第27話

ハッチとはしばらく会えてない。


もともとお互いにマメに連絡するタイプではないけど、正直に言っておこうと思う。


寮に入る理由、寮に入ることを。


相談に乗ってもらう、の方が近いかな。


自分の行動が間違いじゃないのか、判断してほしい、なんて思っていた。


ハッチにメッセージアプリで連絡をとった。


【お疲れ様。久しぶり。元気?話したい事があるんだけど、まあ、どうせなら会って話そうかなって思ってさ】


【お疲れ。メチャ元気だよ。でも、とにかく忙しい。修行兼ねて全国飛び回ってるよ。スーツ来たり作業着来たり。実家には滅多に帰れてないよ。今は九州です】


【うわ。忙しそうだなぁ。了解。どうせなら会いたいからさ、こっち来たら連絡ちょうだい】


【了解。1、2ヶ月かかるかも】


ハッチと連絡したら蜂旗ミートのメンチカツが食べたくなってきた。


休みの日、勉強会が午後からだったので、昼前に立寄った。


「おじさん、お久しぶりです。」


「広治君、元気だった?息子は全国修行中だよ。数年後、やらせたい仕事があってね」


「聞きました。忙しいみたいですね。僕は元気です。ハッチと連絡したら、このお店のメンチカツが食べたくなりまして。」


メンチカツを店先で食べながら、おじさんと会話をした。


「メンチカツが食べたくなったなんて嬉しい話だね。クリームコロッケはサービスね。そういえば、どうだい?お父さんは?」


「まあ、色々とありますね」


「そっか。俺は行かないんだけどさ、お父さん、地域の集まりにも参加しなくなったみたいだからさ」


「そうなんですね。知らなかったです」


「なんかあってらさ、言ってよ。ハッチにも会いに来たこといっておくからさ」


「はい。よろしくお願いします。」


父親とされる人が地域の集まりに参加してないのは知らなかった。


外面がいいから参加していると思ってたけどな。


地域の人達の事、嫌ってたもんな。


もともと、友達が多い、と言う割には、ほぼ家にいる人だからな。


そういえば、父親とされる人が友達、とされる人と飲みに行くって言ってたの、一回だけ、くらいじゃないかな。


社長から電話かかってきて、とか、以前の後輩から、とか、同僚から電話が、とかいうわりに、全然出かけない人だからなぁ。


「広治君さ、お父さんが地域の集まりに参加しなくなった理由聞いてないかな?」


「集まりに参加してないことも初めて知りました」


「お父さんね、広治君やお母さんの愚痴を散々言ったり、おじいちゃん、おばあちゃんの愚痴を散々言ったりしていてさ、周りからしてみたら、昔のお父さんの話を聞いていていたから、何を言っているんだこの人、って思われて避けられてたんだ」


「それにね、どこに行ってもそこにいない人の悪口を言っちゃうんだ。ちょっと避けられているの気づいたんじゃないかな」


「すいません。ご迷惑をおかけして。そういうところがある人ってのを僕も最近知って。何と言っていいやら。申し訳ございません」


「君たちは悪くないんだよ。お母さん、大丈夫??」


「今のところ、変わりはないのですが、常に気にかけてます」


「本当に、何かあったら言ってよ」


ただただ謝罪して、その日はお店を後にした。

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