第25話
寮に入ることは全てがまとまってから、お母さんにも、父親とされる人にも言うことにする。
お母さんに余計な気を使わせたくないし、父親とされる人には反対され、怒鳴り散らされるのが面倒だ。
おじいちゃん、おばあちゃんにはどうしようか、早く言っておきたいが、悲しい思いもさせたくない。
その代わり、今までよりも会いに行く回数を増やそうか、なんて色々と考えて過ごしていた。
金銭面は問題ない。実家暮らしで、更に金遣いが荒くない僕は、お金ならそこそこ貯まっている。
職場の寮なので、敷金礼金かからないようだし、家具は新社会人応援パックで、5万円くらいのでよし、と思っている。
そもそも、寮、と言っても職場のそばのマンションなので、病院のすぐ近くのマンションに暮らす、というようなものだ。
新生活を始める際の出費、一人暮らしの大まかな出費を計算する毎日だ。
父親とされる人のハラスメント行為というか怒鳴り散らしは日に日に増してきた気がしている。
「近くの薬局の前を通ったんだが、メガネ掛けたオタクっぽい男ばかりだな。女も可愛い奴がいなかった。お前もオタクか?インターネットで悪口ばかり書いてるんだろう?」
「せめて自分の息子ぐらいは気持ち悪くなっってほしくないと思っているんだ。オタクになるなよ。あの薬局の男みたくなるなよ。お前のためを思って言っているんだ」
父親とされる人の嫌味や気に食わないことに怒鳴り散らす、何かにイライラしてて八つ当たりする、という行動は慣れてきている。
慣れてきてしまってはいけないんだろうけど、慣れてきている。
こういう時は怒る、怒鳴る、八つ当たりする、というのがわかってきた。
オタクというか、暗い人、内気な人、礼儀正しい人に対してはイライラするようで、自分のようにはっきり伝える人間は世の中に必要である、という考えがあるようだ。
「犬畜生っていうんだ。犬好きにろくな奴はいない。だから俺は猫が好きなんだ」
一緒に暮らすようになって猫を買いたい願望があったようだが、お母さんがさすがに止めた。猫なんて買って、噛み付いたり、爪で引っ掻いただけで殺されたらたまったものではない。
その可能性が高かった。
「お前はサイコパスか?人の悪口を言わない人間はろくなやつがいないぞ」
僕は嫌いな人のことを考えたくないので、人の悪口は言わない。
もしかしたら言う勇気がないだけかもしれない。そしてを悪口を考えている時間もない。父親とされる人は
【人の悪口を言わない人はおかしい】
とかいてある本を見せてきたりやネット記事をメッセージアプリで送って来たりした。
職場は2年目だから後輩が入って来たり、他部署の後輩と話す機会がある話をしたら【人心掌握術】が載っているネット記事を送って来たりした。
「俺が後輩や仲間とつるんでいて、普段している行動がそのまま載っていてビックリしている」
と話すが、記事の内容は、相手の話をきちんと聞く、悪いことは悪いと伝える、いいときはきちんと褒める、というような内容だった。
正直、父親とされる人からのメッセージアプリでの連絡の多さには寒気がしてきている。
僕だけならいいのだが、お母さんにもハラスメントが酷くなってきている。
というか、多分二人っきりのときは酷いハラスメント行為を受けてきたのではないか。
僕が居るときにも怒鳴り散らすようになった。
「お前の育て方が悪いから、こんな奴に育ったんだ」
「親の育て方だな。お前の親もろくな親ではなかったんだろう」
僕がしっかりしてないからお母さんが怒られることも申し訳ないし、おじいちゃん、おばあちゃんのことを馬鹿にする行為も許せない。
そもそも、父親とされる人の親がしっかりとしてないから父親とされるの人のような人ができたのだろう、なんて考えてしまう。
ある日、父親とされる人と二人っきりになった。
「お前は周りと大人っぽい話をするのか?アツコでもいいし、じいさん、ばあさん、友達でもいい。するのか?」
「しますよ」
「どんな内容だ?」
「詳しくはいえませんが、仕事のことだったり、将来のことだったり、ニュースのことだったり」
「お前ごときがそんな話できるわけないだろう」
「何も言えないのか。なんか言っても論破してやる。」
日に日に酷くなって行く環境に、僕も耐えられなくなって行った。
夜も眠れないことがあるし、頭痛がすることもある。
喉元に何かつっかえる感覚がして食事が摂れないことも出てきた。
「俺には娘がいるんだけど、いつかは俺に会いに来ると思っている。多分、前の妻や義理の両親が俺の悪口を言っているんだろうけど、俺も娘をきちんと育てた時期があるんだ。あいつは俺に足向けて寝られないはずだ。いつか、連絡が来て、必ず会いに来るはずだ」
自分が誰かに何かをしたら何かをされて当然、自分は慕われて当然、という考えがあるようで、それは、血の繋がった娘にも向けられていた。
「俺の息子だけど、俺のような映画や小説の主人公のような人生をお前は送れないだろうな。」
父親とされる人にはよくこう言われている。
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