第9話 何かあるはず ※ジェラルド視点
なんで誰も理解してくれないのか。なぜ上手くいかないのか。納得できないまま、ただ時間だけが過ぎていく。
エレオノールとオディロン、2人の関係は予想外に順調のようだった。
しかし、必ず問題を隠しているはずだ。それを暴くために、仕掛ける必要がある。そんな時に知ったのが、クロエという女性のこと。
オディロンの元婚約相手だった彼女だが、良くない状況らしい。立場を奪われたと逆恨みしているとかなんとか。その情報は、とても私に都合が良いものだった。その女性を使って、かき乱すことが出来そうだ。それで、何かボロを出すかもしれない。
そう考えた私は、裏から手を回してクロエを動かし、2人に近づけてみた。作戦は完璧だと思った。計画した通り、いつものように庭園を歩いている2人の目の前まで誘導させる。偶然を装い遭遇させることに成功。だが、その後は失敗だった。
襲いかかったクロエをオディロンが取り押さえて、兵士がすぐに駆けつけた。
訓練ばかりして鍛えていたオディロンの実力を甘く見ていたようだ。だが、騒ぎが起きたことにより2人の関係が悪化すれば、私の計画は達成される。もしかしたら、この件で色々と揉めるかもしれない。
そう思っていたのだが、2人の関係はより親密になっていた。
なぜだ! なぜ、2人の仲が悪くならないのか。どうして、私の考えは上手くいかないんだ!
クロエの件についても、私が裏で手を回していたことが父上にもバレてしまった。極秘で進めていたのに、どうして!
私は父上に怒られた。それだけでなく、罰として王都から地方へ飛ばされることになってしまった。王位継承権を剥奪されただけでなく、王都から追放されるなんて。こんな馬鹿な話があるか!
かつての私は、王太子だったというのに。とても屈辱的なことだ。納得できない。しかし。
「これだけの問題を起こしておいて、処刑されなかっただけありがたく思え!」
「そ、そんな……」
追放を言い渡した時の父の目は冷たかった。今まで見たことない表情をしていた。父は、私に失望してしまったのだ。だけど、納得できない。なんで私が、こんな目に遭わないといけないんだ。だけど、従うしかない。私には、逆らえるだけの力がないから。反抗したら、本当に処刑されしまうかもしれない。父上の冷たい目に恐怖してしまった。
大人しく地方に追いやられた私は、何も出来ない日々を過ごしていた。
だが、エレオノールに対する気持ちだけは変わらなかった。絶対に許さない。あの女のせいで、私の人生は狂ってしまった。絶対に復讐してやるのだ。そのために力が必要なんだ。
どうにかして、私に対する評価を逆転させる。そのために、エレオノールの失脚は必須だった。
情報収集も続けている。けれど、大した成果は得られていなかった。ただ、2人が仲良くしている話を報告されるだけ。信じられない。何かあるはずだ。そう信じて、報告を聞き続ける。
女なんて、裏切る生き物なんだ。だから、エレオノールには絶対に裏があるはずだ。そうじゃないと、おかしい。そうじゃないと……。
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