第7話 捉え方

 ニューフロンティア。

 マリーは、この言葉が凄く気に入っていた。

 新しい街、綺麗な街、差別のない街。


「幸せな街作りなのに、なぜ話が進まないのかしら。」

 マリーは、もっと話を聞いて詳しい情報をジャックに教えたかった。

 マリーは、画用紙に新しい街を想像して絵を描いていた。

 カラフルな色鉛筆で、どんどん街が出来ていく。

「ここに私の家。ここらへんにジャックの家。ここにケーキ屋さん。叔父様の家。」

 新しい街が出来ていくのを楽しんだ。


 翌日、マリーは朝早く魔法学校に着くと食堂に顔を出した。

 いつも通りジャックが朝食中だった。


「おはよう!ジャック!」


「朝からうるせぇなぁ。」

 ジャックは、呆れたように呟く。


「何よ、挨拶しただけでしょう!」


「はい。はい。おはよう。」


「ねぇ、ニューフロンティアって知ってる?」


「知ってるよ。何にも無い所に貧乏人を追い払おうって政策だろう。」


「違うわ!新しい街を作って、子供達がだれでも学校に通えて、差別無く仕事につけて、結婚も出来る。そんな素晴らしい政策よ!」


「だれの請け負いだよ。また叔父様か?その素晴らしい政策を誰が阻んでいるんだよ。まったく朝から何かと思えば!」


「だってせっかく良い政策なのよ!」


「何だよ、俺に行けって言うのかよ。」

 ジャックは、大げさにため息を吐いた。


「ちっ、違うわ!ジャックは行かないで!」


「行かないでって、俺が決めることじゃないだろう。親方次第さ!」


「そんな話しが出てるの?」

マリーは、びっくりした。


「そりゃ、行く人を探してるんだから、声をかけられるだろう。ケイトのところにも来たって言ってたし。」


 マリーは、狼狽えた。そんな具体的に話しが進んでいて、しかもジャックが1人で、ニューフロンティアに行ってしまうことは考えてもなかった。

 昨日のマリーが描いた絵は、みんなでニューフロンティアに住む絵で、誰かが自分の元を去ってしまうことは、考えてもいなかった。


 叔父様に詳しい話しを聞いてみよう。

 マリーが思い描いた街の絵は、思った以上に先に進もうとしているのかもしれない。


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