第30話
季節は春を迎えた。
今年の春はいつもより桜が綺麗に咲いている気がする。
でも、これは気分の問題なんだろう。
ストレスが減ると視野が広がる、というよりは、冷静になれる。
夜勤明けはおじいちゃん、おばあちゃんの家に行くことは減ったが、何回か行っている。
「おじいちゃんね、物忘れが多くなってきてるのよ」
「そうなんだよ。歳だよなぁ」
そんな笑い話を聞きながら、一人暮らしの寮は楽しいよ、と言うと、お前が楽しいならそれでいいよ、と喜んでくれた。
お母さんにメッセージアプリで連絡をし、それが父親とされる人に知れると、父親とされる人に何をされるかとわからないから、連絡を取らないようにしていたが、おじいちゃんと、おばあちゃんのところには時々来ているようで、僕が、元気な様子を聞いて喜んでいるようだ。
というか、おばあちゃんが言うには僕の様子を聞きに来ている、とのことだ。
「父親とされる人に会わないように、ゴールデンウイーク、ここで昼くらいに会えないかな」
僕は、おじいちゃん、おばあちゃんに提案し、二人も賛成してくれた。
早速、今回ばかりはお母さんにもメッセージアプリで相談し、父親とされる人には内緒で、集まることにした。
ゴールデンウイークは、父親とされる人には仕事が忙しく帰れない、と伝えた。
というよりは
【帰れないのか】
とメッセージアプリで連絡が来て、帰れない理由を言った。
自分から、一人前になったら会ってやる、と言う割には、何回もお腹が減ったら連絡をよこせ、とか、ご飯に行くぞ、とこの数ヶ月言われてきた。
多分、命令を聞く人が減って、つらいのだろう。
ゴールデンウイークのある日の昼、おじいちゃん、おばあちゃん、お母さんと昼間集まって、お寿司パーティーをした。お酒を飲んで久々に楽しい1日だった。僕は、おじいちゃんの家に泊まったが、お母さんは夕方帰った。
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