第18話
新しい生活が始まった。
父親とされる人は僕が出勤するときには起きてきて、
「行ってらっしゃい」
ということもあれば、起きてこないときはメッセージアプリで絵文字とともに
【仕事頑張れ】
ということもあった。
マメな人なのか、それが普通なのか、僕にはさっぱりわからなかった。
ただ、細かく連絡することを望んでいるようで、僕が仕事で遅くなるとか、僕が仕事で夕ご飯いらないとか、僕が土日家にいないとか、わかった時点で連絡するようにお母さんから言われた。
今までは連絡はしていたが、早く言うよう言われてのが初めてだったから、家族が3人になったからなのか、父親とされる人から言われたのか、それともそれが普通なのか、僕にはわからない。
けど、連絡は細かい方がいいのかもしれない。
その報告連絡相談が仕事に生かされる、つまり、ホウレンソウが仕事にとってはすごく大切なことは社会人なのだから知っている。
家族が増えたからなのか、気を使っているのか、僕はなるべく家でご飯を食べるように心がけた。
土日は、父親とされる人の希望が多く、3人でご飯に出かけたり、買い物に行くことが多かった。
父親とされる人はいつも喜んでいた。
この3人で買い物に行くとき、僕はいつも迷う。
唯一働いている僕がお会計をするものなのか、家族としてお母さんに出してもらうのがいいのか。会計の前に悩んでいると、いつもお母さんが支払う。
父親とされる人は一緒に住む前からお金がないと聞いていたし、こんな感じで家族としてお会計はお母さんに任せておけばいいのか、なんて思いながら過ごしている。
冷静に考えると、僕は仕事や予定があって外出することが多いけど、父親とされる人は友達との飲み会にも行かないし、お母さんはいつも父親とされる人と一緒なんだな。
一番環境が変わったのはお母さんなのかもな。
不動産会社の仕事も、いい機会だから、って辞めちゃったし。
でも好きな人と過ごすんだから、幸せだろうし、何かしらの覚悟を決めて住んだのだろうし、いいのかな。
ゴールデンウィークになる頃には、僕は父親とされる人に、お前、と呼ばれていた。
お母さんは、アツコ、と呼ばれていた。
父親とされる人を、お母さんはパパ、僕は名前をもじってハジさんと呼んでいた。
「何年も、きちんと家族でお酒飲んだり、買い物に行ってなかったから楽しいな」
ゴールデンウイーク、僕は今年、夜勤が2回も入っている。
というか、皆の都合が悪そうだったので、自ら夜勤に率先して2回入った。
特に用事もないし、でかけても人が多いだけだし、予定があるときに変わってもらえれば、それでいい。
あと、正直、また、3人過ごすことに馴れてないからか気疲れもあって、たまには夜勤入ったり、勉強会に行ってゆっくり、のんびりしたいと思っている。
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