第8話
人と接するとき、一歩下がって行動や会話をするような印象のある母親が、人の意見を聞かず行動するのを初めて見た。
そして、おじいちゃん、おばあちゃんも人の意見を聞かずに行動するのを初めて見た。
唸るような暑さの毎日を過ごす夏、おじいちゃん、おばあちゃんは行動をしている。
母親も行動をしている。
正式に言うと、行動をしているのを、僕が気づいていた、である。
おじいちゃん、おばあちゃん、母親はそれぞれ、新しい住まいを探しているのである。
僕はそれを止めることはできないし、止める力がないことは知っていた。
行動をしていないのは僕だけ、である。
おじいちゃん、おばあちゃんは、不動産会社の時に自分が扱っていた賃貸物件に引っ越すことや、老人ホーム、高齢者住宅を探していた。
慣れ親しんだ街から、離れることも考えたようで、全く違う県の老人ホームの資料も届いたりした。
母親は僕の事を考えてくれていたのか、僕の職場に通える範囲の物件を探していた印象がある。
残業、研修会で忙しく、休みの日しか一緒にご飯を食べることができなかったが、4人の食事は暗い雰囲気だった。
家に帰ると、話す言葉よりも、ため息の方が多かったと思う。
唸るような暑さが終わり、葉っぱも落ち始め、季節は冬を迎えた。
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