第33話
クレームを入れているクレーマが誰かは、何と無くあてはまる可能性のある人がいたが、まさか、さすがに違うだろう、なんて思っていた。
人間、そういうことは考えないようにする生き物、物事を楽観視してしまう生き物だって何かで知った記憶がある。
僕は弱虫だから、楽観視しない生き物のはずだったけど、楽観視していたよ。
僕はメールアドレスを見たとき、ここで自らの命を終わらせようか、なんて思ったよ。
一瞬だけど、確かに。
「どなたが、わかりますか」
医療安全部の女性、四十代だったか、よく記憶がない。
もしかしたら男性だったかもしれない。
何回か声が聞こえた記憶力があるけど、何回か、でハッとしたよ。
「誰かおわかりてすか?」
「僕の、父親とされる人、です」
職場にクレームを入れていた、人のメールアドレスは父親とされる人発信のもの、ネットニュースのクレーマーも父親とされる人発信のもの、だった。
「このアドレスから先輩もクレームが入ってたのですか」
「そうです。」
そこからの記憶が曖昧で、確か、先輩と上司に泣きながら謝罪をし、医療安全部と院長や副院長、上司、先輩、職場の弁護士とそれぞれ複数回の話合い、会議が行われて、事件にはしないことになったんだ。
僕の父親とされる人からのクレームは相変わらず何回も何十回もあったけど、誰がが判るから、なかったことにされるようになったんだ。
名前を変えて何回もクレームを入れていたよ。
とりあえず、一段落がついて、僕は休職した。
僕は確か、職場からの紹介でメンタルクリニックで複数回面談して、その年の12月末、謝罪を各部所にして寮を出て、退職したんだ。
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