第10話 その後の私の幸せな人生

 庭園で襲いかかってきたクロエという女性は、辺境の修道院へ送られることになったという話を聞いた。あまり興味もなかったので、それ以上のことは何も知らない。知る必要もないだろうと思った。


 何故か、ジェラルド様も地方へ送られることになったらしい。どうやら今回の件に関わっていたそうだ。裏で手を回して問題を引き起こした原因だとか。


 どうして、そんなことをしたのか私には分からない。急に婚約破棄を言い渡してきたり、証拠もなく浮気を疑ったり。あの方の行動は、本当に理解不能だった。だが、彼との関係も完全に切れた。遠く離れていったので、今後一切私の人生に関わることも無いだろうと思う。それで、特に感じることもない。その程度のものだった。




 結婚式も無事に終わった。


「改めて、これからよろしく頼むエレオノール」

「はい、こちらこそ! オディロン様」


 まさか、自分がこんな気持ちで結婚式に臨めるなんて予想していなかった。こんなに幸せな気持ちで、旦那様に寄り添うことができる日が来るとは思わなかったのだ。


 私は幸せだ。これ以上ないくらいに。そう思うと、自然と笑みがこぼれてしまう。隣にいるオディロン様も同じ気持ちなのだろう。幸せそうな笑顔を浮かべて、私の手を握ってくれた。


 これから先もずっと、この人と一緒なら何も怖くはないわ。そう思った。


 それから私は、外交や貴族の関係を上手くまとめる役目を任されることになった。社交界で色々な方々と交流して、仲を深めていった。王妃教育で学んできたことを、存分に発揮する。今までの日々が、無駄にならなかった。


 そしてオディロン様も、王国で最強クラスの騎士として有名になっていく。周辺国にもその名が知られるようになり、誰もが認める英傑となっていった。


 彼の存在が抑止力となって、王国は長く平和な時代が続くことに。


 新たな騎士を育てるために、教官としても成果を上げていくオディロン様。王国の未来も安泰だった。


 私とオディロン様は、仕事だけでなくプライベートも大事にすることを絶対に忘れなかった。


 子供が5人も生まれてきてくれて、とても嬉しかった。全員元気いっぱいで、すくすく育ってくれている。子供たちが成長してくれれば、それだけ私たち夫婦の時間も増やしていった。とても幸せな家庭を築くことが出来ていた。


 過去に失敗してしまったからこそ、自分にとって大事なことを見失わない。仕事も大事だけど、家族も大事。王国の民も大事だけど、まずは自分の周りに居る人達から大切にしていく。その事を学んだからこそ、今がある。


 貴族である私達が、そんな生き方が出来るなんて驚き。だけど実際、幸せな日々を送ることが出来ていた。


 これからも、この日々を大事にしていきたいと思う。オディロン様と一緒に。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る