら何も無くて、魔法省を訴えてくるわ。」
「訴えることで、誰が得をする?たいして利益が無い。」
ケネスが呟く。
「魔法省が混乱するだけだ。何か別なことで利益があるのだろうか…。」
ブライアンが皆を見回す。
「明日、そいつらを見た子に会ってくる。もしかしたら、話しも聞いているかもしれない。」
リチャードがジェシカを見る。
「子供なの?」
ジェシカは難しい顔をしていた。
「出来ればその子が働いている親方に会いたいが、親方に危険が迫るかも知れない。」
「その子は大丈夫なの?」
「ああ、大丈夫さ。なんたって僕達の母校で会うからね。」
リチャードは笑顔で答えた。
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