58話 繋がる
問題は全て解決した。
今こうして佐伯と花火大会への道を歩いているのも、佐伯と合流することができたのも、運命の導きだったのかもしれない。
安堵しながら歩く夜道は達成感に満ち溢れている。
そうだ、花火大会の前にどっか寄るか。
「なあ佐伯、出店とか見て回るか? お前のことだからお腹空いてるだろ?」
「…………」
「佐伯?」
佐伯は足を止めて俺の方を向く。
「手は、いつまで繋いでいるのかしら」
「……っ!」
言われて今の状況を理解した俺は、咄嗟に手を離した。
何を調子に乗っていたのか。
俺と佐伯は……そういう関係じゃない。
だから、繋ぎっぱなしなのはおかしい……よな。
「ご、ごめん……手汗とかキモかったか?」
「…………」
俺が慌てふためいていると、佐伯は無言で俺の手を握り返してくる。
どっちなんだよ。
「私はダメダメだから……ここで迷子になってあなたに迷惑をかけたくないだけ」
「はいはい」
佐伯は決してダメダメなんかじゃない。
さっきの一件でナーバスになっているからか、発言にいつもの力強さはないが、本当にダメダメなんかじゃ、ない。
ただ、少し抜けているところがあって。
でもそんな所が…………良いっていうか。
「たこ焼き8パック」
「あいよっ!」
俺が佐伯のことを考えながら歩いていると、佐伯はとんでもない量のたこ焼きを注文した。
お、おいおい! ここのたこ焼きは400円もするんだぞ!
「3200円ね」
「さ、3200⁈ おい佐伯っ」
「………」
佐伯は腕に下げてた小さな手提げバッグをガサガサ漁ってる。
まさか、こいつ……っ。
「大狼くん……言いづらいのだけど」
「はぁ……」
前言撤回。やっぱこいつはダメダメだ。
俺は仕方なく財布に入っていた5000円札を出した。
「後でしっかり立て替えてくれよ? 3200は流石に、奢れないからな?」
「じょ、女子に出させるのは……どうかと思うのだけど?」
「普通の女子ならまだしもお前のソレは例外だろ」
「…………」
「無言の圧力やめろ」
佐伯は食い物の話になるとやっぱクズ彼氏みたいな性格になるな。(ちなみに美代も然り)
「分かった分かった、俺が奢るけど……少しくれよ?」
「仕方ないわね。半分くらいなら」
「4パックも要らんわ!」
たこ焼きを8パック受け取った後、俺と佐伯は河川敷まで向かった。
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